3-8 久しぶりのお城
【アメリア】
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いい加減、報奨金を受け取りに行かないと。
昨日、ギルマスに依頼の報告に行ったのに血みどろの師匠が体を綺麗にする魔法を、何故かエルが気に入ってしまい、研究者モードになったエルは私たちを追い出した。
もちろんその後はしらない。
問題はお金が稼げなかった事だ。
お金がない!
師匠に昨日のうちに相談して、お許しを貰ったので、お城の前まで来ている状況なのに、わたしはその一歩を城門の前で待ってる男のせいで出せない状況に陥っていた。
「どこから漏れた?」
行きたくないが、お金がない。
仕方ない、わたしに用が無いことを祈ろう。
「やぁ、姫さん。迎えに来たよ」
あー……無視。
スタスタ
「ちょい、ちょい、待って。今日は姫さんにお願いがあるんですよー」
願い?わたしの願いは視界に入らないで欲しいだけ。
スタスタ
「あー、手合わせ!手合わせして欲しいんですよ。」
無視。
「まさか、負けるのが怖い……とか、あったりします?」
軽い挑発ね。
わたしは、ハインツに向かい……受け流した。
「受けてやろうじゃないの!」
バカー!口が……口が勝手に。
わたしはどうして、こうなんだろう。
「そう来なくっちゃね!」
ニヤついてやがる。
こうなった以上、ぶっ潰してやる。
無言で睨みつける。
「……」
全く動じない……ほんと、変わらない。
「じゃ、行きますか。この時間なら誰もいない」
!?……計ったな。
——
「姫。懐かしいんじゃない?籠ってから初めてでしょ?」
普通聞く?イライラしかしない。
これも、向こうのペースね。
抑えないと……
私たちは、訓練用の木剣を持ち訓練場の中心で向かい合った。
「ルールはいつもの手合わせで。負けた方が望みを一つ叶えるで」
ルールね。
十回戦い勝ち星の多い方の勝ち。
同じ場合はもう一戦。
望みなんて後の事、今はボコボコに殴りたい。
「じゃ、何もないなら早速……行きますか」
何でこんなに余裕が……
前回は仕方ないけど、ミノタウロスをわたしが倒した事知らない?
警戒……
「いつでも来な」
わたしはその言葉が終わる前に飛び出した。
警戒するつもりだったのに、いつの間にか目の前にハインツがいる、なら一撃で沈める。
「タァーッ!」
バスン
うそ、避けられた……不味いすぐに攻撃が来る、避けて反撃。
「行くぜ!」
え、喋っちゃうんだ。
軌道が丸見え、かわすまでもない。
ハインツの攻撃が来る前に私の蹴りが腹に入る。
ドスッ
「ぐあっ!」
そのまま、流れる様に木剣で空いた顎を狙う。
バキッ
「うっ」
ドスッ
一勝ね。
「どうする?二戦目行く?」
————
「ぜぇ、ぜぇ……」
どう言う事……
「何がしたかったの?」
仰向けでボロボロのハインツが笑いながら答える。
「はは、やっぱり……こ、ここまで強くなってるとはね」
何、一人で満足してるんだ。
正直ガッカリだ、一撃目を避けられた時は驚いた。
でも、それだけだった。
結果はわたしの六勝。
まだ四回あるけど、もう戦うだけ無駄。
「もう、行くわ。さよなら、ハインツ……」
わたしはハインツを残して姉様の所に向かった。
【ハインツ】
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いつからだろうな。
こんなに差がついたのは……姫が籠って出てこないと聞いてから、俺も心配した。
何度か騎士長にも直訴したが無理だった。
俺では、力不足だそうだ。
分かってるさ。
そんな時、姫が部屋から出て、しかも旅立ったと話を聞く事になった。
何が起きたのか分からなくなった。
理由を聞いても誰も答えてくれない。
更に自分の無力さを呪った。
俺は少しでも強くなろうとした、自分の思いを殺すかの様に。
訓練に訓練を重ねて騎士長に膝を付かせるくらいに強くなった。
十回に二度だが。
これで、少しはと思い始めた頃。
姫が街に戻ってくると噂を聞く、これはチャンスだと思い、すぐ騎士長に頼み込んだ。
「会ってこい」
久しぶりの姫は、昔と何ら変わらなかったが、後ろに見慣れない奴がいた。
そのせいで、言いたい事もほぼ言えず、ギルドに着いてしまった。
姫がギルマスと二階に消えた後も降りてくるのを待っていたが、降りてはこず、再会は失敗に終わった。
そして、今日。
実は四日、待ったが。
もう、話しても上手くいかないと思った俺は勝負を挑んだ。
少しは俺だって強くなったと見せたかった。
あわよくば……は、もういいさ。
結果はボロ負け。
散々煽って力み過ぎた最初の一撃を避けられただけ……まさかあんなに強くなってるなんてな。
「はは。だせぇ……」
笑えてくる。
一人取り残されて、無様だ。
「ただ、認めてほしかったのにな」
でも、姫はもう——
俺を見てない。
その時一人のメイドが入って来た。
「あの……」
突然話しかけて来た、見た事ないな。
「誰だ?」
言いづらそうに俺を見てる……まさか?
