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元社畜神様はコミュ症すぎて異世界でも逃げ出したい  作者: 片白
1章 逃げた先でも逃げたい
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1-3 盗賊団、悪夢を見る



謝って! 見張りの人、怒ってる。

 もちろん、僕には無理。


 イライラタイムも終わってしまって、目も開けられない。


「撤回しなさい! これは侮辱以外の何物でもありません」


 見張りの人に怒られたのに、謝るどころか、さらに王女は怒りのまま詰め寄ってくる。


 僕が悪いの?

 本当に悪いなら謝るけど、なんか腑に落ちない。


 でも……謝らないと終わらなそうだよね。


 覚悟を決める。


「……ご、ごめんなさい」


 い、言えた。

 我ながら頑張った自分を褒めたい。


「許せません! そんな端っこにいないで、ここに来なさい!」


 ……嘘つきだ。

 謝ったのに、もう無理だ。


 ここから出よう。


 僕は立ち上がって、目を閉じたまま歩き出した。


 ギフトを駆使すれば、目を閉じていても周りの状況は見える。

 ただ、閉じていても人が見えてしまうので、人はこのビジョンから排除した。


 これで、目を閉じている限り、人が見えない。


……快適だ。


 最初から、こうすれば良かったよ。


 格子の前まで来て。

 目の前にある牢の格子を……引っぺがした。


ガゴンッ


 何かが来る音が聞こえる。


「なっ、おい? ガキ、何やってんだ!」


……なんか人の声が聞こえるけど、聞こえなーい。


「え? え、え?」


 嘘つき王女も無視。


 さて、出口を探そう……ここは地下っぽいな。


 上に行こう。


「ま、待ってください」


 無視。


……いや、もう音も遮断しよう。


「……」


 聞こえなくなったな。


 さらに快適だ。



【アルテル】

──────────


 目の前で、恐ろしい事が起こった。


 肩まで長い白髪で、白く長い服を着た、まるで幽霊みたいな男の人が立ち上がったと思ったら、鉄格子を素手でもぎ取って歩き出した。


 夢でも見ているのかと思ったが、そんな場合じゃない。

 これは逃げるチャンスだ。


 私はこの国の第一王女、アルテル——


 国の公務で他国へ移動中に、盗賊団『黒もみあげ』に襲われた。


 黒もみあげ盗賊団は、私の護衛の騎士団との直接対決を避け、馬を驚かせて陽動し、煙幕を使い分断。

 あらゆる仕込みを使い、私だけを攫い出した。


 その手際の良さに誰かの意図を感じたが、もうそれを伝える手立てもなく、牢に入れられた。


 最初は私の他にも、捕まってここに入れられていた人達も居たけど、次々とどこかに連れて行かれ、今は私だけになってしまった。


 もみあげの噂は知っている。

 連れて行かれた人達は、すぐに売られたのだと分かった。


 何も出来ず、助けも来ず、次は私の番だと諦めかけた時に、彼が来た——


 真っ白な彼は、盗賊団の人達に切り裂かれたり殴られたりしていたが、特に気にもせず、どんどん先に行く。


 私は何とか盗賊達にバレない様に物陰に隠れながら、さらに彼を見失わない様に注意しながらついて行く。


 だけど、そんな私の事など完全に目に入っていないかの様に、盗賊達は薄暗い洞窟の中でも目立つ、白い彼にだけ向かって行く。


 存在感がすごいから、当然なのかもしれない。


「お、おい。てめぇら、何やってんだ!」


 出てきた……。

 黒もみあげ盗賊団のボス、もみあげだ。


 最初、聞いた時は余りのセンスにびっくりしたけど、自分の名前を団名に付けるのは悪の特権らしい。

 執事のセバスに聞いた。


「ボス、すいません。コイツ、何をしても傷一つ負わないみたいで」


「……ふざけんじゃねぇ。

 そんなわけ、あるはずないだろ!」


……ほんと、そう思う。

 私も見てなければ信じられない。


 彼は、どれだけ攻撃を受けても真っ白だった。


 その時、業を煮やしたもみあげが、自分の武器を持ち出した。


 それは、鎖に鉄球のついた巨大で凶悪な武器だった。


 あんな物で殴られたら、流石に。


「ガハハハ。俺の愛用のこの武器で粉っ端だ!」


 トロールみたいな風貌のもみあげは、見たままの剛力で鉄球をぶんぶん回し、彼にぶつけた。


ドバーン!


