4-4 道中色々ありまして 4
【カイル】
──────────
(ねぇ、ティア。ビブリナとの関係は?)
——道中ちょろっと『糸念話』で管理者の事をティアに聞いてみた。
ティアとの内緒話だね。
話によると、ビブリナは『クレメンティア』の親みたいなものらしい、最初からそう言う概念を持って生まれた。
なので、本人を見た事はない。
だからこそ、同じ存在である僕を見て見間違えたと。運命めいてるね。
そこで思い出したけど、世界の管理者は『ゲージ』と言う溜まると世界に可能性を埋め込む事ができる力を持っている。
埋め込む事で管理者が一つ世界を押し上げる。
因みに僕の世界で僕は『エネルギー』と言う概念を埋め込んだ事がある。
それによって、電気やガスなどの燃料などが生まれ出した。
そうやって世界は管理者の個性で変わって行くのだ。
ティアの話を僕なりに想像すると、その可能性で産まれたと考えるのが一番しっくりきた。
ビブリナを知っているのは、その可能性をどう打ち込んだかによるけど、そこまでは分からないね。
仮に僕の可能性で世界がどう判断し始めたかは正確に細かくは、わからないしなぁ。
こうやって中に入ると一つの可能性で色んな変化を起こしているんだと、思うと面白いよね。
そういえば、放り出した僕の世界は大丈夫かなぁ……
逃げ出す事でいっぱいで今更心配しても、何の意味もないけどさぁ。
(ティアありがとね)
(改めて思うと妾は何故、生まれたのだろうな)
(それは、ビブリナにしか分からないよ)
(確かにのぅ)
——そんな事がありました。
ガラガラ
僕はあれから二日、一人で御者を出来るようになりました。
成長って素晴らしい。
みんなの役に立てるって素晴らしい。
そして、『御者の極意』を『称号』として手に入れていた。
これも世界の理なのかな? もしかして、ビブリナの発想で埋め込んだ可能性?
これはわくわくするギミックじゃない?
集めたいけど条件がわからないから今は置いておく。
その称号の効果に『目を瞑っていても御者をこなせる』とあった。
たださ、元々目を瞑っていても出来るので、効果は微妙でした。
称号は関係ないけど、僕は頑張った。
馬を休ませる時以外は夜通し走ったくらいに。
アメリアの静止を振り切って御者ったら心配してずっと隣にいる事以外は、役に立てたと思う。
「朝だよ、アメリア」
いい、朝日だ。
そして馬車とも今日でお別れだ。
なぜなら、あと少しでエルフの国らしき場所にたどり着くからだ!
(みんな、そろそろ着くよ)
もう直ぐ着くと言うのに、僕の心はもう風前の灯火だった。
早く起きて僕と変わってほしい。
人がいる所に僕一人では無理です。
何でもします、心が折れそうです。
体が震えてきた。
エルフもだめか……移住は無理だな。
さて、現実を考えればそろそろ馬車を止めて休憩するのが一番だ。
丁度いい広場が見えてきた。
あそこなら馬車を止められる筈だったが、その光景に唖然とする。
な、何だと……広場にエルフが沢山隠れている。
僕の索敵に引っかかりまくってる。
何をしているのか分からないが、素通りするしかない!
ガラガラ
どうする……広場を素通りしたは良いものの、木で囲まれた至る所にエルフが隠れてる……か、かくれんぼか?
下手くそに隠れている所、申し訳ないけど探さないよ?
こんな強制かくれんぼ聞いた事ないし。
完全にこっちを意識しているのが嫌。
人嫌いセンサーにビンビン来る。
——イラッ
隠れろよ!こっちを意識したらバレるだろうよ!
「かくれんぼ舐めんな!」
……”逃げる”隠れる”事に命を懸ける僕に対して情け無い隠れ方してるから、つい、叫んでしまった。
あぁどうしよう、このまま行くと集落みたいな所に着いちゃう。
何で誰も起きてくれないの?
(誰か起きて!)
(な、何じゃ? 先程から師匠よ)
その声は剣?
もうこの際ティアでもいい!
(エルフってかくれんぼ好きなの?)
(……師匠よ。
だから言うたろ、寝た方が良いぞ?)
僕は普通の疑問を口にしただけなんだけど……
僕が寝たら剣が御者るの?
(し、師匠!囲まれとるぞ!)
いや、ずっとその話をしているんだが、馬車はそのエルフを無視して突き進んでいる所です。
(知ってるよ。隠れんぼエルフを見つけた方がいいの?)
僕はやだよ?
(師匠よ、今の現状をなんだと思っておるのだ? 敵に囲まれておるんだぞ?)
え……エルフって敵なの? 何で?
