3-11 再びダンジョンへ
【???】
──────────
ここは、何処だ?
混沌とした世界で俺は戦って戦って死んでも死なせてはもらえず、また戦い全てを殺し切って最後に。
『もう、死んで良いよ』
と、言う声を最後に俺の意識は途絶えたはずだ。
森?死後の世界ではなさそうだが穏やかだ。
初めての安らぎという意味では死後の世界でも良いのかもな。
ガササッ
「グガアァァァァ!」
熊か?
動物など我が国にはすでに滅んでいたな。
やはり、ここは違うのか。
少し、嬉しいな。
……やる気は買うが、どうするか。
「あぁ、気が立っている所悪いが、やめておけ」
自分は強者と言わんばかりだな。
「ガアァァ」
怒りはやまぬか、これじゃもう言っても聞かぬな。
「せめて、素手で相手をしてやろう。どっちが勝っても怨みっこなしだ」
和やかな戦いだ。
あの時は——なかった。
強制され、殺され、蘇らされ、また殺す。
あの地獄には、こんな平穏はなかった。
少し、楽しいな。
「ガアァァ!」
先ずは来い。
それで止まるなら、俺も助かる。
——男は両腕を広げ、熊の攻撃を受けた。
ガスッ、ドゴッ、ドスッ
「グアァァァァッ!」
素晴らしい気迫だ。
痛みも心地いい。
だが、満足せぬか。
……仕方ない
いくぞ!
「うらぁぁ!」
ドスッ——ドゴーン!
うむ、いい戦いだった。
(ありがとう)
——魔物の亡骸に触れて祈る。
「我が血肉となれ。また来世でまみえよう」
無駄だとは分かってはいるが、少しでも命が意味のある物だと思いたいものだ。
「ぐっ……」
(アソボウヨ……カイル……アソボ)
突然の声に頭が割れそうになる。
「う、何だこの声は」
カイルとは、誰だ?
——頭にイメージが湧き上がる。
……真っ白い男?これが、カイルか?
(ムリダヨ……キミガ……カワリサ)
「ふざけるな!俺は俺だ!どこの誰とも知らんやつに、呑まれると思うな!」
(アハハ……)
「くそっ……何かが溢れて来る、抑えられん」
「があぁぁぁぁああーーーーっ!」
——男から溢れた黒いモヤが森に広がる。
森の全てを覆い魔物を黒く変えていく。
「まさか!?」
先程倒した魔物が、起き上がり森の奥に消えて行く。
「ぐぅ、こんなことが起こって良いわけがない!」
このままでは不味いな。
もし人里が近くにあったらどうなる。
どこかに隠れなければ。
辺りを見ながら、走る。
すると目の端に洞窟が見えた……偶然か?
意図を感じるが仕方がない、行くしかない。
む、洞窟の前に人が……何故だ。
強者には感じない。
聞いてくれるか分からぬが。
「ご婦人、ここはすぐに危険になる。出来るだけ遠くに逃げろ」
驚いているな無理もない。
「へ? 確認の書類を書いてください。」
よく分からぬが、ここに居たら巻き込んでしまう。
急いで洞窟の中に走り出す。
「御免」
「あ、ちょっと——」
——そこはビブリナのダンジョン、ギルドの係員に目撃された男は無断で奥に消えていく。
すぐにギルドに伝わるが、カイルが知るのはまだ先だった。
【カイル】
──────────
朝起きたら目の前に精霊が沢山いた。
「うわっ、これはエルの?」
僕の声にアメリアが反応する。
「師匠、どうしたんですか?」
アメリアには精霊は見えてないのか、仕方ない。
こんな事、今までなかった。
と、言う事は緊急事態なようだし説明するより急ぐか。
「エルから連絡があった、朝ごはん前だけど行くよ」
「はい!」
心配になるくらい、イエスマン。
アメリアとは、逆に飛び出してきてまくし立ててくるヒア。
「ふざけんな!昨日置いて行ったのに今度は朝ごはん無いなんて、ばかやろーこのやろー」
……アメリアを見習えよ羽虫。
昨日は悪かったけど、食い意地に負けたの誰だ。
仕方ない、果実を出してアメリアに渡す。
「アメリア、ヒアにご飯あげて。飛ぶよ」
「はい!ヒアちゃん」
「わーい。ガブ」
ヒアはヒアで心配になる……毎回それでいいのか。
もう、いいや。飛ぼう。
——
「来た」
すぐにエルが迎えてくれた。
バシャ
え?何で水かぶるの?
