0-3 ビブリナの森での戦い
——これは、カイル達が闇の元を断つ為にダンジョンに向かった後の『エル』のお話
【エルトゥア】
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「いった」
ダンジョンを任せる。
私の人生をかけてまで手に入れた『洗浄』
それが、まさか森の異変が国を脅かす事態まで膨らんで……他者の人生まで掛けるとは思わなかった。
だから、何をもってもこの異変に犠牲者を出さない。
私のギルドマスターとしての最後のけじめだ。
森の戦いも、もう始まっている。
私の戦場は部屋の中だ。
(精霊よ……お願い——)
——森全体に精霊を飛ばした。
私の所有する精霊は四万、森の全貌を把握するにはお釣りが来るくらいだ。
全ての精霊の視点で見ると処理が無理なので四つの中継を作る。
精霊から入って来た情報を聞いて少し安心した。
——敵推定、420味方、652
こちらが数では優位に立っている、更にあの時からAランクは増えてない、減ってもいないが。
雑多はBランク20に残りがそれ以下。
下は今まで通りの森の魔物と言った感じ。
私は、それぞれの精霊を使い情報を中継する。
「敵」
「推定」
「A240」
「B20」
「以下160」
「攻撃」
「開始」
少数の言葉でも、各パーティ……数は百二十程度、こちらはかなり大変。
国の騎士は二百人程度居るが、指揮系統がしっかりしているので、一回で済む。
言葉の量で言えば膨大になり複数の精霊が飛ぶ。
(ありがとう……)
今回でどの位減るか……仕方がない。
私の声で一気に戦局が動き出す。
「右に複数」
「後、警戒」
「上級、前」
「下級、後退」
「連携」
上がって来る情報を的確に伝えていく。
魔物が見る見る減って来た。
(このまま行けば勝てる。もう少しお願い)
『勝ちを確信した時ほど足元は疎かになる』
——!?……なぜ、今そんな事を思い出す?
途端にダンジョンから黒いモヤが溢れ出して来る。
精霊から同じ情報が上がって来た。
『ビブリナの悪夢』
これが?
私にも報告は上がってた。それが今?
『逃げ出す人多数』
これは、不味い状況だ。
あのトラウマは間違いなく冒険者の腕を鈍らせる。ここに来て……
——それだけでは無かった。
黒い煙を浴びた魔物が復活したとの情報が精霊から押し寄せて来た。
——悪夢ね。
……意識を保て、私がやらないと
傷ついた人に精霊をつける、回復をする為に。
便利だが、消滅してしまう。
魔力を使えば複数回出来るがそれをすると私が倒れてしまう……ままならない。
精霊達が同じ情報を知らせて来る。
『巨大化した』……あの時と同じ。
私は一つの事実を思い出していた『浄化』アメリアの剣、カイルに付けていた精霊からの情報。
——それが、役に立つはず。
この状況でも、折れないパーティが複数。
それに騎士団は逃げてない。
まだ大丈夫。
私は光は得意ではないけど、検証しないと。
(光の精霊よ膨らめ……膨らめ)
声によりすぐに集まり出す。
今回は時間がない。
(……ありがとう)
「フォトゥン——」
精霊から一筋の光が放たれる。
パシュン
サアァァァ
魔物がチリとなり消えていった。
なぜか威力が増している……まさか『洗浄』?
はは、無駄なものはない、か。
検証完了。
早く伝えないと。
「指示」
「浄化」
「敵消滅」
精霊から言葉がすぐに返ってきた。
『エル姐さんありがとう』……『炎の翼』?確か浄化の得意な子が居た。
これは、期待できる。
あの子達も悪夢の経験者なのに、偉い。
だが、それでも戦局は拮抗した。
浄化持ちが少な過ぎた。
今後の課題だが今はいい。
敵の特性はわかった。
人を見ると襲いかかる。
倒しても復活する。
中途半端に攻撃すると大きくなる。
そして、光、浄化が弱点。
このまま分散して戦い続けると被害は増えていく……魔物を誘導するしかない。
「みんな聞いて、私が誘導するついて来て」
時間を短縮するには、紡ぐ言葉を増やすしか無かった。
そのまま、私が指示出しと、浄化を一手に担いながら、森と街を繋ぐ街道に誘導し、戦える者を一箇所にまとめた。
「ここが最後の砦」
「抜けられたら街が終わる」
「覚悟しなさい」
私の精霊もだいぶ減ってしまった。
更に魔力も残り少ない。
でも、まだ戦える。
(最後まで付き合って…………ごめんね)
全員が命を掛けようとしたその時、魔物達の闇が一斉に晴れた。
終わった……の?
緩む気を抑えつける。
いえ、魔物が減った訳じゃない。
「油断」
私の声を聞いて全員が気を引き締める。
戦いはこちらが押し始めていたが、疲れからか中々決め手が生まれなかった。
私も限界は近かった。
ここまで来たのに……
(え?……アメリア?……そう)
精霊の知らせで、いち早く姫が駆けつけた事を知る。
その、時点でカイル達が成功したのだと確定した。
後は、上手く時間を稼ぐだけだ。
姫が到着後、すぐに姫の強さに驚愕した。
ティアと言う武器もそうだけど、姫があんなに強くなっているなんて。
カイルのパーティは規格外。
姫の力もあり、全体が指揮を再び上げた。
もう、心配はなくなり、程なくしてこの戦いは幕を閉じた。
「お疲れ」
「報酬」
「期待」
一瞬静まり返り、すぐに戦場で戦った『戦士達』は湧き上がった。
誇りなさい、貴方達は本物の英雄よ。
(みんなもお疲れ様……うん……ありがとう)
私は精霊を労い、ゆっくり横になる。
「疲れた」
それにしても、エルフの国にいた時の『あいつ』の言葉を思い出すなんてね。
これは、掲示?なら、もう決まり。
私の処分は功績を上げようが免れない。
ただ、死者を出さなかった事で私なりの贖罪は果たした。
これ以上ない結果だと思う。
最後は運もあったけど。
計画はある。
実行——
その前に
「寝る」
バフッ
完
おまけです。
面白かったら評価よろしくお願いします(´ー`)




