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元社畜神様はコミュ症すぎて異世界でも逃げ出したい  作者: 片白
4章 エルフ国編

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4-1 道中色々ありまして 1



【カイル】

──────────


 ガラガラ


 僕たちは、何の危険もなく、馬車に揺られていた。

 最初の頃はみんな外を眺めて景色を楽しんではしゃいでいたが、変わらぬ景色にいつの間にか静かになり、二日目となるとエルが馬車の中で顔色が分かりやすく青くなっていたので聞いてみた。


「どうしたの?」


「よ、た」


 よた?

 アメリアが補足してくれる。


「酔ったみたいです。」


「酔った?って何?」


 ギョッとされるが、知らない。エルの状態にも『馬車酔い』って出てる。


「あの、馬車の揺れを辛く感じる症状です」


 ほう、コミュ症の揺れ版?想像しただけでゾッとする。


「師匠、そんなことも知らぬのか!」


 アメリアかと思ったらいつの間にかティアにまで師匠呼びされてる。僕はお前の何の師匠だ?


「私はわからなーい」


 ヒア……期待してないよ。

 ただ、ヒアには最近甘くなってるので認識阻害かけてご飯をあげる。


コロコロ


「わーい、ガブ」


 さて、辛そうな思いがガンガン伝わってくるので、隣のエルを休ませる。


「横になってなよ」


「うん」


 そして、僕の膝の上に頭を乗せる。


「おっと」


 急にびっくりしたけど、まぁいいか。


「快適」


 対面のアメリアがワナワナしてるけど、特に何も言わないので、気になる事を聞いてみる。


「誰でも良いんだけど、エルフ国ってどんなとこなの?」


 全く知らない僕に二人とティアが話してくれた。

 ビブリナの森の何倍もの広大な森の中にいくつもの集落がありその中心が首都の『エルクレスト』と言うらしい。


「それで、僕たちはその首都に向かうの?」


「違う」


 違うのか。

 エルの故郷は周りに点在する集落の一つで、そもそも首都には許可なく立ち入ることは出来ない……誰でも知ってる話だと言われた。


 知り合いに精霊を飛ばして話をつけてあるのでエルの故郷に行けば、すんなり墓所まで行けると言う話だ。


 手際がいいね。


「ありがとう」


「あのさ、私と同じ種族もいんでしょ?」


 ヒアが会話に入ってきた。

 確かにこの世界でのヒアは『妖精族』と言われたが、それを聞いてどうするんだ?


「いる」


「わたしも妖精族に会えるでしょうか?」


 アメリアはそんなに妖精が好きなのかな?


「無理」


 そもそもが、会うと言う概念ではないと言う。

 見える事がそもそも稀で、見えないのが普通。

 

 エルフ国に大多数の妖精族がいるが期待するだけ諦めた方がいいと言われた。


 見える妖精族が捕まって売られる。

 故に希少性があり、存在がバレるとトラブルは必至だと。


「そんな大変な事ならもっと早く……」


 まさかのヒアのレア度がここまでとはね。


「ごめんなさい、わたしもそこまでとは初めて知りました」


 謝らないで、軽く考え過ぎてた僕が悪い。


「私凄いの?ふふーん」


 すぐ調子に乗る。


——僕たちはこの状況をすでに当たり前の日常に思っていた。

 ヒアだけが特別だと言う認識そのものが間違いであった事にすぐ気がつく事になる。

 

主人あるじ、何か来るぞ」


 ティアが突然、焦り出す。

 僕はすぐに意識を空に飛ばして周りを見る。


——な、人が沢山……


 日常が突然、壊れた。

 馬車が急に止まり、外から声が聞こえた。


「ひひひ……あばよ」


 御者が何かをやって走り去って行く。

 こんな事態なのに、しっかり見れない僕。


「やられたな、何処からじゃ?」


「姉様達が、怪しい御者を雇うとは思えません。

 身元はしっかりしてる筈、多分途中から」


 僕は会話に入れなかった。

 外の人もそうだけど、みんな慣れてるね。

 僕とエルとヒアは置いてかれてる。


「三十六人」


 僕とヒアだけだった。

 エルは膝の上で寝てても優秀だ。

 三十六人!死ぬ、僕には無理。


「ナイスじゃ!数が分かると対応もやり易い」


「妾と主人が外を蹴散らして来る」


「はい!師匠はエルのサポートをお願いします」


 僕は情けなさでいっぱいだが任せる。


「お願いね」


「いてら」


 すぐに飛び出していく弟子とティア

 はぁ、人なんて嫌いだ。



【アメリア】

──────────


 外に飛び出す。

 わかっていたが御者は逃げた後。

 

 ご丁寧に手綱は切ってあった。


(これは、最悪)

(そうじゃな、エルかヒアか、それとも主人が……狙うなと言う方が不思議か?)