パチンッ!
おおー、みるみる綺麗になって行く。
「どう?」
いや、凄いけど……
床濡れてるじゃん。
「まさかそれを見せるために?」
僕の反応が弱いのか気を落とすエル。
いや……もう、しょうがない。
アメリアに目配せする。
(褒めたげて!)
「エル凄いです!師匠と同じ事が出来るなんて」
なぜ、そんな事を簡単に出来るのか。
アメリアのその切り替え、素敵です。
「ふふん」
凄いと、本当に思うよ。
でも、本当にこれだけ?
「本題」
本題?あぁ、良かった。
あったんだ本題。
「森、大変」
それは知ってる。
「怪しい、人」
ん?
「ダンジョン」
「怪しい人がビブリナのダンジョンに?」
アメリアが補足する。
「そう」
原因なのか?でも、確かにこの流れだとそうなるのか。
「忙しかった。失態」
まぁ、仕事が多そうだもんな。
「ギルマスの仕事大変だし、しょうがないだろ」
「違う」
違うのかよ。
パチンッ
え?
「頑張った」
おい……それを覚える為に仕事そっちのけで、この事態に?
「エル、それでいいのか?」
今回は、誰かに怒られて欲しい。
「てへ」
まじで怒られろ。
「反省した方が良くないか?」
急に表情が曇る。
「反省」
そ、大切だよ。
「で、男が目撃されたのはいつだ?」
少し渋るエル。
「……二日前」
おーい。もうギルマスに相応しくないのでは?
僕でも、もう少しましだぞ。
人とは、関われないですが。
「森は任せて」
この状況で話し進めたよ……
「ダンジョンお願い」
まぁ、僕もそっちの方が人が少なそうだし有難いけど。
「直でダンジョンに飛んでいいかな?」
精霊から糸がでて、紙を一枚渡される。
これが、許可証か。
「いって」
こんな所は準備がいいね。
「アメリアはどうする?きっと大変かも知れないよ」
聞くまでもないけど、聞かないとね。
「行きます」
ヒアは?
「ばびはまぶ」
わかんねーよ。
もう、いいや。
「じゃ、行ってきます」
「いてら」
——
上級しか知らないので、先ずは上級ダンジョンに来てみた。
他だったら、なんて考える必要もなかったね。
凄い禍々しいよ。
空気が重いのがわかる。
索敵にも引っかかってる。
問題の奴、怖すぎるね。
僕の弱さがここで効いてくるとはなぁ
「アメリア、ちょっと不味いかも」
僕の言葉に驚く。
僕をどうみてるか分からないけど、今までがたまたま運が良かっただけだよ。
「それでも、来る?」
凄く顔が凛々しいよ。
「行きます」
覚悟が凄いんだよなぁ。
何かあったらアルテルに顔向けできないよ?
「はぁ、分かったよ」
ヒアは……まだ食べてるな。
連れて行って大丈夫かねー。
「ヒアのご飯が終わるまで待とう」
さすがにご飯中のヒア連れて行けないよ。
「アメリアもご飯食べちゃって」
僕は食べられそうな物を取り出す。
「ひゃい。ありがとうございます」
ここは、エルと戦った場所だが。
すでに真っ黒い魔物に囲まれている。
その中で朝食。
みんな度胸がすごいね。
「あれ?そう言えば剣は?全然喋らないけど、存在が消えたかな?」
ピカーーン
それやめて。
「カイル様、それは酷くはないか?呼ばれないから黙るしかなかろう。妾とて、何処でも勝手に話したら駄目な事くらい分かっとる」
いたんだ。結構色々考えてくれてるんだね。
ヒアより優秀だ。
「気を使わせて、ごめんね。なかなか有能で嬉しいよ」
「め、め、滅相もござりませぬ。妾はしもべです」
言葉がおかしくない?
