3-6 狂乱の目覚め
【カイル】
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「ふぁ」
なんか久しぶりに起きた気がする。
……あれ?重い、身体が動かない。
頑張り過ぎて倒れたのは覚えてる。
まだ疲れが残ってるのかと思ったけど。
意識がはっきりして来てすぐに分かった。
誰かが僕に被さってた。
アメリア?……多分そうかと思い見てみると。
「え……アルテル?」
びっくりした。
まさか、ここはお城?
顔だけ動かして見てみるが知らない場所だ。
ただ、僕は見なければ良かったと後悔した。
何故ならアンが居たからだ。
居るとは思わないだろ、普通。
アルテルだけでも驚いたのに……
起きてしまった。
寝たふりしてもすぐバレるので意味はないが、今回は誤魔化すことすらできない。
「おはようございます」
もう、目覚めの一発目がこれって……僕、悪いことした?昨日は頑張ったと思うんだけど。
神様……は、僕たち?
神様はこんな時、何に願うんだろう。
諦めた。
「お、おはよう」
言うしかないよね。
辛いよー、アルテルが乗ってるんで体はどうせ動かせないけど、精神的に辛い。
トントン
誰か来たよ?
もう誰……これ以上何があるの。
起きなきゃ良かった。
「どうぞ」
僕の意思は、やっぱりないんだね。
「はやく、はやくー」
あれ?この声。
ガチャ
「カイル様ーーーーっ!」
顔に羽虫が飛んできた。
バフッ
くっ、動けないと思って好き勝手しやがって。
しかし、元気そうで良かった。
僕の処理は上手く行ったようだね。
「ヒアちゃん、師匠に無理させないで」
アメリア?ヒアが顔に張り付いて見えん!
身体を擦り付けるな!
アルテルがまだ寝てるので無理に動かせない。
「ぶあ。ぶぉいべ」
もう、無理やりにでも声を出すしかなかった。
「師匠!?」
凄い驚いてますね。
そんなに迷惑かけちゃったのか。
「うわぁぁぁあああん!?」
え?アメリアが急に大泣きした。
何で……大袈裟すぎない?
「う、うーん」
アルテルがアメリアの号泣で起き出した。
そりゃそうだ。
「カイル様ぁぁぁぁ!?」
顔にくっつきながらヒアも喜んでいる。
「うるさいですよ、カイル様が寝てらっしゃるのに……」
寝起きで周りがうるさいからか嗜めながら起きるアルテル。
「姉様……師匠がおきまじだあぁぁぁ」
アルテルもその言葉で爆破した。
「え?カイル様……カイル様!?」
ガバッ
これでもかと僕に覆い被さるアルテル。
「ぐふっ!」
「カイル様、良かった。本当によかった……うぅ」
前で号泣のアメリア。
顔に張り付き喜ぶヒア。
僕の体に全力で覆い被さりながら泣くアルテル。
そんな中でも一番、存在感のある怖いアン。
どんなカオスだ。
僕は寝起きなんだけど。
心配してくれてるのは、痛いくらい理解できてるので……受け入れるしかなかった。
——
カオスが収まり、ようやく状況を聞けた。
場所はギルドではなく、アメリアが借りた部屋だった。
「……十日ってほんと?」
僕は倒れてから十日間、寝ていたらしい。
そりゃ、あんな騒ぎになるわけだ。
まさか、この世界に来てからと同じくらいの日数、寝ていたとはね。
それだけ寝ていれば状況もかなり動いたようだ。
アメリアは冒険者として、かなりギルドで活躍しているらしい。
「おぉ、凄いね」
「師匠の為に頑張りました」
エルにいつまでも迷惑掛けられないので、次の日からこの宿に泊まりだしたみたい。
(ありがとうございます)
模擬戦の後の狩で得た素材を、エルの権力でお金に変え次の日はしのぎ。
(ごめんなさい)
本格的にその次の日からギルドの依頼を受けだし、宿代を稼ぐ毎日だったようです。
僕を心配してか、かなり高級な宿みたいで……