子供達もいるよ? 普通は喜ばない?
エルのイメージしかなかったけど、エルフって凶悪?
ガラガラガラ
【エルフ警備隊】
──────────
——「馬車に子供達が……人攫いです!」
と、斥候から連絡を受け、すぐに眠らせて捕えろと命令をだし現地に向かった。
が、なぜまだ落ちない?……仕方がない。
強力な精霊魔法をかける。
数日は確実に眠りから覚めぬ危険な魔法だが、一人なら致し方ない。
「各自、散開して指定の場所へ。
包囲してレベル5睡眠を行使する」
——我らエルフの精霊魔法は、レベルが上がるごとにその質を変える。
個人が使役できる精霊の限界から、レベル3が個人の限界。
だが、レベル5ともなれば六人以上の連携が必須となり、その威力は古のドラゴンすら強制的に眠りへ引きずり込むほどだ。
人間には過剰だが仕方がない——
「準備が出来しだい、精霊の合図を待て」
——隊長からの命令が来た。
「やるのですね……」
あの御者は、レベル2、レベル3の魔法を受けても平然としている……命令通りレベル5で終わりだ。
無駄に耐性を持つ己の不運を呪うのだな。
精霊の合図が来る。
エルフ八人による眠りの極意。
「動く馬車だ!正確に御者だけを狙え!」
(眠れ眠れ……大樹の根本に……安らかな永遠の眠りへと)
八人の声が精霊に届く——
「大樹の子守唄」
——八方の精霊から一斉に放たれた言霊が御者どころか馬車にたどり着く前に跳ね返ってきた。
「——なにっ!?」
効果がないどころか弾かれた。
まずい
「各自、レジ……」
無理だ……ね、む……
ドサッ
【カイル】
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——僕たちは馬車を一旦停めていた。
(それならそうと早く言ってよ)
(そんな勘違いする奴がおるか!)
知らないよ。
ティアが言うには、みんなが起きないのはエルフのせいで、何故か僕たちが子供を攫った可能性があるからと捕えるために囲み、ずっと眠りの魔法を僕にかけ続けたと。
ティアに魔力を読めと言われたけど、読む以前に、人をそんな長時間みれないんだよ……
そんな事をされていた事にちょっとムカッとしたので魔法を弾いたらエルフさん達、木からボトボト落ちてきた。
(ねぇ、どうする?)
(とりあえず、主人とエル殿を起こすのが良いのでは?)
その通りだ。
結局エルフも人と変わらない、見たくも触りたくもない。
エルがたまたま例外だっただけだ。
小さいからなのか、最初の出会い方なのか、似たようなのが居てくれれば検証も出来るのだが。
——解除
パチンッ
すぐに二人が起き出した。
いきなり話し合いもせずに眠らせるなんて……ありなんだ?
そう言うのがありなら僕もやっていいかな?
手っ取り早く無力化……いいね。
「師匠……おはようございます」
「眠い」
二人ともだるそうだ、子供達は寝かせといた。
あとヒアもぐっすり寝ています。
「襲われたんだけど、エルの仲間達?」
「違う」
(種族は同じだけど、仲間ではない)
エルが言うには、子供達を助けるための斥候部隊が僕たちを見つけた挙句の惨状と、エルも同種族として保護対象に入っていた可能性。
何故馬車の中がわかったかは、精霊に頼んだと。
エルフはみんな精霊魔法使いらしい。
(起こした方がいいの?)
(いえ、足の一本でも折らないと)
話を聞いたアメリアは、いつも通り好戦的だ。
この状況はヒアも起こして三人に交渉は任せようかな。
(縛るのは賛成、でも折っちゃだめ)
(妾もそう思う)
結局、アメリアに全員を纏めてもらい手頃な木に拘束した。
弾かれた魔法は拡散するらしい、よく分からないが近くにいたエルフ達、総勢二十人。
ヒアと一緒に起こすか。
——解除
パチンッ
「はぁーぁ。おは、よう」
「ん……」
僕は離れて見守りながら何かあったら、頭の上のヒア任せで行こう。
あとはアメリアとエル、お願いします。
(後は任せるよ)
【エルトゥア】
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いつの間にか他の精霊が混じってる。
全部貰おう、こっちも、これも。
わたしはこの国で『解放者』と呼ばれてはいないけど自分で呼んでいた。
ダメな奴、怠け者、悪人などから精霊を救う。
良い人からは奪わない。
私が『悪』と決めた奴から根こそぎ奪う、泣いていようが奪う。
なぜなら悪い奴だから。
そんな私は一部から『簒奪者』と呼ばれた。
なんか、嫌だったので自分で『解放者』と名乗る事にした。
この事はみんなには話してない。
言葉と言うのは大事なのだ。
エルフの精霊との信頼関係は、お互いがどれたけ信用に値するかで決まる。
その一番の要因は他者との言霊数。
精霊は嫉妬深い、その為仲がいいのは貴方達だけと常に意識づけないといけない。
全て私の持論だが実際、四万もの精霊を集めたんだ。
実績こそが、雄弁に真実を語る。
(さぁ、精霊よ私と共に)
もらい放題だ。
——精霊が私の元に来て喜んでいる。
悪い奴……
「万歳」
「エル?どうしたの?」
「気にしない」
あらかた解放した時。
カイルの指が鳴った。
パチンッ
カイルの不思議魔法で起き出した。
毎回、恐ろしい事を平気でやる。
この寝ていたエルフ達にかかっていた眠りの魔法はレベル5『大樹の子守唄』だ。
一度かかると数日は起きる事はない恐ろしい魔法。
使い所によったら命の危険だってある。
こんな奴ら精霊を奪われて当然。
因みに私たちが、かけられていたのはレベル1、寝ている所にかけられたので気づかなかった。精霊が教えてくれた。
レベル5を簡単に解除できるカイルはやはり、ハイエルフ?
