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元社畜神様はコミュ症すぎて異世界でも逃げ出したい  作者: 片白
4章 エルフ国編

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4-6 ようこそエルフの国へ 2



【アメリア】

──────────


 うわぁ……ここがエルフのお城?

 入った瞬間外の冷える感じとは逆に暖かい感覚に襲われた。

 その感覚が気のせいじゃない事にすぐ分かった。


「どうですか? 暖かいでしょう、ここは精霊が温度を一定に保ってくれているんですよ」


 そんな事も出来るのかと思っていたら、未だ師匠におんぶされているエルが「ありえない」と、言っていた。


 気になって聞いてみたら、案内者も分からないらしい……ただ、これから会う十賢の一人『コクマー』様って人なら知っていますよ、と教えてくれたが多分、質問は無理だろうとも忠告された。


 道中ここの事を軽く教えて貰った根原宮ラディクス・パレスのラディクスは根を意味しているらしい、大樹の根から国を守る意味がこの建物にはあると言う。


 全てが『精霊石』という精霊が協力してくれないと作れない鉱石で長い時間をかけて作られた神聖な場所だそうだ。


 なるほど、だからわたしの国では見た事のない鉱石だったのかと、納得する。

 そんな中エルが急におかしな事を言い出した。


(カイル、周りの精霊なんとかして)

(そんな事言われても無理だよ)

(ちょっと! 本当に何にも見えない)


 何の事? 道案内のエルフも何も言ってないのに……

 (どうしたんですか?)

 (精霊が群がって前が見えないの!)

 

 精霊……なんかわたしだけ輪に入れない。


 (ヒア、視点変えるからこれでなんとかして)

 (おおー、なんか違和感あるけど分かった!)

 (え? 私はこのまま?)

 (降りる?)

 (嫌)


 うん、ずっと羨ましい。

 エルはそのままで話はついたらしい。

 ……降りなよ!

 

 それにしても、この根原宮は暖かく程良い灯りが差しかかる。

 周りは緑と青の混じったコントラストに神殿みたいに周りに柱が立っていて目の前に二階に上がる階段があった。


 案内のまま、その階段から二階に上がり幾つかの扉を潜り、歩いている時に気づいた……この精霊石の床硬くない。


 この事も聞きたかったが目的の場所に着いてしまったみたいだ。


「ここです、お入り下さい。礼儀は大丈夫だと思いますがくれぐれも失礼の無いようお願いします」


トントン


「どうぞ」


 女性? とても冷たい声だ。


ガチャ


「失礼します。連れて参りました」


 立ち止まったまま中にと促された。

 案内者はここまでの様だ。

 私たちだけで中に入る。


——中は、思った以上に広い空間だった。

 こちらも周りに柱が立ち、中央に丸いテーブルがあり、その他は点々と本棚が壁際に備え付けられているだけだった。


 壁には大きな窓もあるが外は大樹の中なのか暗い、でも部屋の中は光源もないのにやはり明るかった。


 扉のすぐ近くから声がしたのに、中央のテーブルに腰をかけている人以外中には居ない。


 この人がコクマー様?

 私たちを見ると立ち上がった。


 目を瞑ってる。


——その姿は、灰色の背中まで長い髪……服装は足元まで隠れるローブを纏っていた。


「遠路はるばるようこそ、エルフの国へ。

 私は『知恵のコクマー』どうぞお見知り置きを」


 所作はとても綺麗だったがやっぱり冷たい声。

 聞くと背筋がゾッとする。


 わたしだけは礼節を持って挨拶した。

 エルはおんぶされながらも挨拶はちゃんとした。

 エルも大概だったが師匠と言う名のヒアの挨拶は更に違った。


「良い国よね。

 緑がいっぱいで、私はカイルよろしく」


 冷たかったコクマー様より冷たくするヒア。


 し、心臓の鼓動が速くなる……やめてよ。


 勝手に焦っていたら意外と師匠を見たコクマー様は驚いただけでなぜか少し柔らかくなった。


「ふふ、面白いお方ですね」


「ありがと、貴方も見た目は綺麗ね」


 ヒアは臆する事なく会話を続けるが、コクマー様の雰囲気は特に怒りもなく穏やかに言葉を並べていた。


「こちらこそ、ありがとう。

 私の見立ては正解でした——」


 やり取り全ての行動に違和感がなく、その裏に全く気づけなかった。


「不味い」


 エルが師匠から離れた。


「え?」


 どう言う事かと思った瞬間、途端にコクマー様が光出す。


「ここまで連れてきてありがとうございます。

 『簒奪者エル』」


 光の中で声だけが響く。

 え? 簒奪者? 連れて来た? 何の事?