稼いでも稼いでも稼ぎ足りなかったらしい。
(本当にごめんなさい)
僕が倒れてから四日目に、アンから素材の鑑定が済んだと連絡があった。
それでお金の問題は済んだのかと思ったら、アメリアが「それは師匠が起きてからで」と拒否したらしく、今日まで稼ぎ続けては出ていく毎日に。
(……ヒモだ)
聞いてて、だんだん恐ろしくなって来た。
最後に、アルテルだ。
四日目のうちにアンが伝えたらしく、すぐに飛んできて公務をこなしながら僕の看病をしに来ていたらしい。
今日も僕が起きる少し前までは起きていたが、色々疲労が溜まって寝てしまったと。
僕は起きて早々、みんなの前で土下座した。
ゴンッ
「ほんと、ご迷惑をお掛けしました」
この状況で一番最初に言葉を発したのはヒアだった。
「豪華なご飯をくれたら許す」
僕の頭に乗り、話にも出てこなかった奴が一番偉そうにしやがって……羽を掴んで投げたい衝動を必死に押さえつけて、迷惑を掛けた二人の許しを待つ。
「し、師匠そんな事やめてください」
「そうですよ。カイル様。」
(ありがとう)
「えー、許しちゃうの?」
僕はゆっくり立ち上がり、宿の窓を開けて風を感じながら……ヒアをゆっくり手の上に乗せて微笑む。
「カイル様!」
ヒアは褒められると思い羽をパタパタしながら笑顔を見せるので……
羽を掴み。
「ちょ、ちょっと……何で、嫌、やだ」
思いっきり……
「飛んでけ!はむしぃぃぃいーーーーっ!」
大空へ、ぶん投げた——
「久しぶりですぅぅぅぅーーーーーっ!」
キランッ!
何故か思った以上にスッキリした。
まさか、ヒアなりの慰め?
……ないな。
ボフッ
僕は寝てた布団に腰をかけ、改めて気持ちを伝えた。
「本当に、色々ありがとう」
アルテルがまだ心配そうに近づいて来る。
「カイル様心配しました。何度、覚悟を決めたと思っているんですか」
え?何の話……
と、僕の顔にアルテルの手が触れる。
「目が……」
あぁ、忘れてた。
何の処理もしてなかったけど、僕の目。
見える方を閉じる……見えないね。
「大丈夫だよ。見えないけど痛みはない」
その言葉にアメリアも伏せる。
治るって言っちゃったね。
ちょい試してみるか。
……解析。
——あぁ、これはダメだ、時間かかる。
放置し過ぎたせいか侵食が酷い……
でも、暇を使って少しずつ治せる。
「アメリア。ちゃんと治るから、ね」
何故、僕の言葉に伏せる?
アルテルがアメリアの側に行き、僕に捕捉して来た。
「今になって号泣した事を思い出したのね」
頭を撫でながら言う。
「こ、子供扱いしないで。師匠、起きて良かった」
また、涙を溜める……
こんな時、外に気分転換しに行くのが一番なのかもしれないが、僕には無理だ。
そして、視界に入れないようにしていたが、もうアンが同じ部屋にいるのは耐えられない。
どうしよう。
「姫様。そろそろ……」
まさか、アンが自ら離れてくれるとは。
僕は大人しく歓喜する。
「……まだ、いいのでは?お父様ですし」
なんか、不穏なワードと不穏な人が出て来た。
こちらをこれでもかとチラ見しているアルテル。
アンを早く連れて行ってほしい反面、アルテルには心配かけ過ぎて……僕は何も言えない。
「姫様」
アルテルがこっちに来る。
「カイル様。何か困ったらいつでも訪ねて来てくださいね」
僕に伝えた後アメリアに向き。
「報奨金は用意してあるので。早く取りに来てね」
と、言って帰って行った。
終わった。
いや、まだだ。
僕は立ち上がり窓に向かう。
「師匠?」
来た。
「カイル様ーーーーーーっ!」
即座に窓を閉める。
バタンッ
「そんなぁーー。」
べチンッ
「酷いです……」
さて、これからどうしよう。
幸あれ!
評価など頂けたら喜びます。