 確かに、だとするとこの状況は最初から?

 どれだけ信用があってもお宝の山には目が眩むか。


 ばっと状況を見る。

 

 死角が全くない見通しの良い街道。

 人っ子一人いない上にエルフの国には、ただでさえ行く人は滅多に居ない。


(助けは期待できない)


 全方位から来る、確実に。

 せめてわたしにも精霊が見えれば、色々出来るのに。 


 でも、プラスもある数が分かっていれば。


(馬車から見て前方から十、後方三、右十一左十二。これ便利!後で教えて)


 これは、エルの声!

 まさか、師匠?


(さすが師匠です!)

(じゃな、ほれ前はもう見えとるぞ。どこから行く?)


(先ずは後方、少ないのを片付けます)

(エル、何かあったら牽制よろしく)

(いてら)


 エルの言葉を待たずに飛び出す。


「ひひひ、金の馬車だぜ!」


「あぁ、こんな美味しい話中々ない」


「しかも、もしも逃げ出した時の保険の後方。一番楽な配置、ボロい商売だわぁ」


——油断ね……さよなら。


 多少、大回りになるけど、気づかれないギリギリを前傾姿勢で走り抜ける。

 見ただけで分かる、弱い。

 半分まで来れれば後は……作業。


スパッ

スパッ


「な、貴方——まさか!」


 最後の一人には気づかれたけどもう遅すぎる。


スパッ

全て首を一閃。

(後方、終わりました。戻ります)


——三人。


 わたしは、三人を殺した。


 手が震える。


(まだまだ、じゃな)

(分かってる。まだ人斬りは慣れないの……)


 一度、師匠が寝ていた時に命の危機に遭った。人間の悪意のせいで、その時、人を初めて斬った。

 これはわたしの覚悟を示すのに丁度いい。

 悪意は待ってくれない。


——何も奪わせない。

 ティアを持つ手にチカラが入る。


 馬車の方に駆け出す。


 敵の情報が初めから分かったからだけど、凄い。索敵と伝達があれば動きやす過ぎる。


 戻る時は真っ直ぐ行けるから早い。


ドン

トントン


 馬車の上に乗り、中に足で合図する。


(おかえり、言葉減らさなくて良いの楽。残り三十三、ここからが本番。まだ減らされたの気づかれてない)


(はは、みんな凄いね)

(私も外みたい)


(すぐ終わるから待つのじゃ)


(指示をお願いします。わたしは弱い所を突くしか、習ってません)


(任せて、左十二からお願い支援型が多数)


 支援型……なるほど、確かに厄介だ。


(ティア、あれお願い。タイミングは任せる)

(了解じゃ)


トントン


 合図して直ぐに左に行く、ここは時間を掛けずにどうせバレるから覚悟する。


 そして目を閉じる——


「輝け!」


ピカーーーーーーン


「ぐあ、何だこれは!」


(よいぞ!)


 十二、見えるのは七、先ずはそこを。


ザシュ

ザシュ


——五、六。


「ちくしょう」


 一人が何かしようと、やばい。


(大丈夫、そのままやって)


「アクア」


 動こうとした者が水球で包まれた。七、後五。

(まだまだ)


 エルの声。さすが元ギルマス。


「ドゥーム」

 (把握できてない五人に重力の力場を作った。みえるでしょ?)


 ほんとだ、分かりやすく空間が歪んでる……あんな所に居たんだ。


スパッ!


——エルの魔法があると、戦闘が作業だ。

(左十二、終わりました。戻ります)


(もう大丈夫、逃げた。)


 え? 分かりますが。

 判断が早い……まだ二十一か、逃げたとしてもこれじゃ油断出来ない。


(お疲れじゃ)


 ティアの声で日常に戻る。


 気がつくと手が震えてる。

 安心するとやっぱり人を切った事の罪悪感はある……悪なのに。


 わたしは、不安を感じながら馬車に戻った。



【カイル】

──────────


 みんな、凄いよね。

 あっという間に敵を蹴散らして、僕は糸念話だけだった。

 一人の時は全く感じなかったけど、何もやってない感きつい。


「みんなすごーい!」

 

 ヒアが羨ましい!


ガチャ


(一人残ってる。多分、監視)


「え、早く言って下さい!」


 アメリアが飛び出そうとしたらエルがすぐ遮る。


(大丈夫、捕らえた。でも、拘束時間は短い)

(あ、結局。行くんですね)


(そう、逃げられる心配は無いだけ。

 まだ、カイルの域に達してない)


 十分、凄いよ。

 すぐにアメリアが飛び出して行く。

 いつの間にか、凄い行動派になってしまった弟子……? 弟子でいいのか?


(——失敗)

(これは、毒じゃな……)


 毒か、この世界『毒』駄目なんだよね。

 エルの精霊にリンク出来るかな?

