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元社畜神様はコミュ症すぎて異世界でも逃げ出したい  作者: 片白
3章 ギルド編

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3-9 鍛冶屋



【カイル】

──────────


 あれから三日、お金の心配がなくなったので、平和な日々を過ごしていた。

 僕は引きこもりを謳歌してました。


 そして今日、僕たちは報奨金のお金でアメリアの装備を買いに外に出て来ていた。


「師匠。本当にいいんですか?」


 何を言ってるのだろう、僕は消えているから良いに決まってる。


 今回は『認識ボイド』人に見えずに僕も見えない聞こえない。

 完璧です。

 

(こっちで話すね)


「ひゃ……!」


(は、はいわかりました)


 僕の念話レベルは向上した。

 エルの糸……あの忌まわしい惨劇を糧にして、鍛錬に鍛錬を重ね、柔らかい紙を遠隔で持ってこれる様にまでなった。


 その糸を使い人に接続する事で言葉まで飛ばせる……まさに『糸念話』が完成した。


 今じゃ少し離れていてもいけるレベルまでだ。


(僕に気にせず、欲しい物を選んで)


(はい!ありがとうございます)

 

 でも、こうやって街並みを見るとシュトルスって凄いね。


「ねぇねぇ、二人でなんかやってない?」


 頭の上から声が聞こえる。

 忘れてた……ヒアにも繋げられるかな?


(ヒアにも繋げてみた、聞こえる?)


「へ?なに、なに、カイル様の声が頭に響く」


 これは、宿とかで練習しておけば良かった。


「ヒアちゃん、静かに。誰かに聞かれたら大変だから」


 アメリアありがとう。


(ヒア、声に出さずに話して)


(ヒアちゃん頑張って)


「う、うーん」


 ヒアが唸る、これはダメだね。


(ヒア、これが出来ないと会話は当分無理)


ポコポコ


 頭を叩かれる。

 聞こえているだけいいか。


(会話したいなら、頑張って)

(ヒアちゃん頑張ってね)


 アメリアがやっぱり出来が良すぎるんだね。

 普通はすぐに出来ないよなぁ。



【アメリア】

──────────


 師匠がわたしの武器を買ってくれる。


 何度か手入れには出しているが最近無理をさせ過ぎてボロボロだ。


 特にミノタウロス戦ではやり過ぎた為。

 わたしの行きつけの鍛冶屋さんに怒られてしまった。


 それも、あって喜んでいたが、更に!

 まさか師匠が一緒に来てくれるなんて。


 うわぁ、これって師匠とお出かけ?


 普通に会話出来ないのは残念だけど、ヒアちゃんが可哀想だし仕方ないか。


 ヒアちゃんが頑張って念話?が出来ればみんなで話せるし、なるべく念話での会話に慣れとかないと。


 ヒアちゃんのためにもね。


(師匠、わたしの行きつけの鍛冶屋さんの所に行きたいのですが良いですか?)


(任せるよ)


 お許しがでたので、向かいましょう。

 欲を言えば並んで歩きたいのですが、何故かいつも師匠はわたしの後ろをついてくる。


 それに不満はないけど、二人縦に揃って歩きながら念話で会話……なんか違う。


 もっと、こう、楽しく会話しながら露店などで食べ物を買って……ふ、二人で!


「食べたい!」


 右手に拳を作って念じる。


(どうしたの?)


(あ、何でもないです)


 声に出てしまった。


(お腹すいた?何か買おうか)


(はい!)


 これは、チャンスでは?


(好きな物、買って来て!三つかな、ヒアも食べるでしょ)


 ヒアちゃんは頑張って念話をしようとしてるみたいだ……口を膨らませて顔が真っ赤になっている。


(……息を止めても意味ないよ?)


 うそ!って顔をして、露骨に落ち込んでしまった。

 気持ちはわかるけど。


(お肉でいいかな?)


