3-3 模擬戦
【カイル】
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僕たちは『ビブリナのダンジョンの上級エリア』前に、アメリアがミノタウロスと戦った所に来ていた。
あの後。
急に戦う事になったが、場所が無かったので僕が渋々提案する事になったのだ。
最初はギルドの地下にある『試験場』初めて登録をする、僕みたいな初心者の力を測ったりする場所に通されたが。
「味気ない」「外に出る」と恐ろしいことを言われたので。
人混みに行きたくない一心でここに飛んだ訳だ。
「……転移」
「便利ね」
エルが言う。
「エルでいい」と言われたので呼ぶことにした。
「あ、あの。わたしに戦わせてくれませんか?」
常にアメリアはやる気だね。
エルを見て思う。
んー、どうなんだろ。
僕は別にいいけど、エルが許すかどうかだよね。
「今度」
ほんと、言葉が少ないよね。
短すぎて会話が難しそう。
ほら、アメリアへこんでるよ。
「わかりました。師匠!頑張ってください」
ありがとう。弟子の一言で僕は子供と戦うという現実に向き合う事になった。
やだなぁ……やりづらい。
エルは対照的にやる気満々でストレッチしてる。
「あ、ヒア。アメリアと一緒に」
そう言って、果実を三つ取り出してアメリアに渡す。
すぐに「ご飯!」って言って飛びつくヒア。
さっきまで食べてたじゃん。
「お腹空いたら、残りもあげて」
どのくらい掛かるかわからないからとりあえず三つ……あったらあるだけ食べるからね。
どんな食欲なのか。
「準備は?」
広い空間に僕とエルが対面で迎え撃つ。
向こうは準備が出来たみたいだ。
そういえば、いない。
あれだけあった魔物、消えたのかな?
……まぁ、いいか。
エルの方を見る。
「いつでもいいよ」
一つ、要望は増えていた。
全力で戦う事になっている。
僕は、それを了承した。
ただ、相手は子供だし、僕は手加減するつもりだ。
強いのは分かる。エルの周りに精霊が物凄い居るし、あれが魔力体なのもわかる。
あれから何が来るのか想像すると、少し楽しみ。
「姫」
「合図」
律儀だね、いつでもいいのに。
「はい!では……」
右手を大きく上げる弟子。
こうなると、少し緊張がはしるね。
……手が下ろされた。
「はじめっ!」
その瞬間……エルの周りに魔法陣が六個現れた。
(おお、凄い。どうなるんだろう)
それぞれから違う色の光線が僕に放たれた。
ドガーンッ!
バシュバシュバシュッ!
——バシュン!
一発は逃げ道を塞ぐように横へ、三発は正面から、そして最後の一発は弾道を曲げて背後から
(一発は僕が避けると思ってわざとだね。
更に一発は曲げて後ろからか)
避けなかったけど、色々考えてるんだ。
「僕も行くね」
戦闘をこんな感じでやるのは初めてだから、色々試そう。
『認識阻害』
【エルトゥア】
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なっ!急に消えた。
ちっ、どうする……待っているのは悪手。
(精霊よ、魔力をばら撒け)
私の意思を聞き取り、周りの精霊が広範囲に魔力を放出する。
周りに飛んだ魔力の影響で一箇所、人型の空間が浮かぶ。
「いた」
なるほど、消えただけ。
それにしても、余裕ね。
消えたのに同じ位置から動いてない。
「後悔」
その余裕が命取り。
私は遊ばない、最大火力を見せてあげる。
(精霊よ……混ざれ、混ざれ。膨らめ、膨らめ)
周りの精霊が意思を聞き、それぞれが大きな一つの塊になって行く。
……準備に時間がかかるのが問題だけど。
塊が人の形に変わっていく。
八人の精霊が俄然の敵を見据える。
——まだ動かない。
そう、そうやって動かず待っていろ。
(…………ありがとう)
精霊から合図があった。
——いくわ。
(八精霊よ。私の魔力を糧に手を取り合え)
膨らみ大きくなった八人の人形が更に手を取り合い大きな一つの集合体となる。
……準備は完了。
自然と笑顔になる。
楽しい。この魔法、初めて戦闘で使える。
————死んだら、骨は拾ってやる。
「エターナル・カタクリズム」
言葉が紡ぎ終わった瞬間。
膨張した精霊の塊から全てが混ざった無色の光線が放たれた。
パシューーーン
魔力の放出から分かる。
未だに動いてないカイルに無色の光線が当たった。
ヒュッッ!