 突然の光と言葉で理解できてない。

 

——光が収まってくる


「何があったの?」


 ……師匠が居ない?

 辺りを見渡しても師匠がいない、居るのはわたしとエルとコクマーだけだ。


 わたしはすぐに理解した。


「これは冗談ですか?

 エルフの偉い人だからといって許しませんよ」


 剣に手をかけようとしたが、ティアが無い!

(——検問で預けてた)


 そんな……あの時からの計画?

 最初から騙していた?


「エル、協力して。アイツを拘束する」


「無理」


 え? なぜそんな事言うの? 師匠はどうするの? 混乱しているわたしにコクマーが話しかけて来る。


「懸命です、簒奪者よ。

 第二王女アメリア様、貴方の不敬は赦します。

 宿は用意してあります。

 ごゆるりとこの国を観光して行ってくださいね」


 コイツは何を言っている……赦す?

 怒りが身体を支配する。


「ふざけるなーーーっ!?」


 コクマーに殴りかかろうとするわたしを押さえつけたのはエルだった。


「やめろ!」


 今までにないくらい強い口調に少し驚いたがそれどころじゃない、まさかエルも敵?

 わたしの感情はぐちゃぐちゃだ。


「まさか、貴方も敵?」


 そのままエルにも殺気を向ける。


「違う」


「嘘だ、なら何で協力しない!」


「仕方ない」


 エルが何かを呟いた途端わたしの意識は無くなった。



【エルトゥア】

──────────


 馬鹿、この状況でもう何をしても悪手。

 すればするほど向こうの思う壺。


 (精霊よ、眠らせて——)


 ごめん、アメリア。

 眠りに落ちたアメリアをゆっくり座らせる。


「ふふ。先程も言ったように貴方達の不敬は赦します。今日のよき日の私なりのご褒美」


 こんな危ない奴だとは思わなかった……失態。

 私のことも、アメリアのことも知っていた。


 逃してくれるなら今は仕方ない。

 でも、これだけは聞く。


「なぜ、攫った」


 コクマーは目を開いて私を見ながら人差し指を立てた。


「貴方にこれが見える?」


 何の事? 指以外、何も見えない……はっ、そういえばこの部屋に入るまではカイルに群がっていた精霊も見えない。

 どう言う事?


「見えない」


 私の言葉を聞いて興味を失ったかの様にその後の答えはなかった。


 その後は、根原宮を出てコクマーの指示で用意された宿屋に通された、アメリアも丁寧に運んでくれた。


 道中色々聞かれたが、コクマーが特に何も言わなかった様なので問題は起こらなかった。


 ただ、会話の中で「あれ? ハイエルフ様は?」と聞いてきた所を見ると、カイルを攫ったのはコクマーの独断?


 とぼけている可能性もあるけど、あの感じなら独断と見て良いのかもしれない。


 問題のカイルは転移されたと見て良い。

 光で誤魔化していたがダンジョンの転送に似た術式が足元に浮かび上がった。

 くっ付いていたのですぐに分かった。


 あの瞬間、私は後の事を優先してカイルから離れた。

 一緒に行く手もあったけどアメリアが暴走すると踏んで。


 私が何も考えずここに連れて来たせいだ……

 

「ゆるさない」


 私は布団で仰向けになりながら覚悟を決めた。

 精霊を使いこの国の精霊を根こそぎ奪ってやる。

 コクマー、私は『簒奪者』……覚悟しろ。


 カイル待ってて、必ず助ける。



【コクマー】

──────────


 誰も居なくなり一人になった。

 歓喜の感情が身体に巡る。


「本当によき日。

 これでこの国は救われる」

 

 しかし、聞いてた通りハイエルフという者は精霊に好かれるのね。

 最初、精霊の塊が扉から入って来て驚いてしまいました。


「ふふ」


 私が驚いたのは何十年振りでしょう。


 さて、カイルと言ったあの子は今は『封印の間』にしっかり移動している筈。

 下手に逃げられたら敵いませんものね。


 後四日、本当にありがとう。

 間に合いました。


 ——そういえば……

 あの簒奪者エルがこの国にまた訪れるとは。

 過去の事を忘れてしまったのかしら。

 まぁ、どうせ何もできないでしょう。


 人差し指を立てると、黒いモヤが浮かび上がる。

 (なんだ?)

