4-9 顕聖祭 2
青 1メモリ5分です。6メモリだと30分
一応、アメリアのいる王国の時間の概念になります。
2章1話参照
【カイル】
──────────
お祭りあるんだね。
僕が解析に夢中になってる間に外は物凄い賑わってたので……覗いて見たけど、すぐに見るのをやめた。
あれは地獄だ。
何が楽しいんだ……一つも分からない。
二人はどうしているか心配したけど。
外は人混みが酷すぎて、中で寝ているエルしか分からなかった。
アメリアはこんな人混みの中でも外に出られる様になったのか、僕は本当に嬉しいよ。
若干置いてかれた感じはするが。
そういえば、僕をここに閉じ込めたコクマーさんが会いにきた。
無理だと思っていたら、目の前で会って他の人ほど嫌悪感がなかった……この部屋じゃなきゃ原因も分かったかも知れないのに。
……いや、この部屋だからか?
面白い謎がどんどん増える。
そうじゃない。
そのコクマーさんが「祭りの終わりまで、私を信じて大人しくしてくれるなら二人は丁重に扱います」って言って来た。
あまりの身勝手な発言に少し怒りを露わにしたら、色々話してくれた。
コクマーさんによると、僕みたいな風貌は『ハイエルフ』と言われこの国ただ一人の英雄の様な位置付けらしい。
その僕がお祭りの期間その辺を歩き回ってしまうと、周りが混乱してしまうんですと。
まぁ、確かにここに来てすぐ検問の出口でお供え物と言う名の食べ物をもらってましたが、あの時はヒアに任せていたが「食べたい」とうるさくて敵わなかったよ。
そうなると、我々もあなた方も大変になり、どちらも良くないと。
その話を全て信じるわけにも行かないので僕はいくつか条件をだした。
仲間たちに僕の安全をちゃんと伝える事。
祭りが終わるまで言う事を聞いたらこの国の滞在を全面的に保証する事。
後ハイエルフの墓所に入る許可も下さい。
後、食料も下さい! 滞在中の宿も泊まり放題でお願いします!
最後に、誰にも会いたく無いので用がない時はここに誰も呼ばないで、出来れば貴方だけにして。
これでもかと願った。
引きつった顔をしていたので内心はしらないが、快く承諾してくれた。
では、私の方ももう一つ付け足させてもらいますと吹っ掛けて来た。
交渉上手だ。
祭りの日にハイエルフを降ろす儀式があるらしい、その依代になって欲しいと言う話だった。
僕は快く受けた。
ただ、これにも一つお願いをした。
「コクマーさんだけにしてね!」と。
問題ありません。と言ってくれたので僕は満足できた。
これで、一応安心かな。
そもそも、今みんなの所に戻ってもお祭りという魔境が怖すぎて居心地でいったらこっちが良いと来ている。
ヒアにさえ「バカなの?」って言われたくらいの怪しさなのに、僕はコクマーさんを信じる事にした。
アメリアたちが安全ならそれでいい。
今のところは、特に何にもなくのんびりしているみたいだから安心かな。
明後日には祭りは終わる。
そうしたら『約束』も終わりこの国を自由に行き来できる権利も貰える。
僕はこの国に来た目的、忘れてないよ。
これならみんなの為になるよね。
それまでは、ここの解析といい加減左眼の侵食治さないと。
【コクマー】
──────────
突然、目の前のケテルに呼ばれた。
それは、個別に用意された十賢の部屋の一つ、ケテルの部屋。
入ったのは初めてだけど……さほど変わらないのね。
「見せよ」
唐突に結論だけを言う。
ケテルは毎回思考が速い。
一から十に飛ぶ。
理解は出来るけど会話を楽しむ事を覚えて欲しいわね。
私は人差し指を立てる。
(なんだ?)