 ヒアちゃんは顔をブンブンして頷く。


 わたしは一番近くの屋台に向かった。


「らっしゃい、何がいい?」


 お肉のいい匂いが立ち込める。

 ここにヒアちゃん連れて来たら焼かれてる肉に飛びつきそうだ。


「串肉二つと小皿にお肉を一つ下さい」


 手際が良く、すぐに出てくる。


「はいよっ!」


「ありがとう」


 お金を渡してお礼を言い、師匠の元へ戻る。


「どうぞ!ヒアちゃんはこっち」


 二つとも師匠に渡す、師匠は右手で串を食べ左手に小皿を持つ。


「ヒア、食べていいよ」


 師匠が促すとフードの中から飛び出してくる。


「お肉!ガブッ」


 ヒアちゃんを見ていると妖精族の認識が変わってくる。

 妖精族がお肉を食べるのを初めて知った。

 と言うか、ヒアちゃんは何でも食べる。


 ギルドの依頼を二人で行ったとき、魔物にかぶり付いた時は血の気が引いたくらいだ。


 それにしても、ヒアちゃん、丸見えですが大丈夫なのでしょうか。


(師匠、ヒアちゃん丸見えでは?)


(あぁ、大丈夫。認識阻害してるから)


 なるほど、わたしには見えているので気がつきませんでした。

 師匠は何でも出来る。

 誇らしい!


 結局、横に並んで食べ歩きは出来ずに目的地に着いてしまった。


(ここです、師匠)


ガチャ


ギィィー



【カイル】

──────────


 今回は非常に楽だった。

 特に辛い思いもなく目的の鍛冶屋に着く。


 扉を開けて入るアメリアに続く。

 中は外に比べると物凄く暗かった。

 ランプが無ければ闇?


「ビルゴさんいますかー?」


 ビルゴさん。ここの主人かな?


「何じゃ……おぉ、嬢ちゃんじゃないか、こないだ来たばかりなのに、もう刃をダメにしたんか!」


 オッサンの声が……え?僕はボイドで聞こえないはずなのに何で。


 目を凝らして声のした方を見ると小さいオッサンがいた。

 見えるんですけどー!


「違います。今日は武器の新調に来たんです、何かわたしに合う武器はありますか?」


 僕の驚きを無視して、話がすすむ。

 何だ……小さいからか?サイズの問題か?

 ボイドをどうコントロールしてもオッサンが消えない、泣きそう。


「おい、嬢ちゃん。そっちの白いの、いい加減紹介せんか」


 何だと!見えてる……?な、何なんだ、この小さなオッサンは、神の使徒?いやいや、絶対ない、茶色いし髭がすごいし。


「す、すいません。このお方はわたしの師匠です」


 紹介されて焦って一礼する。


「なんじゃ、嬢ちゃんの師匠は挨拶が下手か?」


 貶された。

 今はそれどころじゃない、この謎の問題をどうすれば良いのか、今はまだ一人だから何とか……我慢も出来る。

 ただ今後、二人、三人となったらどうだ……考えただけで終わる。


「いくらビルゴさんでも、わたしの師匠を侮辱するのは許しませんよ」


 何が違う……やっぱりサイズか?

 いや、一度子供も対象に入れても無駄だった。

 なら何だ?


「分かった、分かった。嬢ちゃんはよっぽど師匠さんが好きなんじゃなぁ」


 対処を広げるか?赤ちゃん……このオッサンが赤ちゃんで消えたら、それこそ怖い。

 む?いや、発想を変えろ、人間じゃない?

 魔物か!


「ひゃー……な、な、な、何を言うんですか!師匠に、な、な、な、」


 ……魔物じゃなかった。

 そりゃそうだ。混乱し過ぎておかしくなってきた。


「嬢ちゃん。わかりやすいな。」


 ん?アメリアが頭を抱えてうずくまってる。

 何があったんだ?


「アメリア」


 肩に触れた。


「ぴゃー、師匠!違うんです。全然違うんです!」


 何がよ……ちっさいオッサンが笑ってるし。


「ガッハハハ!師匠さんよ、愛されとるな」


 そりゃもう、アメリアにはほんと、迷惑しかかけてないですね。

 愛情がないと、とっくに捨てられてますね。


「ば、何を言ってるんですかー!」


 何だろ、小さいからかな?普通の大人よりはマシなのか?僕は子供が大丈夫と言うより、身長が低ければ良いのか?

 自分の事なのに意味がわからん。


 ちょっと、小さいオッサンに囲まれた事を想像……ぐあ、ダメだ……気のせいだ三人目くらいで死にかけた。

 やっぱり一人だからか?