 ……お、大丈夫そう。


「エル、ちょっと精霊借りるね」


パチンッ

 指を弾く。

 これで、大丈夫かな。


 人を見たくないので範囲解毒してみた。

 エルが膝の上から僕を凝視している。

 精霊を勝手に借りてごめんて……


「何した?」


「解毒」


(息を吹き返した……)


 そりゃね、毒も何回治したと思ってるのよ。


——息を吹き返した人間は、最初は何故生きているのか混乱していたが、アメリアたちの尋問に自分達を『梟の目』と言った。


 梟の目についてアメリアが問い詰めたが、それ以上、何も喋ることはなかった。


 男の処分はここに呼んだ騎士団がするらしい。

 前に見たアルテルが使ったのと同じ効果のあるクリスタルが、馬車にも備え付けられていた。


 それを奪うのは、逃げた御者には出来なかったのだろう。

 男はそれまでは放置だそうだ。

 何があってもそれは自業自得。お疲れ様。


「名前しか分からなかった。

 師匠どうします?帰るのも手かと」


「確かにね」

 人が恐ろしすぎて嫌になる。

 宿の布団が恋しい。


「ガーン」

 エルが嘆く。


「……せめて、アイツらの動向がわかれば」


 悔しがるアメリア。

 なるほど、飛ばせば追える……仕方ない。


「アメリア、追ってみる?」


「ひゃい。あ、確かに!出来るんですか?」


 お、元気になった。


「もちろんさ」


 僕は背中を差し出そうとしたら、エルが膝に寝ていたのを忘れてた。


「エル、そろそろ終わり」


「え……」


 何?急に馬車酔いした様な顔……よく考えると、もう馬車も止まってるじゃん。


「エル」


 とぼとぼ、移動していく。

 さて、背を向けてアメリアが手を置いてきた。

 後は僕は最初だけ敵を認識して、目を瞑りアメリアの誘導で追う、をやるだけだ。


「いい?」

「はい!」


——意識を上に飛ばす。

 ……どこだ? 少し探すだけでそれは、見つかった。

 そもそも、誰もいない街道だ、目立つ。

 (後は、誘導して)

 (わかりました!)


 アメリアの誘導で、敵が合流して施設らしき所に入って行き、その中には更に仲間が居てこちらをもう一度、襲う計画を立てると。


 言葉にするのは短いが全ての情報がわかる頃には日が沈み始めてしまった。


「夜になっちゃうね」


 これは、僕が見張るのが一番いい……寝なくていいし。

 と、言うより馬車で先に行った方が良くない?


「ねぇ、馬車で先に進まない?」


 なんか、僕の意見て、そんなにおかしいのかな?毎回なんでそんなビックリするんだ。


「師匠よ、御者がいない。手綱もないじゃ無理だと知った方が良いぞ」


 ティアが言うけど、それは聞いた。

 良い方法があるんだよなぁ。


 僕は御者の座る場所に座り、大人しく止まっている馬に念糸で手綱を作った。


「どう?これで行けるでしょ?」


 また、見慣れた反応をされる。

 無理?


「おお!凄いのじゃ。万能じゃな!」

「師匠、さすがです。

 師匠が馬車を動かすのですか?」


「教えて」


 反応を見る限り大丈夫そうでよかった。

 て、なぜかエルは教えて欲しいと言う、エルも使えるじゃん……

 あれ、ヒアはどうした?


くかーー


 寝てた。


「僕に馬車は任せて、みんなは休んで」


 さて、色々言われたけど乗ってくれたので移動開始だね。

 初めてでも、やってるうちに慣れるでしょ。

 何もやれないのは申し訳ないので、夜通し進もう!


パシッ


ガラガラガラ


(エル、起きてる間はなるべく索敵よろしくね)


(了解、でももう無理)

(はや、眠いの?)

(よ、た)


(ごめん……)

 あ、そうだ。


パチンッ


 エルに状態回復をしてあげる。


(な、な、な、何した?)

(え?効果ない?)

(気持ち悪くなくなった)


(良かった、索敵お願いね)


 エルが黙った。

 と思ったら、隣に来た。


「動いてる時は危ないよ」


「教えて」


「へ?」


「回復」


「あぁ」


(今度ね、今は索敵か寝るかお願い)

(道中覚えることいっぱい。休めない、仕事したくない)


(アメリア、エルお願い)

(ひゃい。任せてください)


 馬車を一旦止めてエルを持って行ってもらった。

 はぁ、結局僕は考えすぎかなぁ……みんな自由で良いことだ。

 これが、仲間なのかもなぁ。


 仲間っていいねー。


パシッ

 鞭を入れる。


ガラガラ


 人に襲われないように、今のうちに距離を稼ごう。

 



4章開始です。

最初からドタバタしていきます。

よろしくお願いします!


面白かったら評価よろしくお願いします(´ー`)

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