「ほう、『クリフォト』よ、何を求める」
(我と話せるのかケテルよ……せっかくだ、答えてやる。求めるは『神なき世界』)
「……やはりか」
(丁度いい、お前なら我が名を知っているだろう? 言ってみろ、すぐに神なき世界が訪れる)
「ふっ、知っていると思うか? 何も信じぬ無神論者が」
(ハハハ、お前の中の方が居心地が良さそうだ、なぁコクマー、この指をアイツに……)
私は苦痛で指を曲げた。
「はぁはぁ、ここまでです」
言葉の量が増えれば増えるほど私なのか『クリフォト』なのか分からなくなる……危なかった。
これだけ無理をしたのも、終わりが近いからよ。
感謝しなさいケテル。
「参考になった」
「貴方なら理解しているはず、これはハイエルフ様の導き、迷わないで」
「もちろんだ」
ケテルの反応は分かりづらいがそのままの言葉と取ろう。
「これを使え——」
ケテルが指輪を私に放った。
それを私は反射的に受け取る。
「これは?」
「付けておけ。少しは楽になるだろう」
「へぇ……良いとこあるじゃない。」
すぐに付けてみると……確かに楽になった。
でも、どちらにしろ一時凌ぎね、それでもありがたいけど。
「ありがとね。ケテル」
お礼を言われるのは慣れていないのか、背を向けたままだったので、私はそれ以上、言葉を介さず自室に戻った。
今日の夜には前夜祭が始まる。
曲げたままの人差し指を見て思う。
——嫌悪感が心を支配する。
机の上のナイフを取り人差し指を思いっきり叩いた。
ガキンッ
(何回目だ? 無駄な……)
不快な声に指を曲げる。
はは……私は死ぬ事も出来ない。
命とは何なんだろうな。
——子供の頃、私は『エルフの英雄』と言う御伽話が好きだった。
いつしか歴史の探究を目的にエルフの国を色々巡る日々を過ごして行った。
そうやって知識を深めて行く間に『クリフォト』を知る事になる。
『クリフォト』との出会いは私が知識の探究でセフィロトの北『禁忌の森』に監査に訪れた時だ。
今まで何度か探究者達が触れた『一の無神論』の祭壇に触れた時に人差し指に痛みが走った。
最初は特に何もなかったがある時から眠る度に夢を見る様になった。
それはセフィロトの大樹とは真逆の禍々しい木……その枝の一つが語りかけて来た。
「神なき世界を」
それからだ身体を蝕む様に全身に痛みが走り出したのは、私はすぐに『クリフォト』と関連付けた。
そして、全力を持って封印を施したが人差し指に押し留めるのが限界だった。
そこからは長い長い孤独な戦いとなる。
その果てに絶望を知る事となった。
調べれば調べるほどにどうしようもない現実だけが突き刺さり私を苦しめた。
どうやっても、この国を巻き込む事になる。
十賢はそれぞれ強みは違うが個々は私と同格。
せめて私より強い依代があれば……と何度も嘆いた。
その頃からだ。
幾度となく自らの命を絶とうとした……
どこを裂こうが毒を飲もうが無駄。
魔力を限界まで使って水に身を投げた事もある。
結局は無駄に終わった。
私は死ぬ事も叶わなかった。
さらに、ある時から徐々に私が希薄になる事に気がついた。
混ざって来ていたのだ。
指を立ててもただ暇つぶしの様に話す『クリフォト』だが時間をかけて奪おうとして来ていた。
もう、猶予もない。
そんな時に私の目の前にあの白い男が現れた。
これを運命と呼ばずになんと呼ぼうか。
昔々多くのエルフを救った『ハイエルフ』の御伽話、私が生を受ける前のお話。
それが物語から私の前に現れてくれた。
また、貴方にエルフを救ってもらいます。
【アメリア】
──────────
顕聖祭前日——
夜……わたしはお祭りが始まった事に驚いていた。
「ねぇ、エル。
間違いなら悪いのだけれど、これは顕聖祭ではないのよね?」
「たぶん」
多分って、まさか今日が本祭? 一日ずれたの?
外が凄い盛り上がっているけど。
エルはこの時にも情報を集めてくれているが、どうも人の数が多すぎて必要な情報を拾えないらしい、わたしからは想像のできないくらいの負担だとは思う。
でも、今はエルだけが頼りだ。
ティア……一応、聞いてみよう。
「ティアはどう思う?」
「分からん、ただ何もしないのは悪手じゃな」
その通りだ、動けるのはわたしだけだ。
外に出てみよう。
わたしはエルに一言伝えて外に向かった。
夜の『エルクレスト』はお祭りのせいか、夜なのに賑やかでわたしの焦りとは裏腹に暖かく包み込んできた。
わたしの国で開催するお祭りよりも自然的でエルフらしい派手さのない雰囲気のお祭りだった。
「おおおーーーー!!」
突然大きな歓声が上がる。
その方向に顔を向けると。
突如として大樹『エルト・セフィロト』が今まさに命が宿ったかの様に根本から順に光がその太い幹を伝って伸びていく……枝を一つ一つ伝い無数にある葉が一斉に息吹を上げるかの様に光り輝いた。
「凄い……」
大歓声が鳴り響く。
光り輝く大樹と声を目の当たりにして感情の置き場のないわたしは叫んだ——
「うぁぁぁぁああーーーっ!!」
一人だけ意味の違う声も歓声に紛れて行く。
「晴れた?」
突然下から声が聞こえて見ると、そこにはエルがいた。