そのメイドは意を決したのか、声を上げて話しかけて来た。
「お、お掃除をしたいので出て行って下さい」
——少し期待した俺の馬鹿。
「あ、はい。すいません」
メイドは俺に見向きもせずに、掃除を開始した。
「全く、こんなに荒らして……後で騎士長に言いますからね」
……帰ろう。
【アメリア】
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謎の勝負に時間を取られて、もう昼前じゃない!
何なんだ、姉様忙しいのに。
案の定、部屋には居なかった。
こんな時に限って姉様がどこにいるか知ってる人に会わない。
完全にアイツのせいだ。
久しぶりに城内を歩いて回る。
「懐かしい……まだそんなに経ってないのに」
師匠と居るとお城の事を忘れてしまう。
それが良いのか悪いのか……どう考えても良かった。
「……師匠」
「……素材、鱗!」
危うく、懐かしむ所でした。
本当に姉様はどこに?
なるべくはお父様には会いたくないのですが。
突き当たりを執事服が横切っていく。
「セバス?」
すぐに追いかける。
「セバス!待って」
執事服の人が振り向くとセバスでは無かった。
「誰!」
我ながら酷い事を言っているのはわかる、だけど本当に誰!
「これは、第二王女様。何用で?」
継承権は捨てたのだけど、この人本当に執事?
こんな事、誰かに聞かれたらどうなると思ってるの?
「セバスでも、アンでも良いので知らない?」
そんな細かいことより本題に入る。
「はて、セバス様は……今日は、見てませんね」
この人、何でこんなにゆっくり話すの?
まだ若そうなのに……
「アン……メイド長、でしたよね?私はあまりその方と接点がないので……」
苦手なタイプだ、まだ喋ってる。
聞かれた事だけでいい。
「そういえば……今朝起きて——」
え?何で……起きた時の話をし始めた。
「もう、いい」
他を探し始めようとした、その時。
「第一王女様は先ほど、裏庭に……」
姉様の情報、持ってた!
感情が……怒らない、怒らない。
「あ、ありがとう」
裏庭ね。
——
裏庭にでると、すぐに姉様が見つかった。
「姉様!」
怪し過ぎた執事の情報だったけど、ちゃんといた。
「アメリア!何をしていたの?待ってたのよ」
それはもう、色々あったんです。
姉様はお茶会中だった。
相手は——リアラーナ様。
この国で一、二を争う名家の令嬢で、姉様の親友でもある。
見慣れた顔なので許してもらえる。
わたしの突入は、今回が初めてではないから。
「お久しぶりです、リアラーナ様」
わたしはしっかりと挨拶する、横に付く騎士はノイマンね。
「ノイマンもお久しぶり」
リアラーナ様は私の挨拶にわざわざ席を立ち答えてくれた。
「アメリア様。お久しぶりです。」
笑顔が眩しい。
未だ婚姻の話が無いのが不思議なくらいの素晴らしい方だ。
「アメリア様。お久しぶりです。」
所作が、ノイマンを見ると……ハインツなんて目じゃ無いわね。
「お茶会を、邪魔してごめんなさい。すぐに済みます」
わたしは、報奨金の話だけ聞ければ良かった。
——
何でこんな事になったんだ!
「ふふ、この茶葉は西の国の物では?」
「正解です。さすがリア!」
私はこの空間に強制的に参加する事になった。
茶葉……飲めればいい。
「今度はこのお礼にレロント商会の新作を持参するわ」
「嬉しい。次回も楽しみね」
お菓子より屋台ね!
心底、師匠に感謝したい。
このまま何事もなく時間が過ぎ去らないかと願っていたら、リアラーナ様がわたしに話しかけてきた。
「アメリア様、今日は何用で?」
降らないで……華やかさが、血生臭くなる。
「いえ、リア様に聞かせる様な話では」
少し落ち込んでるけど、血生臭くなるよりましよね?
「アメリア。お話、聞かせて差し上げて」
あれ?姉様……ああ!師匠絡みだ。
本当にいいのね、もう知らない。
「わたしの師匠が倒した、ドラゴンの鱗の報奨金を貰いに……来ました」
秘密裏だった様な気がしたけど……姉様ポンコツ?師匠がでたら、言葉だけでもキラキラし出した。
「ド、ドラゴン?本当ですの?」
「ええ、カイル様はそのぐらい簡単に出来る方なのです」
姉様が話し始めた。
その後。
姉様主体で師匠の話が盛り上がりに盛り上がりリア様はカイル様を知る事となった。
私は途中でダシに使われたと気づいたが。
すでに呑まれた後だった。
「私とカイル様の出会いは——」
姉様……。
——
ガチャ
「アメリア、おかえり」
「おかえりーーー!」
ボフッ
「ばふぁいふだふ。ひしょお」
最後までお茶会に付き合い、その後お金を受け取って、わたしが宿に着いたのはその日の夜だった。
疲れからヒアちゃんが顔に張り付いて居るのにも気付かず、そのまま布団に倒れた。
バフォ
「ぎゃあっ!」
ヒアちゃんが顔の上で叫んでる。
ダメだ眠い。
「ぼやぶみばざい」
私はそのままヒアちゃんを潰しながら眠りについた。
「だ…だすけで……」
「おやすみ。アメリア」
ハインツの名誉の為に。
アメリアは一応この国では成人しております。
面白かったら評価よろしくです(´ー`)