 私は余りの恐怖に目を背けた。

 もの凄い衝撃音と爆風が、こちらまで届く。


 徐々に爆風がおさまり始め、静寂が辺りを包む。

 ……私は恐る恐る彼を見た。


——彼は真っ白だった。


 彼は一瞬止まると、すごい速さでもみあげの方に顔を向け、ニヤッと笑ってスタスタ行ってしまった。


 彼の笑顔に恐怖したのか、その後、私が横を通り過ぎても気づかない程だった。



【もみあげ】

──────────


 俺は『黒もみあげ盗賊団』のボス、もみあげだ。

 それなりに悪の道を進み、それなりにデカくなった。


 今回は、ある男の依頼で王女を捉えるという偉業までやって退けた。

 依頼はこうだ……王女を捉えて、大体三ヶ月程、監禁して受け渡す。


 何故こんな内容かは知らないが、捉えた時点でこの依頼は楽勝だった。


 あと数日で約束の期日だったのに、今、目の前で起きている事態はなんだ。


……夢か?


 さっきまで漏らすほど怯えていたソイツが、今は目の前で俺の部下にボコボコにされている。


 これだけ聞けば、いつもの事だ。


……だが、おかしいのはここからだ。


 コイツは、仲間達が何をやっても傷一つ付けられねぇ。


 あり得るのか?


 こんな事、今まで見たことも聞いたこともねぇ。

 噂で聞くドラゴンには、普通の攻撃じゃ傷がつかないとは聞くが。


 コイツはドラゴンじゃねぇ。

 真っ白だが、間違いなく人だ。


 くそっ、埒があかねぇ。

 俺がやるしかねぇ。


 この国では少しは名の知られた、このもみあげ様を舐めるなよ。


「おい! 俺の武器を持ってこい!」


……今に見てろよ。

 すぐにその真っ白い姿を真っ赤にしてやるぜ。


 「ボス!」と、すぐに愛用のモーニングスターが俺の手元に来る。


 この武器で、多くの敵を潰してきた。

 流石のアイツも、これでペシャンコだ。


「ガハハハ。俺の愛用のこの武器で粉っ端だ!」


 俺は全ての力を込めて、真っ白いヤツ目掛けて振りかぶった。


ドバーン!


 武器の衝撃で、土埃が辺りに充満する。

 手に伝わるこの感覚、間違いなく終わったぜ。


 跡形もねぇだろ。


……徐々に埃がおさまってくる。


 ヤツの姿が現れてきた。


——真っ白だった。


「ヒィ……」


 仲間たちが一斉に怯える。

 俺も身体中に悪寒が走り出す。


 に、逃げねぇと。


 白いヤツは急にこっちを向き。


……ニヤリと笑う。


 そのあまりの恐ろしさに、俺達は意識を手放した。


——


「ねぇ、どうしたの?」


 俺はカリンの声で目を覚ました。


「ぐっ……ここは?」


 何があった……思い出せねぇ。


「ここは、じゃないよ。

 この荒れっぷりは何?

 私が少し外に出てる間に、何があったの?」


「……わからねぇ」


 その時、目の前を白いネズミが横切る。


「うわっ」


 咄嗟に避ける。

 な、何だ……急に震えが止まらねぇ。

 ネズミ一匹に、どうしたんだ。


「どうしたの? 汗が凄いよ……これで」


 カリンが白い布で顔を拭こうとしてくる。


「や、やめろ」


 手で布を振り払う。


……どうしちまったんだ、俺。


 訳がわからねぇ。


 俺が混乱しているところに、今度は王女に逃げられたと報告があった。


ドゴッ


 地面を叩く。


……くそっ、あと少しだったのに。


 不運は、それだけに留まらなかった。


 再起を図ろうとした俺は、あれから白い物を見ると身体が震え出し、仕事も出来なくなった。

 仲間達も、ほとんどがそんな状態だった。


 あの時、確かもう一人居た記憶があるが、カリンにも仲間にも、それを聞くことを俺自身が拒んだ。


 そして、俺の夢は潰えた。


 その日、この国から『黒もみあげ盗賊団』は消滅した。




【カイル】

──────────


 爽やかな風が頬を撫でる。


……表だ。


 目を開け、確かめる。


「はぁ、いい空気だぁ」


 空を見ながら大きく背伸びする。

 服の湿りは気持ち悪いので、乾かした。


 そういえば、途中でネズミを見た。

 この世界で初めて動物に出会い、感動した。


 荒んだ気持ちが楽になり、顔が緩んだよ。


……あれは可愛かったなぁ。


 ありがとう、ネズミさん。


——


 さて、と。


 後ろの洞窟を見て思う。


 あの時……

 いきなりしがみつかれて、気が動転してた所に。

 さらに人に囲まれて限界にきて、気絶しちゃったから分からなかったけど。


……僕は、こんな所にいたのか。

 あの人達って、洞穴好きなのかな?


 今となっては不思議な人達だったけど、もうどうでもいいや。


 これからどうしよう。

 安心したら、お腹が空いてきた。


 先ずは、どんどん空くお腹をどうにかしなくちゃ。


 他にも動物いるかな?

 でも、食べるの可哀想かな……

 魔物は無理だろうし。


 情報欲しいけど、人と関わりたくない。


 詰んでない?


「あのぅ。」




ここから視点の切り替えを多用するので、なるべく混乱しない様にしていますが、こんな作品だと思って楽しんでくれたら嬉しいです。


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