そう言えばティアもいたんだ……少し恥ずかしくなる。
「晴れるわけない、でも少しは……」
(そうじゃな)
まだ、止まぬ歓声の中。
わたしたちの心は静かだった。
「前夜祭」
エルが言う。
顕聖祭の前日にハイエルフ様を偲ぶためのお祭りらしい。
エルはそんな事を気にしてお祭りに来たことがなかったので分からなかったと言う。
まさかの失態からか、今回のエルの情報は的確だった。
今、眼前で光り輝く大樹の根元に建つ『根原宮』の前にある広間で明日の昼頃、儀式が開始される。
わたしたちはもう一度覚悟を決め、盛り上がり始めた前夜祭を後にした。
——宿に戻り、明日の作戦を練る。
エルの指示はこうだった。
まず、わたしは『根原宮』の広間の中心が見えるギリギリの位置で待つ。
場所はすでにエルが四箇所見つけてくれているが、不測の事態が起きる可能性からその日にわたしが四箇所ある中で最善だと思う所を決めて欲しいと。
エルも今回は近くまで来る。
少し離れた人の居ない森の中で待機すると言う。
準備は儀式が始まる青六メモリ前、カイルが広間中央に連れて来られる。
前と流れが同じなら『王冠のケテル』の演説の後、必ず『精霊』が一斉に空で七色に光るらしい。
それを合図にわたしが師匠を奪取。
そのままエルの所に向かい、師匠の転移で逃げる。
作戦はわかったけど、その合図で向かって行って、あのコクマーと同じ十賢のケテルだと言う人をだし抜けるの?と言う疑問にもエルは答えてくれた。
その辺も大丈夫だと言う。
わたしの考えつかなかった事も捕捉してくれた。
もし『精霊』が光らなかったらは、そもそもそれは絶対にないらしい。
その時にはエルが精霊の主導権を握っているからだそうだ。
それがあるから、ケテルの想像を超えた現象を起こして必ず油断を煽ってくれると言う事だ。
更にもし『王冠のケテル』がその瞬間さえ動じなかった場合はティアの光を浴びせる、二段構えで行くと言う。
それさえ無理な場合はもう精霊を暴れさせてやる! と、わたしより過剰になってるエルをなぜかわたしが慰める事になった。
でも、これで今度こそ準備は整った。
後は『顕聖祭』を待つばかりだ。
作戦会議が終わったのはもう日が昇る前だった事に気がつく……
「エル、言葉が少ないと話をまとめるのに時間かかりすぎ」
「……寝よ」
(そうじゃぞ! 妾も眠い……)
やっぱりティアも寝るんだ。
わたしは、寝れるかな?
気が張って寝れる気がしない……
それでも布団に入り目を閉じた。
師匠……
【カイル】
──────────
——『顕聖祭』当日
今日のお昼頃には儀式が始まるらしいので、朝から僕はコクマーさんと儀式の場所に移動し始めた。
やっぱりコクマーさんは普通の人よりも怖くない……あの部屋から出たのにだ。
なんで? 不思議に思うが話せるならいい事だけど、何かしら原因がわかれば今後に活かせるかも。
「ねぇ、コクマーさんのプライベート見ていいかな?」
(私も見ていい?)
勝手に見るのは悪いと思ったので聞いてみたらプライベートがわからないらしい……んー、情報?って聞いたら、見れるならどうぞときた。
いいのか、凄いな。
(いいって、ヒアも見れる?)
では許しが出たので遠慮なく。
(んー、見れない……)
——コクマー、女性、年齢は……長生きなんだね。
特におかしい所ないな……ん?
なぜか状態に『一の無神論』とある、神を信じない? まさかそれでとか?
(ヒア、髪引っ張んないで、集中してるから)
んー、原因としては弱いな……後はよくわからない単語が、ヨッド、ラツィエル、バチカル……わからん。
「ふふ……そんなに見つめないと、いけないものなのですか?」
あー、はい。見つめないといけないものだから滅多に人を見れないんですよ!
そして、ヒアは見れなくて不貞腐れている。
「そこが問題なんですよ」
「やはり、ハイエルフは面白いですね」
和やかだなぁ、これなら聞いても大丈夫かな?
「神様を信じてますか?」
僕の言葉を聞いた途端に笑顔が消えた。
「どう言う意味でしょう」
特に意味はないけど、無神論が気になって……これは駄目な質問なのかな?
僕は「特に意味はないです」と言うと、コクマーさんはその後何も話さず目的地まで歩く事になった。
ずっと静かに森を歩いてるけど、途中から凄く禍々しい雰囲気になってきた。
精霊もすごく怯えてるんだが、コクマーさんは気づいているのだろうか?
「ねぇ、周りが凄いの分かります?」
普通に聞いてみたけど「大丈夫ですよ、この邪悪な気を祓うのが今回の儀式です」と言う。
なるほどね、僕にハイエルフを降ろす事によってここが祓われるのか。
この身体に起こる変化がどうなって森が浄化されるのか、この儀式に立ち会えるのは僕にとっては幸運だったなぁ。
しかも、少数って所がいいよね。
お祭りの裏でひっそりと浄化される森。
神秘だね。
「もうすぐですよ」
コクマーさんが少し緊張ぎみだ、僕にも緊張が移る……
儀式で何が起こるか、その思いを胸に歩みを進めた。
面白かったら評価よろしくお願いします(´ー`)




