3-14 決意
【エルトゥア】
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終わった。
地上は思った以上に黒い魔物の脅威に晒されていた。
だけど、そんな中でも『炎の翼』の活躍は光っていた『ミリア』パーティの支援を担う彼女の浄化、それのおかげで何とか持ち堪えられた。
それでも、押され始めたのは時間の問題。
私も浄化を使えるが得意ではなかった。
せめて、この状況がわかっていれば、『洗浄』の魔法なんて作らなかったが、なんと、その洗浄の魔法が『浄化』に変化を加えるなんて……
無駄にならなかった。
結果論だけど。
私は自分の失態を払拭するべく四万の精霊の半分を使い潰した。
私の蒔いた種だから、精霊達も了承してくれたけど、簡単に言えば力の半減だ。
そのくらいしないと国が危なかった。
たけど、限界は来ていた。
浄化の力を持つものが少な過ぎたからだ。
ジリジリ押され始めたけど希望はあった。
ダンジョンの中はもっと最悪だろうけど。
きっとやってくれる。
そう信じて耐えた。
そして、それはすぐ訪れた。
闇が掻き消えて魔物が元に戻ったからだ。
後は楽ではなかったが今までよりはずっとマシになり、しかも姫が駆けつけてくれたおまけ付き。
カイルたちには感謝しかない。
結果、この国は救われた。
でも、私には謹慎処分という名のギルマス除名が言い渡された。
丁度いい、計画を開始しよう。
「準備」
ガサゴソ
【カイル】
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朝起きたら僕の前に精霊が沢山いた。
え?何これ、昨日のは……まさか夢じゃないよね……デジャヴ?怖っ!
頬をつねる。
「痛くない……」
夢か?夢なら覚めて!
もうダンジョン行きたくないよ。
ダンジョン怖い
ダンジョン怖い
ダンジョン怖い
僕は頭を抱えて苦しんだ。
そんな僕に気づいたアメリア。
「師匠!おはようございます」
声の方を向くと笑顔のアメリアが見えた。
あぁ、弟子の笑顔に癒される。
『浄化』される。
もう……精霊は無視でいいや。
「おはよう」
さて、今日は昨日なのかな?
昨日が今日?どうなの?
「今日は昨日?」
聞いてみた。
「昨日の戦いのせいで壊れとるな」
ティアが露骨すぎる。
「カイル様!ごーはーん」
髪を引っ張るな!僕よりご飯かよ。
先に起きたなら食べて来なよ!
「師匠……」
いや、みんなの反応でわかったよ。
ちゃんと一日過ぎてる、よかった。
髪の痛みで夢でもなかった。
「大丈夫。エルの知らせがあったから、混乱しただけ」
「エル?そうなんですか?」
そうなんですよ、紛らわしいよね。
「さて、下でご飯食べておいでよ」
「やったー!アメリア行こうよ」
行っておいで、ここは高級らしいのでヒアはここのご飯を相当気に入っていた。
「え……師匠は?」
いや、僕は下に降りたら食事に集中できません。喉も通りません。
「僕はいいかな」
「なら、わたしも……」
そこは、ヒアの為にも行ってくればいいのに。
「何でよ!アメリアと一緒に行かないと隠れて食べられないよ!」
ヒアは妖精族で希少種なので、見つかるとヤバイ。
アメリアと一緒に行くと結局は姫なので姫オーラを出していると誰も近づいて来ない、完璧な壁となる。
その力が欲しい。
まぁ、僕に気を使うならしょうがない。
コロコロ
「わーい、ガブ」
結局、食べられれば何でもいいらしい。
「アメリアは本当にいいの?」
「はい!お腹空いてないので」
そうなの?なら無理には言わないよ。
あー、さっきから精霊が纏わりつく、早く来いと言ってるな。
あ、そっか。まだ地上は魔物が溢れてる?