 (……貴方が見える私は異質なのかしら?)

 (ハハハ、お前はただのエルフだよ)

 (そう、それなら良かった。もうすぐ貴方ともお別れよ)

 (どう言う意味だ?)

 (楽しみにしていて)


 指を曲げる。

 私が私である限りこの国は渡しません。


 さて、カイルを見に行きましょうか。



【カイル】

──────────


 ここどこよ?

 急に飛ばされて体が全く動かせなくなった。

 立ったまま固まってる。


 ただ、誰も居ないのは嬉しい。


(ねぇねぇ、どうするの? 動かせないんじゃどうしようもないじゃない!)


 ヒアが横でうるさい。

 でもなぁ、何で動かせないか気になるんだよね。解析したい!


 アメリア達も心配したけど、宿にいるみたいだし。少し僕は捕まっている事にしておこう。


(少しこのままでいようか)

(何でよ? 二人が心配じゃないの?)

(アメリア達は宿でゆっくり寝てるよ)

(は? カイル様が捕まっているのに薄情じゃない?)


 まぁ、確かにそうかもだけど今回は二人に任せ過ぎた……少し休んでもらうのもありだ。

 もし、危なそうならちゃんと伝えるって事で。


(まぁ、たまには羽を伸ばしてもらおうよ)

(私もあっちに行きたいんですけど!)

(良いよ、行って来なよ)


(……心配だから、ここにいる)


 そっか、なら僕はこの空間の謎を解きたいので、ヒアにはご飯をあげよう。


コロコロ


(わーい、カブ)

(……ねぇ、毎回同じだと思ってる?)


(思ってるよ?)

(そっか、いただきまーす)


 さて、解析開始——

 この部屋、というかこの建物全てが精霊みたいだね。特にここは独特だ、大きさは個室程度。

 至る所に術式みたいな紋様がある。


 周りにいる精霊が話しかけてくる。

 (待って、答え言わないで!)

 

 この国に来てから延々と精霊に纏わりつかれてとうとう会話ができる様になってしまった。

 

 これだと、精霊にはちゃんと黙っていてもらわないとネタバレされちゃうね。


 謎の緊張感に、楽しくなって来た。


 えっと、まずはって念糸も出せない。

 なら何で思考は出来るんだ?

 あぁ、なるほど意識は大丈夫なのか。


 でも、外から……うん、そう言う事ね。


 だとすると、地面とくっ付いている肌からはどうかな?


 ……できたね。


 つまり、僕の体の中でなら力は使える。

 外からでも体を介せば力が使える。

 部屋の中だけが効果範囲。


 足の裏に面している地面からすぐ下は部屋の効果がない。

 結果、足裏からこの部屋の術式を削って『念糸』を外に出せる事が出来た。


 僕の能力の不思議な所だけど、魔力や精霊を使った力ではないのでこの中に意識を滞在させる事は出来るみたい。


 精霊はこの部屋に入れない所を見るとこれは当たってる。

 でも、この部屋に物理的に効果を与えようとすると意識体だけでは無理で体を使わないとできない。


 結果、力場の中でも意識体を飛ばせば外は見放題、聞き放題。

 しかし、体の中に入ると動かしたり音などは聞こえなくなる。


 でも、足元から壊せる時点でガッカリだなぁ、時間をかければ脱出は容易。

 一部を壊しても効果が切れないのは面白いけど。

 

 もし僕を捕まえるなら浮かして捕縛するべきだったね。

 それならもう少し考える余地もあったなぁ。


 それでも無効化もできる様にしておこうかな? 何かの役にたつかも知れないし。


 そうだ! 浮いた状態で捕まったと仮定して解いてみよう。



 人の気配がする。

 あぁ、ここまでか。


——誰か来たよ……


(ヒア、誰か来たからお願いしていい?)

(ムゴッ? やだよ……ご飯中だもん)


 ご飯が仇になるとは……


 どうしよう。




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