4-2 道中色々ありまして 2
【梟の目】
──────────
「入れボケが!」
ドンッ
ドサッ
キィィィ
ガチャン
「くそ、こいつ一人に仲間十五人殺られたんじゃ割に合わねぇ」
俺たちは『梟の目』かなりでかい組織だ。
ここは、俺たちのアジト。
宝の山の情報を得て遥々、エルフ街道まできたっていうのに、一番要らねーやつしか捕まえられなかった。
今後、コイツを手掛かりに本命を手に入れられればいいんだが、怖がってる癖に何をしても口を開かない。やり過ぎて動かなくなっちまいやがった。
「頭に来るぜ、コイツのせいで俺が怒られた」
はぁ、出世してぇなぁ。
「あれ、君だけ?ちゃんと見張り立てないと……逃げられたらどうするの?」
突然横から声がした。
「どわっ!誰だ!」
え……まさか、暗がりでも分かる黄色い瞳の……
「イヒトさん……すいません。
何人か仲間殺られちまって」
俺の顔を見定める様に見てくる。
聞いたとおり不気味な目だ。
冷や汗が出てくる……
「そうなの?それは、大変だね。
ならしょうがない、無理しないで頑張ってね」
イヒトさんが去って行く。
よ、良かった。
初めて見た……噂に聞く黄色い目の男。
あれが幹部の人の持つ雰囲気か……
やっぱり、でかい山だと出てくるのか。
「あ、逃げられたら命無いからね」
もう姿も見えないのに、声が耳元で聞こえた事に心臓が跳ねる。
「ひぃ。はっはい!」
誰も居ないのに返事をせざるを得なかった。
何かしらの魔道具か?
……噂は知ってる。
幹部クラスはそれぞれ特有の魔道具持ちだと。
「俺も欲しいなぁ」
魔道具は夢だ。
魔法が使えなくても魔法の様なことができる。
ただ、結局は魔力を燃料にしているので、魔力がないと他人に頼むしかなくなる。
それでも、俺たちの様な中途半端な存在には夢のようなアイテムだ。
俺もいつか上に上がって専用の魔道具を手に入れてやる!
なのに——
「なんで、見張りなんてやってんだろ……」
はぁ、誰か見張り変わってくんねぇかなぁ。
【イヒト】
──────────
何だろね。
第二王女、エルフ。
あの中で何故か一人だけ普通の人がいるから不思議に思い調べたけど。
あの国で起こった最近の事柄に毎回、何かしらの関与をしてたとの話だ。
報告によると何故か僕たちの斥候隊の前に突然転がって来たと言う。
本腰入れていざって時にそんな事になれば肩透かしだ、僕が呼ばれたのもその為だったのに。
「うーん、さっき牢屋の彼を見たけど……」
期待はずれだよね、あれならその辺の冒険者の方が強そうだよ。
僕も見た目が弱そうで苦労したけど、彼は度を越してる。
捨てられた?取り柄なさそうだしね。
「でも、不気味さはあったね。白いし」
白かったねー、それで買値も高くなるかな?
実験に使えればと思ったんだけど、残念。
あれは、売り物っと。
「ねぇ、拷問は僕も立ち合っていいかな?」
目の前の知らない仲間に聞いてみる。
まぁ、何もないと思うけど一応、拷問を見てみるか……不可解な点もあるし。
「は、はい!それはもちろん構いません」
怖がられてるね、僕は温厚な方だと思うけど。
ただ、やっぱりネジは狂ってるかなぁ、自分でも自覚できる程に。
「そ、ありがと。君、出てっていいよ」
僕は一人が好き。
慌てて出て行く彼を見送り、机の上で記録を取ろうとした時、急に壁際に押しつぶされた。
バタンッ
バンッ!
「な、なに!?」
目の前に見えない膜がある……おかしいな。
僕以外は動いてない、椅子は僕が引っ張られた時に倒れた……だとすると、生物だけか?
ちっ、さっきの知らない人出さなきゃ良かったよ、情報が無さ過ぎる。
でも、殺す気はない様だ。
プヨン
触れたら柔らかい、その為に壁に押し付けられても死ぬことはない。
ただ、これはやばい。
どのみちこのままじゃ全員捕まるし、ここを洗いざらい調べられて……情報が漏れる。
「んー、仕方ないか。
僕にはどうにも出来ない」
さて、ここの人達には悪いけど僕は逃げるね。
——イヒトの周囲で空間が歪み始めた。
次の瞬間、イヒトの姿が掻き消える。
後には、壁に押し付けられた跡だけが残った。
【カイル】
──────────
初心者が馬車を動かしてはいけません!