仕方ない、状況だけでも聞きに行こう。
「あの、妾もいるんじゃよ?」
え?知ってますよ。忘れていたけど。
「会話に入ってくればいいのに」
「不安なんじゃ!忘れられてると思うと不安なんじゃ!」
いや、ごめん。
多いと、話が長くなりそうで。
「だ、大丈夫だよ」
「なんじゃその言い方!」
「さて、飛ぼうか」
「はい!」
アメリアがヒアを持つ。
「無視か!酷いのぅ」
——
「来た」
同じ台詞で迎えるなよ。
怖いから。
「で、状況は?」
「なんの?」
なんのって何さ。
「魔物の事だよ」
「終わった」
え?終わったのか良かった。
「そっか、それなら良かったよ」
「うん」
エルが精霊から糸を出して紙を一枚持ってくる
「報酬」
おお!貰えるのか、気にしてなかった。
どれどれ、うん、読めない。
アメリアを見る。
すぐに、アメリアの手に紙が渡る。
「はい、『エルフの集落へご招待。今ならずっと滞在してもいいよ!おいで我が故郷に!』です」
どうみても、エルが作ってない?
「エルが書いた?」
顔が赤くなる。
「バレた」
バレるわ!
——勢いよく紙を叩きつける。
ファサッ
そりゃそうだ。
「なんで?」
「ハイエルフ」
「墓所」
「約束」
一気に言えばと思うが、切らないと駄目なの?
あ、今なら聞けるかな?
「言葉が少ない理由は?」
少し考えて答えてくれた。
「精霊」
「契約」
「少ない」
「増える」
あーなるほど。
「言葉が少ないほど、精霊が増える契約を結んでるのか」
「そう」
予想は付いてたけど……めんどくさい制約なんだね、大変だ。
「師匠、もしかして行くんですか?」
あれ、アメリアは国を出るのは不味いのかな?
「もしかして、無理?」
「いえ、わたしはどこへでもついて行きます!」
なら、問題ないのでは?
「でも、姉様が……」
アルテル?なぜ……姉が心配とかか。
「確かに心配か……」
「はい、間違いなく」
間違いなく?自分のことだよね?
まぁ、ちゃんとしたお別れは大事だよね。
長い旅になるかもだし。
「アメリア、話して来ていいよ」
「わ、わかりました!必ず説得してみせます」
説得って何?そこまでなのか。
気合いが違う、エルフ好きなのかな?
「エル、ありがとう。とりあえず宿に戻って準備できたらエルフの集落に向かうね。その時は地図とかあると嬉しい」
なぜか、エルが小型のリュックを背負い出す。
「よいしょ」
どしたー?
「おでかけ?」
「うん」
まさか……
「来るの?」
「うん」
何でよ……仕事は?
「仕事は?」
「辞めた」
だから、あんな事したからだろ!
アホの子か!断ろう。
「いや、無理です」
何、その泣きそうな顔は……やめてよ。
「捨てないで」
拾ってねーよ!
「うぅ」
泣かないでくれ……
アメリアという脆いけど最後の砦に頼もう。
「アメリア、どう?」
チラチラ、エルを見ながら答える。
「わ、わたしは……別に」
なぜ、視線を逸らす。
まさか、知ってた?
「知ってた?」
ぴゃーって確定かよ!
すでに手が回ってた。
「別にいいじゃーん」
ヒアも知ってたのか。
「何もらった?」
「クッキー!美味しかった」
正直ですね。
ずっと、うるうるしながら、ガン見しているエルに僕は結局諦めた。
「わかったよ、案内よろしくね」
ブイ
「やた」
涙はどこだ。
嘘泣きか……知ってたよ。
何で、ギルマスが仲間になるの?
そんな事あるの?
おかしいよ……
【アメリア】
──────────
今度は師匠とエルフの国に。
でも、これを聞いた姉様は絶対着いてくる。
それはこの国、自体の危機。
どう説得するべきか。
良い案は出て来ず、お城まで来てしまった。
「出たとこ勝負!」
今回は、すんなりと姉様の部屋までたどり着く。
トントン
すぐに返事が来る。
「どうぞ」
姉様だ。
ガチャ
「失礼します」
入ると、姉様とアンがいた。
「アメリア、いらっしゃい」
すごい真剣な眼差し——
どうしよう、言いづらい。
「どうしたの?」
あ、う。
やっぱり姉様に師匠の事は…………
いや、誤魔化してもろくな事にならない、正直に行こう——
「今度、エルフの国に行きます」
にっこりしてる。
「知ってますよ」
知ってるの?何で……
「そ、そうなんですか」
でも、良かった。なら話が早い。
にっこりして、爆弾を投げ込む姉様。
「はい、なので私も行きます」
「無理です」
「え?」
「え?」
「え?」
え?何で姉様まで驚くの?
