3-7 好奇心は止められない
【カイル】
──────────
僕は思い出した。
と、言うより僕からすると昨日の話だ。
「ご迷惑をおかけしました」
深く一礼する。
「いい」
許してもらえてよかった。
さすが、ギルマス懐が深い。
ふっ……僕は誤った、そして許された。
なら、約束を果たして貰う。
「教えて!」
エルは間を思いっきり取った。
「…………やだ」
なんでー!
断られるとは、思わなかった。
力なくソファーに座る。
ボフッ
座り心地が素晴らしい。
心穏やかになり過ぎて気持ちが漏れた。
「なぜ?」
「冷めた」
あぁ、確かにもう十日前だし……余韻も何もないけど。
エルも寝てた、というより先に寝たのはエルじゃん!思い出して来た。
「先に寝た」
「仕方ない」
「同じ」
「長い」
「ずるい」
……本当に理解できてるんだろうな!
僕には限界だ。
エルの真似はそれ以上に頭に負荷が来る。
「理解できますか?」
「うん」
凄いね!きっと第三者は更にわからないぞ!
「アメリアはわかった?」
何故か、後ろで立って見守っているアメリアに聞いてみる。
「ひゃい。もちろんわかります!」
ほんとかい?別に試してないよ?
むしろ僕の為を思うなら分からないって言って欲しかった。
って、アメリア頭良かった。
「ヒアは?」
頭の上に、もちろん乗ってます。
「わかるわけないじゃん!」
何を自信満々に言ってんだ!
聞くだけ無駄だった。
ヒアは僕のおかげで、食事お化けから解放。
ただ、果実をテーブルに転がす。
コロコロ
「わーい!ガブッ」
基本は変わってない。
長い空腹の呪いで、反射的に染み付いてしまったらしい。
ロイは僕の目の他にもヒアに後遺症を残して行きやがった。
目の前に現れたら殴りたいよ。
あの後、どうなったのかは分からない。
次干渉してきたら、今度は徹底的に潰す。
未だお返しし足りなく、ウズウズはしています。
「ならさ、代わりを下さい」
少し僕も変わって来たのかな?
最近会話、結構してない?
「だめ、仕事」
頑なじゃない?
そんなに問題でもあるの?
「何か問題でもあるの?」
エルが指を回して精霊に合図してる。
精霊から綺麗な糸が出て来て一枚の紙を運んでくる。
前に見たやつに似てる。
「これ」
一枚の紙が僕の前に来る。
仕方ない……どれどれ、なるほど、読めない。
エル、前回の覚えてないのかな?
「アメリア、頼める?」
「ひゃい」と、慌ててアメリアが僕の意図を汲み取る。
やばい、エルの会話に釣られる。
でも、やっぱりアメリアは凄いね、意図がちゃんとわかるんだ。
すぐに、僕の前にあった紙を取って読んでくれた。
「ビブリナの森にAランクの魔物が多数出現。早急に撃退求む。らしいです。」
Aランクがよく分からないけど、狩ればいいのなら簡単だよ。
あの森の魔物はそうでもないみたいだし。
「因みに、アメリアの倒した牛より弱い?」
せっかくなら、アメリアの修行に使いたいなぁ。僕が倒しても……
「弱い」
決まりだね。
時間制限ないならこれで行こう。
「だめ。時間」
あるのかーい。
僕、顔に出やすい?
「どれくらい居るの?」
数によるよね。
「二百五十」
「え!?」
何故か、僕が声を出す前にアメリアが驚く。
少ないのか、多いのか。
しかも、正確にわかるものなんだね。
あ、精霊かな?
「多いの?」
「多過ぎます……因みに、ミノタウロスの周りにいた魔物がCランクでした」
うん、よくわからない。
なら、僕の戦った小型のドラゴンもCだった?
Aの基準は牛より弱いくらいか。
まぁ一匹、狩ってくるか。
「ねぇ、精霊飛ばしてその魔物の場所教えて。意識飛ばして追うから」
エルが指を回す。
「行って」
僕は飛んだ。
——
飛んだら目の前に大型の熊がいた。
僕が急に現れてびっくりしている。
「ごめんね、時間がないから」
試したい事、どうしよう。
こんな時じゃないと試せないしなぁ。
好奇心は止められない!
——エルが使った、あの糸。
僕は指五本から、精霊が出していた糸を出して熊を拘束しようとする。
出た!自分の意思で動く……楽しい。
「グガアァァァァーーッ!?」
僕から糸が出て来たので警戒したのか吠え出した。
シュルルル。
糸が熊に纏わりつく。
そのまま拘束するように締まる……かと思ったら、糸は熊の剛毛も骨も、バターのように易々と通り抜けた。
「え?」
次の瞬間、熊だったものは自重に耐えかねて、積み木が崩れるようにバラバラに弾けた。
ブシャーーッ!! バチャバチャ
「あ……うわ、グロッ」
流石の僕も突然のスプラッターは苦手だ。
飛び散った熊のせいで服が汚れ、辺りは見事な惨劇になった。
【エルトゥア】
──────────
「ブーーーーーッ!!」
あまりの衝撃とグロさに飲もうとしたお茶を吹いた。
「ゴホッ、ゴホゴホッ……」
突然の私の行動に姫も驚く。
「ど、どうしたの?」
すぐに布巾を持って濡れた場所を拭いてくれる。この子、王族よね?
「だぃじゅぶ……けほ」
失態だ……精霊が数体、飛び散った。
後で回収しないと。
まさか、精霊で見てたらあんな光景を見せられる事になるとは。あの無自覚真っ白野郎。
まだ喉が痛い。
なるべく声に出さない様にしないと。
精霊が心配してくる。
(大丈夫よ。ありがとう)
少し落ち着いたので、目を開けたらカイルがいた。
「!?」
「ただいま、失敗しちゃった」
コイツ、ワザと?その姿で帰って来て失敗とか言ったら。
「し、し、師匠!?」
もう、このパーティーはおとなしく出来ないの?耳を押さえる。
「きゃ……………」
耳を抑えたおかげで、うるさくなかった。
これ以上騒がれたくない。
姫にちゃんと伝えないと。
「返り血」
「へ?」
「怪我なし」
もう、仕事頼むだけでこれじゃ……模擬戦やらなきゃ良かった。
楽しかったけど。
「アメリア、ごめんね」
わざとだろ、絶対。
パチンッ
指がなったらカイルが綺麗になった。
……なんだと!?
私は思わず詰め寄った。
「教えて」
欲しい。
私の糸を真似たんだ。
教えろ。
「……指を鳴らせば綺麗になるよ?」
これだから、ハイエルフは……理論がない。
あの糸も、私のと違い理が全然違うのね。
どうにか……そうだ!
「他人は?」
かけてもらえれば少しは分かるかも。
好奇心は止められない。
「できるよ」
おおー。私はお茶を被った。
バシャ
「やって」
パチンッ
濡れた服が綺麗になっていく。
これは、再現できるかも。
(みてた?……そう……うん)
よし、研究しよう。
「ありがと」
……何か忘れてる気がする。
まぁ、いいや。
私は忙しい。
「帰って」
いいの?って聞いて来たけど。
「忙しい」
二人と一匹は帰って行った。
(研究開始よ……)
後先考えずに好きな事に打ち込む。
素敵ですね
評価など頂けたら喜びます。