最初は順調だった。
真っ直ぐな街道が延々と続き、調子に乗って鼻歌混じりで軽快に操縦していた。
だが——
坂道が始まったり、緩やかなカーブに差し掛かる。
曲がらなくなり制御が効かなくなる。
そして、馬車がどんどん不安定になる。
二つ目のカーブで——
僕は転げ落ちた。
そのまま、馬車は僕の手を離れ何処かに走りさって行った。
そりゃすぐに戻ろうとしたよ?でも災難って重なるよね。
あまりにも転がったせいか、何故か目の前に知らない人達がいて、僕は怖くて瞬時に『反射的ボイド』しました。
今にして考えると飛ぶべきだったと思います。
思考が人を見たくないになってしまう。
——そして、気づいたら僕にとって二度目の牢屋に入れられていましたと。
何だかなぁ……外に一人、中に沢山。
「子供達だ……」
子供で安心しているけど、これじゃ僕一人で逃げる訳には行かないね。
一応、みんなを安心させないと。
「ねぇ、君たち大丈夫?」
……駄目だね、全然話してくれない。
ぐー
ぐー、ぐー
ぐー
なるほど、お腹空いているのか。
僕の不思議空間にはヒアの為に色々入っている、もちろん毒なしだ!
まぁ、無難な果実がいいよね。
「はい、みんな食べ物だよ」
少しは笑顔が見れた。
けど、やっぱりまだ警戒してる。
その時、僕のフードからヒアが飛び出した。
「わーい、ガブ」
お前……子供からご飯を奪うまでに堕ちたのか。
「よ、妖精さん!」
な、いきなりだったから『認識阻害』忘れた……けど、結果的に良かったのか?ヒアを見て子供達が群がってる、そこから果実を食べ始める子供も出てきた。
「ヒア、大活躍だな」
貪りながら羽をパタパタして喜んでる。
ただ、不運というのはずっとついて回るよね。
「何!そいつは、妖精族!
ははは、役立たずが黄金背負ってたぜ!」
振り向かずに分かった。
見張りにヒアがバレたと、子供達の為に認識阻害をかけなかったのが、すぐに裏目にでるとは、もう神に見放されて……たね。
すぐに誰かを呼びに行こうとしたので、咄嗟に結界を広げながら張った。
僕は人間嫌いを突き詰めて行った結果、生み出した技を本日公開!
「な、何だこれは……」
この技は苦手な人を僕を中心に遠ざける事ができる、とても素敵な技だ。
しかも押しつぶされない様に柔らか仕様。
包まれると音も遮断します!
殺傷能力は皆無。
悪人ばかりとも限らないしね。
後で他の人に判断してもらえばいいさ。
「みんな、もう大丈夫だよ」
僕が、許可してる人や物には影響ありません。
みんな、キョトンとしてるけど。
まだ外に出られた訳じゃないしね。
後は、みんなを呼ぼう。
【アメリア】
──────────
朝、眠りから覚めたら、広い場所に馬車が停まっていて、師匠が居なくなっていた。
「ど、どうしよう」
何の手がかりもない……そうだ、ティアは剣!寝ないはず、
「ティア、師匠は?」
「すまぬ、寝ておった」
とんでもない答えが返って来た。
え……寝るの?寝ると休まるの?
ティアの言葉に思考が持っていかれる。
「どうやって?」
そうじゃない!どうでもいいのに……
「目を閉じてじゃが?」
目ーーーーっ!見えてるからあるんだろうけど、閉じるって何を?瞼?
「無駄話し」
はっ!……エルに救われた。
「ありがとう、エルは?」
「寝てた」
全滅。
現状を把握しようにも手がかりも何も無い、仮に『梟の目』に襲われるなら師匠だけ攫うのはおかしい……客観的に考えてだ、わたしなら師匠を攫う。
……違う、そうじゃない!
「誰か、わかります?」
「トイレじゃな」
「お風呂」
誰も師匠を心配しないのは何故……なんでこんなに淡々と出来るの?もうかなりの時間が過ぎてるのに。
「そんなわけ、ないじゃ無いですか!」
「大体ティア!剣なのだから寝ないで!」
「そんな、殺生な……」
「エル!膝枕されといて、その態度は何?」
「嫉妬?」
むかーーーっ!
「ばかーーーっ!」
わたしは、爆発した。
「連絡あった」
は、え?連絡?誰?
「誰から?」
「カイル」
「おお、よかったのぅ」
よく考えると呼び捨て!
いゃ、うん、確かに、良かった。
生きてた……
「師匠はなんと?」
「迎え」
なるほど。
——エルが言うには今動けないから迎えにきて欲しいと、場所を聞いてびっくりした。
まさか、『梟の目』のアジトに単身で乗り込んでいるなんて……師匠、なぜ一緒に連れて行ってくれなかったんですか?
私たちは、馬車を繋ぎ置いて、走って師匠の所に向かった。
道中エルが疲れたので、エルのペースに合わせたら昼過ぎになってしまった。
『梟の目』のアジト、そこは中級貴族が住む様な屋敷だった、一度、俯瞰で見た時より迫力があった。
一組織がこんな所にこんな大きな建物をいつの間に……裏に何か大物でもいる?