アンの言葉に訳がわからない状況に陥る。
「あ、アン?私は……」
「無理です」
ぐうの音も出ないとはこのことだ。
「アメリア様。
アルテル様は大丈夫ですので、道中お気をつけて、行ってらっしゃいませ」
いいのかな?なんかあんまり来た意味が無いけど、良かった。
「じゃあ、姉様。いって来ます!アンもありがとう」
ガチャ
わたしは宿に戻ることにした。
【アルテル】
──────────
ガチャ
アンがアメリアを見送って戻って来た。
「泣きますよ?」
こんな事ってある?
カイル様と旅行!楽しみにしていたのに。
「やめて下さい。あの時泣かなかったのに、今泣くのはおかしいと思います」
今日ほど、アメリアを羨ましく思った事はない。私は必死で、そりゃもう必死で頑張った。
色んなものを総動員して、カイル様の情報を掴み、今日!最新の情報、『エルフの国にカイル様が向かう』を手に入れた。
前々からエルフとは、国交を結ぶ話があったが奴隷やらの問題で中々進まなかった。
でも、その問題が片づき出した今!
今!まさに、カイル様が向かうと言う話が舞い込んだ!
「私が行かずして誰が行く!」
ドン!
「アルテル様……」
手が痛い、強く叩き過ぎました。
そんな顔をしないで!私だって考えてます。
「国交を結ぶいい機会では?」
アン、あなたにはわからないでしょう。
「私には難しい話ですので」
でしょう。
「国王様にお話になられてはいかがでしょうか?」
その通りです。
あれ?……振り出しっ!
「私の夢は潰えました」
もう無理。
「アルテル様、一つ発言よろしいでしょうか」
もう、何もない。
「許します」
どうせ、この国はおしまいだ。
「カイル様がアルテル様にプレゼントがあるそうで、預かっております」
な、な、何ですって?
「そ、それは本当?」
「はい、先程。帰り際のアメリア様から言付けと一緒に」
細長い小箱を渡される。
手が震える……先ずは言付けを聞きましょう。
「話して」
「はい。
『アルテル、いつも迷惑をかけてごめんね。
今度エルフの国に行く事になったからこの国を離れる。アメリアは大丈夫、心配しないで。
後、お世話になっているアルテルにプレゼント。気に入ってもらえたら嬉しい。
それじゃいってきます』だ、そうです」
……カイル様。
「ありがとう」
小箱を開けるとそこにはネックレスが入っていた。
繊細な銀の鎖に、小さな青い宝石。
——綺麗。
「泣きます」
「ぐすっ……」
「アルテル様、泣かないとか言わない方が良いのでは?」
「うるさいです……よ」
仕方ないじゃない。
手に収まるネックレスを見ながら思う。
行ってらっしゃいませ、カイル様とアメリア。
私はもう少し頑張れそうです。
【レイア】
──────────
小ちゃんにカイルが起きたと聞いて飛んできたら、面白いものが見れた。
「……」
これは、我の胸にしまうか。
こんな方法で、世界に入れるなんてな。
「考えたね」
前に最上神様の元に連れて行ったのは側だけだったのか。
でも、ロイは爪が甘いね。
最上神様を出し抜こうとするなんて……
ただなぁ、我には難しいやり方だ。
『ウイルス』ねぇ……覚えるのは無理だ。
誰か扱いやすい奴、居るか?
我の力があれば、探すのは簡単だろうけど。
見つけたとして、我の話し聞く?
条件厳しそう。
まぁ、でも、最上神様の反応待ちか。
何の反応も無ければ——
「少し、動くか……」
元ギルマスが仲間になった。
面白かったら評価よろしくお願いします(´ー`)