(後は任せるよ)
カイルからの指示だ、当然だけど的確。
エルフの私か第二王女が交渉するのが最も無難。
そして、時点で妖精族のヒアもあり。
「お前たち、こんな事をして!
な……同族のエルフがなせそちら側に?」
起き出してすぐうるさい。
「仲間」
「なぜ、人間の味方をする!我らの拘束を取れ」
「無理」
「脅されているのか!卑怯な人間どもめ!」
「……」
(私はリタイア)
(何でですか!貴方はエルフなのに)
(はーい、私がやります!)
(え、ヒアちゃんが?)
(妾でも良いぞ)
(ティアは剣でしょ!)
エルフ話聞かない、めんどくさい。
私の言葉数じゃ一生掛かっても無理そう。
(ヒア、ガンバ)
【エルフ警備隊】
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何故だ、我らはどうして起きている?
レベル5を弾かれた筈だ……
それに、さっきから精霊に呼びかけて居るのに反応が全くない……寝ている間に何があった。
くっ……日の位置も変わっていない。
あれから時間はほぼ経っていないと見るべきだ。
これでは助けは期待できない、このまま我らも売られて——
「あんた達、反省するなら許すけど」
エルフの同胞とは違う声。
許すだと?誰だ……声の方を向く。
一番奥の白い男?いや、声が女だった、白い女?
って何だ、あれは!
白い女の周りに精霊が群がっていた。
ありえ……ない。
「ハイ……エルフ」
身体中に悪寒……いや、これは喜び?
我らは対応を間違えたのか?
精霊に好かれる人間は居ない、はず。
フードで耳が見えない……なら可能性はある。
それなら、色々説明もつく。
周りの捕まった仲間達も同じ結論の様だ。
「はい、エルフ?自己紹介は良いわよ、どうするの?」
せ、正確に伝わっていない。
だが、それは良い、機嫌を損ねない様にしなければ。
「わ、私たちはエルフの防衛に携わる者達です。先程は子供達を……いえ、子供達を助けていただきありがとうございます」
余計な言葉は要らないな、我らができるのは傅くのみ。
「へ? 急に、わ、わかればいいのよ。
子供達は馬車で寝てるわ。連れて行くなら優しくね」
やはり、間違いではない。
この慈悲深さ、例え違っても我らの代表に会ってもらわねば。
「で、できましたら、我らの国に来て頂けぬだろうか? 丁重にもてなします」
【カイル】
──────────
ガラガラ
何だろなぁ……いつの間にかエルフの国の首都に行ける事になった。
僕はこの流れに乗らなかった!
だってそうでしょ、エルの話だと首都に行くのは無理だと聞いてたし安心してた。
向かう筈だったエルの故郷はそこまでの人数は居ないと聞いた。
そこならまだ大丈夫かな?と思っていたら、いきなり本丸ですか、そうですか。
もしかしたらエルフ少ないかな?とも思って見てみたら精霊が邪魔で何も見えませんでした。
あれは魔境かな?
僕はこの何日かで新たな力を手に入れた。
このためだったと思っても過言ではない。
何度か試したけどバレなかったので誤魔化せるだろう。
いや、誤魔化せる!…………多分。
これにも欠点はある、ヒアだけは僕の頭の上にいるので効果がない事だ。
それだけはヒアが離れてる時を狙いたかったが無理だった。
さて、不甲斐ない僕でごめんね。
「後はよろしく」
面白かったら評価よろしくお願いします(´ー`)