自分の想像に少し重圧を感じてしまい、扉が重く感じた。
——開いてる。
ガチャ
スー
警戒して中に入ると静かすぎた……何の音もしない、生活感というか、人がいない?
(来たね、中に入って地下に来て)
師匠!昨日以来の師匠の声。
安心したけど敵陣、急がないと。
移動中、我が目を疑いながら歩く。
所々に大量の人が張り付いていたからだ。
「これは……」
「見事に人が壁に張り付いておるのぅ」
「不気味」
もしかして、屋敷の中の敵全員こんな感じに?
これを師匠がやったの?しかも、みんな生きてる……無殺で敵をこんな人数捕まえるなんて、凄いとかのレベルじゃない。
そのまま、地下に入って行くと師匠が子供達と和気あいあいとしていた。
ギャップにびっくりだ。
どうやったのかは分からない。
でもこの状況……だから一人で来たのですね、子供達を無傷で助ける為に。
「師匠!」
「やぁ、待ってたよ」
【カイル】
──────────
やっと一段落かな。
ただ、この結界は僕を中心に広がるので、僕が動くと結界も動いてしまう、手順を間違うと人に出会う……それだけはごめんだ。
避けなければいけないのは、一に中の人、二に外から来る人だ。
先ずは、早く説明して中の人を捉えて一ヶ所にまとめてもらう。
「来て早速だけど、捉えた人を縛ってくれる?」
——僕の言葉でアメリアが動いてくれた。
エルはここまで来た事で疲れて上で椅子に座ってるらしい。
また、アメリアだけに負担が……仕方ないけど、何も出来ない師匠でごめん。
「師匠!七十八人居ました。
一ヶ所には難しかったので二階の各部屋に十人ずつ詰め込んで鍵を掛けときました」
多い!どんだけいたんだ。
正直、アメリアには驚いたよ。
僕の期待以上に人を遠ざけてくれてありがとう。
アメリアに感謝の言葉を伝えた。
「ひゃい。気にしないでください、わたしにはこのくらいしか出来ませんから」
何を言ってるんだろ……僕の方が役立たずな気がするんだけど、アメリアは謙虚だね。
見習わないと。
さて、子供達をいつまでもこんな所には可哀想だ、上に連れて行こう。
「怖い人達がいなくなったみたいだから、上に行こう」
すっかり仲良くなった子達と上に上がって行く。ヒアはすっかり子供達の先頭に立っていた。
「ついて来なさい!」
偉そうだ。
計十六人、こんなに閉じ込めて最悪な人間達だよ……階段を上がると下より明るくなってくる。
よく見たら子供達の中には耳の長い子も居た。
子供達を広い部屋に集めて好きにする様に促した。
それぞれ楽しそうにはしているが、行動はみんな一緒にらしい、恐怖からか不安からか……今はそれがいい方向に動いてるからいいかな。
「師匠、そろそろ騎士団があの街道に来るのでこちらの連絡をしたいのですがいい方法ないですか?」
来た、これが僕の二つ目の避けたい事。
今までの経験上、何かあると人が後から増える、しかも大量に。
常に意識していれば対応は可能だ。
順序は完璧だ、犯罪者を捕らえた後になれば問題はない。
この状況になればもう教えても問題ない、ただ、これはアメリアとエルの助けが必要だ。
「あるよ。アメリア。エルの所に行こう」
ヒアに子供達を任せてエルの所に向かう。
——そこからは、いつものように背中に触ってもらい意識を飛ばす。エルの精霊から糸念話を出し騎士団に……って騎士団はまだ来てなかった。
そんなとんとん拍子にはいかなかった、仕方ないのでエルの合図があるまで寛ぎ、合図と共に騎士団にアメリアが連絡した。
一人だけだと聞いていたので準備が必要と言う話になり、時間がかかる事となった。
僕たちは予定を大幅に変え、ここで二日過ごす事に。
「まぁ、部屋はまだあるし、ゆっくりしよう」
「はい!」
「そうじゃな、食料は妾と主人が取ってくる」
行動的な剣だ。
食料探しは僕も得意だよ?
「ねぇねぇ、子供達と遊んできていい?」
ヒアはそれが一番似合う。
どうぞ、どうぞ!
(色々教えて)
エルは念話に味をしめたね。
まぁ、長く話してもデメリットないのは大きいもんなぁ。
結局は子供達を助けられて良かったのかな。
僕にとっては不運でも、誰かの助けになれたなら気は楽だ。
なんか、今の考えに不穏がよぎる。
だめだ、切り替えよう。
この二日は何もしないぞ!
あ、馬車はどうなってるのかな?
……やる事は結構あるかも。
素人が御者ったらダメみたいですね
面白かったら評価よろしくお願いします(´ー`)




