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元社畜神様はコミュ症すぎて異世界でも逃げ出したい  作者: 片白
3章 ギルド編

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3-5 歩んだ道



【国王】

──────────


 場所は騎士団の訓練場、今日は目的があり、ここに宰相と訪れた。


「こ、これは」


 アルテルの報告から二日、予定とは一日遅れで城に秘密裏に運ばれたソレはとてつもない物だった。


「本物なのか?」


 分かってはいるが、聞かずにはいられなかった。

 確かにコレをバレずに運ぶには一日では無理か。


 隣にいる宰相が冷や汗をかきながら答える。


「……本物でしたな。魔道具でもはっきりと出ております」


 この鱗を持つドラゴンがあのダンジョンに?

 間引きはどうなっていたのだ?

 定期の報告では、何も無かった筈だが。


「訳を聞かせてくれないか?」


 宰相とは、もちろん長い。

 私が何を聞きたいのか瞬時に理解してくれる。


「わかった。……数字の上では、問題は起きてはいなかった」


 報告書は私も見ている、その通りだろう。


「しかし、この問題を受けて改めて見てみると。溢れた魔物の強さが上がり討伐数がここ数年少しずつ下がっておった。」


 ふむ……それだけでは、判断は難しい。


「その数字で、何が見える?」


 宰相は難しい表情を見せる。


「結果論だが、この鱗の持ち主が原因でしょうな」


 ダンジョン……いつの間にかそこに現れ、冒険者が人生を賭ける場所。


 当たり前になり過ぎて忘れていたが、魔物は中の個体が増えすぎると、表に出て来る。


 それが減ると言う事は国としては有り難い事だ。

 

 しかし宰相の言葉が正しいとなると、大量の魔物がドラゴンにより減り続け、その中を生き残った魔物が外に溢れ、今までより強さが跳ね上がったと。


 知らず知らずの内に、このサイクルがダンジョン内で生まれ、長い時間を掛けてこの鱗を持つ大きなドラゴンが産まれた。


「そんな事があるのか?」


 そもそも、ダンジョンの魔物の産まれる速度とは、どんなものなのだ?私が訓練で狩りに出ていた時など考えもしなかったぞ。


「そこは、私にも……既にギルドに勅命は出しておりますぞ」


 さすがだな。

 結局はギルドの捜索待ちになるか。

 

「さて、どう思う?」


 今度はカイル殿か。


「ドラゴンを冒険者の誰かが討伐していたら、申告しない理由はありますまい」


 だろうな。この偉業、仮に本体が持ち運ばれたら国が認めざるを得ぬ程の英雄だ。

 鱗だけでも、その価値はある。


 分かりやすいくらいに欲がない御仁だ。

 アメリアにプレゼントなど、笑いが出て来る。

 アルテルの顔も面白かった。

 報奨金の方は任せても大丈夫だろう。

 

「後は頼む」


「は!」


 去っていく宰相。

 一人残り考える。


 リディア殿のこの世界の異変、ギルドの捜索を待たずとも確定だろう。


 あの鱗を持つドラゴンがもしそのまま放置されて表に現れる最悪な事態になったら我々に討伐は可能だったか。

  

「無理だったな」


 もし、あやつがこの国に居れば……どうだったろうか。

 いや、それこそ望めぬか。


 私の望んだ通りに事が運んでしまったが、さてどうなるのだろうな。

 今後、何も起こらぬことを祈るばかりだ。



【ロイ】

──────────


「ふーん、ふふーん」


 順調だ。


 僕の世界でここまでの強者が生まれるなんて、これもカイル君を見なかったら分からなかったなぁ。


 だって、ぼくは壊すのが好きだからね。

 育てるなんて思いつかなかったよ。


「ありがとう」


 もう少しかな?


「あーそうだ。久しぶりに見てみようか」


 あの役立たず。

 だいぶ、寝てたみたいだね。

 見ようとしたら、真っ暗で頭に来ちゃったよ。


 (どれどれ……)


 あれ?おかしいなぁ、まだ寝てるの?

 ……ん?文字が書いてある?


 (何だコレ……)


『バーカ』


——文字を見た途端。

 光が膨らんで爆発し、ぼくの目から脳に掛けて痛みが走り出した。

 

バチッ


バチバチッ


「ぎゃぁぁぁぁぁあああーーーっ!?」


 イタイ、痛い痛い痛い。何コレ、何コレ。

 ぼくは、あまりの激痛にのたうち回った。


 痛みが身体中を駆け巡る。


「誰かぁぁぁぁ……助けっ……があぁぁっ!?」


 くそっ、誰も来ない。

 普段からぼくの所には来ないけど……来いよ!


「来いよっ!?」


 無理だ、痛みで何も考えられなくなる……


……アレ?


——止まった?


 むしろ痛みがなくなって来た。


 どこも動かせない。


 不思議だ……僕は今ドウナッテルノ?


……キエてく。


「ナニモ、ミエナイヨ」


 ボクダレダッケ?