グワン——
バチ、バチバチッ!
……パンッ!!
空間が生まれカイルを飲み込み、中で爆ぜる。
すぐに、上下に一筋の光が飛び散る。
シュン
その光はそのまま上は空から天井。
下は地面から大地一直線を削ぎ落として飛んで行った。
魔力を与え過ぎた……精霊も楽しんだみたいね。
(……お疲れ様)
「はぁはぁ」
……なぜ?
仮に当たれば、少なくても影響が出るはずだけど。
何の変化も起こらない。
そこには私の精霊が起こした現象だけ……血もない、声もない、物体そのものが精霊の力以外で消えた。
でも、精霊もちゃんと当たったと言っている。
「変だ」
当たったのに、当たってない。
さっきまで存在した場所にカイルはいない。
でも、生きてる。
何が起きてる?何か見逃した?
恐怖に支配される。
その時、私の後ろから声がした。
「やぁ」
振り返った瞬間。
トンッ
「お疲れ様」
バタッ
【カイル】
──────────
終わってみると呆気なかったが、楽しかった。
僕の足元で倒れてるエルを見て思う。
『バターロール・カタクリコ』……だっけ?美味しそうだけど、粉っぽそうな名前だ。
まぁいいや。
たぶん、あれは……前に戦った。
ドラゴンの光線といい勝負だ。
当たれば結構、痛そう。
もちろん何もせずにが、前提だけどね。
子供でもこんな魔法?が使えるのは凄いなぁ。
「よいしょ」
倒れたエルを持ち上げて、アメリア達の方に向かう。
……僕が今回やったのは。
『デコイ』そこに存在を残して後ろに回り気絶させただけ。
本当はもっと色々やりたかったけど。
恐ろしいほど、効果的だったからね。
消えたらそこにいるわけないじゃん?
結構、頭の良い子だと思ったけど。
その辺はまだまだ子供なのかな?
「終わったよ」
アメリアの所に行き。
ゆっくりと段差のある場所にエルを下ろす。
口をあんぐりしていた弟子は、僕の声で帰って来る。
「し、師匠!……凄かったです」
弟子は僕の行動が地味でも褒めてくれる、良い子です。
僕よりエルの方が凄かったと思うからね。
ヒアが目に入る。
……え?ヒア、三つ目をかじってる。
そんなに食べたの?
「アメリア、さすがにこの短時間にあげすぎだよ」
何のことかと、周りを見てヒアを見つける弟子。
「ああ!ヒアちゃん……ごめんなさい、見入ってました」
確かに試合を見るのは楽しいよね!わかる。
それを言うと……ヒアは全く見てないんだね。
何よりもご飯が優先な羽虫だ。
「ヒア、今日のご飯はそれでおわり」
僕の言葉を聞いて動きが止まり。
ゆっくりこちらを向いた。
「……ワタシに死ねと?」
うわぁ……いつもの様に駄々をこねるのかと思ったら真顔で言われたよ。
そこまでか。
ここまで言われても三つ目を食べるのをやめないのもヒアだね。
「う」
エル……起きる時もみじかっ!
こうなると意図を感じる、理由が気になる。
ゆっくり起き上がり、頭を振っている。
「教えて」
こちらを見つけ。
すぐに、何故負けたかを聞いてきた。
「聞きたいの?でも、自分で考えるのが楽しいと思うけど。しかも、模擬戦だよ?」
頬っぺたが膨らむ。
子供らしい表情もできるんだね。
——喜んで、教えよう!