「んで、どうすんだい?武器買うんか?」


 あーそう言えば、脱線し過ぎて忘れてた。

 もういいや、ヒア以外は解除しよう。

 すると、何も変わらず店には三人しか居なかった。

 不思議体験だったなぁ。


「アメリア、好きな武器選んで」


 と、言っても凄い沢山あるなぁ。

 鍛冶屋って武器も扱ってるんだね。


「ひゃい、師匠。気にしないでくださいね」


 何を?選ぶ武器の話かな?


 多少高いの選んでも足りるでしょ……そんな高いのあるの?でも、買ってあげると言った手前、アメリアが選んだ物を買おうじゃないか!


「大丈夫。好きなの選んで」


「はい!ありがとうございます」


 アメリアが選んでる間、僕も見てようかな。

 少しでも小さいオッサンと関わらない様にしたい。


「白い兄ちゃんは買わないのか?」


 僕の願いって、大抵叶わないよね。


「ぼ、僕は……いいです」


 だから、話しかけないで下さい。


「元気ねぇな!師匠が聞いて呆れる、ガハハハ」


バンッバン!


 背中を叩かれる。


 と、鳥肌が……それに寒気も。

 僕は鍛冶屋で最後を迎えるのか、儚かった。


「な、師匠に何をしてるんですか!何度も、やめてください」


 アメリアさんもっと言ってやって。

 最近、得意な人としか会わなかったから反応が過剰になってる。


「何じゃ、ただのスキンシップじゃねぇか!」


 プンスカして奥に歩いて行った。

 良かった。死なずに済んだ。


(カイ……ま)


 え?動かないと思ったら、まさかヒア?


(凄いじゃないかヒア!)


(ま……む……し……です)


 まむしです?……ヘビかな。


(ヒアちゃん、凄い!もう少しだよ)


(がんば……す……)


 みんな成長してるのに、僕はいまだにコミュ症が治らない。

 はぁ、僕は弱いなぁ……強くなりたい。


(さて、アメリア。決まった?)


(ひゃい、すいません。まだです)


(いいよ、ゆっくり選んで)


(わた……き……しい)


 うん、ヒアはまだまだ、わからないなぁ。


(残念、分からない)


ポコポコ


 十分頑張ってるよ。

 ただ、調子に乗るからあんまり褒めない。


 アメリアの武器選びはもう少しかかりそうだね。



【カバラ】

──────────


 あぁ、やだなぁ。

 何でワイが他の場所見ないとダメなん?


「最上神様もマジで使徒使い荒いやん」


「そんな事言っちゃダメですよ、カバラ様」


 案内の小妖精が余計な事を言ってくる。


「うっさいわ、チビに言われたくないわ」


 あーめんどい。

 見たら一回、帰ろ。


「んで、どこよ?」


「もうすぐですよー」


 何回目じゃ!

 って……なんじゃあれ。

 ワイの担当世界、まともじゃない。


 どす黒過ぎじゃ?


「着きましたー。ちゃんと仕事して下さいね!ではではー」


「ちょいまちーや!……って行ってもうた。」


 こんなもん、どうせいと?

 真っ黒で気持ち悪い……触って大丈夫なんか?

 だが……


「仕事やし……やらんとな」


——それは必然か偶然か、ロイの世界で英雄が敗れて息絶えた。一つの魂が世界から離れる。


 覚悟いるな……

「覗くぞ!」


——カバラが覗いた瞬間、魂とどす黒い感情がリンクしてカバラを侵食しだす。


「ぐっがぁぁぁあああーーーっ!?」


 それは、誰にも気づかれないほどの一瞬だった。


 次の瞬間——


「……」


 カバラの目が、虚ろになっていた。


「カイル、アソボ」


 どこかに引き寄せられる様に歩き出す。


 カバラの体を使って歩き出す。


 足元に黒い闇が蠢きながら前へ前へ。


 カバラを押し出して行く。


——


 辿り着いた先はビブリナの世界。


 当たり前の様に世界に触れる。


「アソボ……」


 何かがビブリナの世界に入って行く。

 誰にも知られずに。


——何百回繰り返しても叶わない偶然によりカイルのいる世界に何かが降り立った。



「んあ?何でワイはここにおるんだ?」


 なんか、あった気がするが……記憶が。


「って、仕事せな。帰ろ」


 嫌すぎて、無意識に逃げ出したんか?


 どんだけ弱虫なんだ!


 ……あほらし。



 


天敵不思議オッサン


面白かったら評価よろしくお願いします(´ー`)

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