 無意識に前に歩き出す。

 ロイの管理する世界に引き寄せられるように。


 オネガイ……


 キエ……


「………」


ドサッ


 覆い被さる様に倒れたロイから、何かが流れ込んでいく。


 ゆっくりと着実にそれは意思を持つかの様にロイの管理する世界へ流れていく。


……何の変化も訪れず、ただ受け入れた世界が飲み込む様にどす黒く染まっていた。

 



【最上神】

──────────


「変わらぬな」


「最上神様ー!どうしたの?」


「レイアを呼べ」


「はーい」


 小妖精はすぐに飛び立つ。


「レイア。ここに」


 素早いな。


「ロイが壊れた」


「……」


「連れて来なさい」


「はっ!」



【レイア】

──────────


 最上神様からお声が掛かったかと喜んだら、何をしたの?

 壊れた……こんな事は初めてだ。


「カイルが逃げてから立て続けね」


 移動に掛けては、我が一番だから選ばれた?

 誰にも知られる筈はないのに、さすが最上神様ね。


 さて、ロイ。

 足元に仰向けで転がってる無惨なロイを見る。


 何をされるとこうなるの?

 顔が見る影もない。


「元々……こんな顔か」


 特に思い入れもないし、どうでもいい。


 それにしてもロイの管理世界の方が問題じゃない?

……真っ黒だ、覗きたくねぇ。


 まぁ、我の仕事優先。

 今はロイを連れていくか。


「触りたくない……が、仕事。仕事」


 小指の先だけ触れて……最上神様の元へ。


——


 何度来ても、緊張する。


 上を見上げると神々しさで目がやられるらしいので、一度もそのお姿を見た事がない。


「連れて来ました」


 そもそも身体が動かないので、一つの仮説を立てた。


 無意識に拒否反応がでるので『見てはいけない』と、我らにはプログラムされているのだろうと。


「感謝する」


 少しドキっとする。

 感謝されただけ価値はロイにもあったか。

 そのまま、足元のロイは浮かび上がり、二度と降りてこなかった。


 気になる。

 見れないってのも辛い。

 それに、色々聞いてみたいけど……駄目だ。


 声に出せない。


「ビブリナの世界とロイの世界どちらがいいですか?」


「ビブリナでお願いします」


 即答する。

 あれをみた後、ロイの世界なんて選ぶ訳ない。


 あの世界の管理を代わりに受け持つ人、ご愁傷様。


「それでは、お願いします」


「はっ!……それでは」


 何も言われなかったので飛んだ。


——


「はぁ……」


 さてさて、我が代わりになるビブリナの世界はどうなってるのか。


 ……普通だ。


「ビブリナってファンタジー好きだっけ?」


 あんまり知らないけど見た目があんなだから古風な物を想像してた。

 これは、ついでにたまに見るくらいでいいかなぁ?……ってカイルいるじゃん!


「アイツ、この世界に逃げたのか」


 そもそもが不思議なのだけど。

 カイルだけが、おかしいよね。

 我だって入れるなら入りたい。


 リディアが例外中の例外だった。

 管理者が許可を出せば入れる……


 他の使徒に頼んで試したけど結果は弾かれた。

 多分、この状況も最上神様の手が入っているのだろう。


「羨ましい」


 少し興味がでた。

 我の世界は多少放置しても大丈夫だし。

 カイルを見よう。



——あれから三日。

 

「……いつまで寝てる」


 カイルは未だ眠り続けている。

 誰か他にも出てくるが一つも興味が湧かない。


 ……つまらなーい。


 無駄な時間を過ごした。

 尻餅ついて上を見上げると、小妖精が見える。


「ちょっと、小ちゃん!」

 

 我の言葉にすぐに飛んでくる。


「はーい。レイア様、何でしょう」


 ……距離感があるのはなぜ?


「ちょっとカイル起きたら、我の所に伝えに来て」


 飛びながら後ずさりしている。


「何?」


 あまりにも露骨なので聞いてみた。


「あの、前にロイ様が一匹、中に突っ込んで。帰って来れなく……」


 あの馬鹿は何してるの?

 だから、ああなったの?

 自業自得だけど、恐ろしい。


「なるほど、カイルの近くにいた小ちゃんは、うちの小妖精だったのか」


 どうりで似てると思った。


「はい、なので近づきたくないです」


 理解した。


「我が居なくなってからでいいから、頼んだ」


 そして、自分の世界がある場所へ飛んだ。


——


「何だか、知らない所で色々起こってる」


 ロイみたいにならない様に楽しもう。

 


 我の世界もまた独特だ、赤く染まり闘いに闘う世界。

 生と死が入り混じる。

 そこでは死すらも一つの資源だった。


 それを見てゆっくり楽しむ。


 神の特権と言わんばかりに。


「さぁ、今日も闘いに明け暮れなさい」


 世界に話しかける。

 まるで、おもちゃで遊ぶ子供のように。




カイルのおかげで上も賑やかに。


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