……でも、せっかくだ。交換条件にしよう。
「なら、何故言葉が少ないのかを教えて。それ意図的でしょ?」
カッっと目を見開き、また眠そうな表情に戻る。
「なぜ?」
分かった?かな。
少し迷ったエルだけど。
「……いい、教えて」
まずは、僕からって事ね。
「あの、ここで話すのも良いとは思うんですが。一度戻りませんか?」
突然のアメリアの提案。
わかるけど、ここで良くない?
戻ると人がいるよ……
「無理」
「聞かないと」
「眠い」
戻ってる時間がない、早く教えて。
じゃないと寝ちゃう。だろうね。
僕は、その意見を尊重するよ!
「僕はいいよ。何が聞きたいの?」
眠そうな表情で睨むエル。
聞き返すな、いいから話せ。
……なんだろうね。
「消えた訳」
「後ろにいた訳」
ふむ、一から教えてあげよう。
単純すぎてガッカリしないでね。
「言葉より、みせるよ」
僕は『デコイ』を使った。
歩き始めると、僕の元いた場所にもう一人の僕が残る。
「!?」
「師匠が二人!?」
二人ともビックリしてる。
何だか反応が嬉しい。
ヒアは相変わらず食事中。
お前は、せめて見ろ!
パチンッ
僕は、わかりやすい様に指を鳴らし。
戦闘中とは逆に『認識阻害』をデコイの後に使った。
移動している僕と、デコイが消える。
「まさか……」
そう。そして、エルの後ろまで回り姿を現して、頭に手を乗せた。
ポンッ
「お疲れ様」
単純だったよね。
まぁ、複雑なものより、こういったやり方が騙すには良いのかも。
結果的に初見じゃ、なかなか見破るのは難しいのかもね……相手によるか。
「見事、ね……」
エルの瞼がゆっくりと降りていく。
「おやす——」
ドサッ
言い切る前に、そのままうつ伏せに倒れ込んだ。
「えー、ずるくない?」
交換条件は?
満足してうつ伏せに地面と激突してるけど。
急すぎて、反応出来なかったよ。
「アメリア。少しこの辺の魔物と戦っておいでよ」
僕は見逃さない。
アメリアがうずうずしているのを。
僕たちの戦いに当てられたみたいだ。
戦うの好きね。
「ひゃい。でもヒアちゃんが」
律儀だね。
「僕が見てるよ。エルが起きるまで見てないといけないから」
パァっと笑顔になる。
「行ってきます!」
返事を待たず、剣を抜きながらダンジョンの奥へ駆けていく。
あっという間に姿が見えなくなった。
……本当に戦いが好きなんだな。
まぁ、今回は、仮に何かあってもすぐに反応できる。
ヒアはほっておいていいし、エルは目の前。
僕はアメリアの観察をしながら、ゆっくりしてよう。
……あ、うつ伏せのままだった
「エル、ごめんね。」
「クー、クー」
【ロイ】
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ヒアだっけ?カイル君が名付けた小妖精。
「ほんと、役立たず」
ほとんど、食べてるシーンだけだよ。
燃費がここまで異常に跳ね上がるなんて思わなかった。
やっぱり理を変えるのは無理があるね。
まだ、完成しないから、出来れば情報も欲しいけど……失敗かなぁ。
もう、切ろうかな。
いや……もう少し見よう。
今回、面白い情報は一つだけか。
「あー、今となってはこっちに連れてくれば良かった」
僕の世界は楽しいよカイル君。
だから君の為に面白い物作ってるから待ってて。
自分の世界を見る。
だいぶ、育ってきた。
早く強くなって、僕のおもちゃ。
ふふ。はぁ……冷める
よくあるギルマスとの戦い!
評価など頂けたら喜びます。