そんなにならなくて良いのに。
「ご馳走様でした。
その通りです!『ティア』はわかってますね」
ティア?そう言えば……解析を使う。
『クレメンティア』か、だからティアね。
言いやすい。
「そっか、よろしく『ティア』」
「お、お、お、ありがとうございます!」
なんか、土下座されてる勢いだね。
……ヒアはいつまで食べてるんだ。
仕方ない、少し魔物の情報を知るか。
「アメリア、何匹か入れるから倒してみて」
「いいんですか!」
喜ぶもんね。
「妾もいつでも良いぞ」
準備できたみたいなんで。
パチンッ
一瞬結界を切ると、八体入ってきた。
思った以上に好戦的だな、考えてた数より多く来た。
「行きます」
アメリアは、すぐに向かって行く。
やる気が凄い、僕が気をつけていてもその猪突猛進は危険では?
こんな時が一番、危なそうだよね。
ちゃんと見ておかないと。
と、考えてるうちに戦闘が終わっていた。
はやっ、強くなったなぁ。
さて、いつまで待たなきゃ行けないんだろ。
【???】
──────────
何匹かやられたな。
ありがとう。
俺ではもう倒すより増やすことしか出来ない。
——大量の魔物の死体の上で無力感を出しながら項垂れる男は限界を迎えていた。
ぐ、また抑えきれなくなる。
「グガアァァァァ!」
闇が溢れる、男の下の亡骸が黒く染まり始め動き出した。
何度、倒してもやはり無駄か……
ここに来てから何度も死のうとした。
だが、傷ついても、すぐに傷は消え元に戻る。
結局、場所を変えても同じだ。
ならせめてと、俺によって変えられてしまった、意思なき魔物を俺の手で葬る為、戦い続けた。
昔の俺を見ている様だった。
誰かに強制される悪夢。
少しずつ自分が消えていく感覚が強くなっていく、俺は何もわからないまま、この世界を壊すのか?
ふざけている、この世に神はいないのか。
せめて戦うなら自分でありたい。
もう、俺の希望はお前だけだ。
カイル……願えるなら早く来てくれ。
——時間がない。
そして、俺は自分によって命の戻った魔物の命をまた奪い続ける。
「うらぁぁぁ!」
【ヒア】
──────────
——私は、ゆっくり食べていた。
いつもなら、もっと早く平らげる果実を、できるだけ時間をかけて。
食べ物ばかり食べていると思われがちな私だけど、今回ばかりは——
戦わない選択はないのかなぁ。
何だかダンジョンに来てから、恐ろしい雰囲気が凄い……この世界に無理矢理、押し込んだロイ様の様な。
カイル様もアメリアも、よくわからない剣もみんなやる気……
私は戦えないから、こんなことしか出来ないけど。
時間が経つにつれ不安が膨らんでいく。
間違いだったかな?
もう、時間を稼いでも無駄なのかな?
みんなで、楽しく生きたいなぁ。
私に出来る事、何かあれば良かったのに。
もう、食べ終わっちゃう。
あーあ。
終わっちゃった。
せめていつもの私を出さないと。
「ご馳走様ー!」
他の人なんて無視すれば良いのに……
私はこの世界よりカイル様と居たいだけなのに、私が何を思ってもカイル様は戦いに行くだろう。
深く私も覚悟を決めた。
「ヒア、頭の中危ないかもよ?」
私の特等席で、一緒に行きます。
「いく!」
「はぁ、まぁいいさ。」
何だかんだ言って、ごねると許される!
「じゃあ、行こうか」
私も仲間なんだ!
行くぞー!
カイルにとっての初の強敵。
面白かったら評価よろしくお願いします(´ー`)




