2−14 エピローグ
【アッシュ】
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俺達はこの国でも上位に入るパーティー『炎の翼』……だった筈だ。
あれから数日が経ち、宿屋の一室であの時の事を考えていた。
戦い方は完璧だった。
いつもの様にミリアからの支援を皮切りに攻める。
ミリアは敵の特性を瞬時に判断し、適切な支援をしてくれる。
俺達二人はそれを信じて全力を出せば良い。
だが今回は何だ……黒い闇に飛び込んだ瞬間、俺はダンジョン前の道に倒れていた。
その出来事に拭えぬ疑問が残った。
俺は傷一つなく生きていた。
何も出来なかったのにだ。
絶対的強者が、その辺の石ころを無視するのはまだ分かる。
だが、俺達はその強者に立ち向かった愚かなネズミだ。
それを生かす意味はどこにある……俺達冒険者は、依頼があれば魔物が強かろうが弱かろうが、どんなに相手にまともな理由があろうと斬り伏せる。
そこに疑問なんてなかった。
間違っていたのか?
「アッシュ、俺達は負けたが生きている」
ビルが話しかけてくる。そう、誰も死んでいなかった。俺達も、他の冒険者達も。
不思議と悔しさは無かった。
もちろん全員が生きていた事もあるが、あまりの呆気なさに、現実とは思えない出来事にも思えたからだ。
「あぁ、そうだな。ビル、ミリア、すまなかった」
「何を謝ることがあるんですか? 私達はこうやって強くなって来たのですよ」
「確かにな。最近勝ちすぎて、感覚がおかしくなっていたのかもな」
本当にいい仲間達だ。
俺達はこの敗北を糧に、さらに強くなってみせる。力も心もだ。
「そうだな。俺たちの翼はまだ折れてない。一からやり直しだ!」
「ああ!」
「ええ!」
——ここからの『炎の翼』は、今までの様にただ無慈悲に命を奪う事はなくなる。
さらにこの国と他種族を繋ぐ橋渡しになるなど、一冒険者以上の働きを見せるようになり飛躍して行くのだが、それはまた別の彼らの物語。
【ビブリナ】
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そこは、神の塔。
——最上階『罰の間』。カイルによって急遽作られた、この世界きっての娯楽施設だ。
この罰は、本当に罰になるのでしょうか。
正座をさせられ、四肢が動かせない状態で放置。
小妖精などの見せ物になりながら、時折罵声を浴びせられる。
此方はこの程度の罰では特に何も思わないので、意味は無さそうな気がしましたが……まさかリディアさんがお隣に居るとは、何とも嫌な罰。
因みにリディアさんは、此方よりさらに酷い罰を受けていますが、それは此方の言の葉ではとても表現しづらく、恐ろしい。
しかし、これを良い機会に。
何故あんな事をしたのか、聞かせてもらいます。
「リディアさん、此方の世界に勝手に干渉した理由は?」
口が動かせるのは、最上神様の配慮でしょうか。
「えー、教えてもいいけどぅ。この罰がぁ辛すぎぃて、リディアしんどぉい」
毎度このお子は何故こうも……。
特に辛い様子など臆面にも見せず、よくもまあ。
「リディアさん。わざと言の葉を穢すのは、もうお止めになりなさい。此方にも限界があります」
「……分かったよぉ」
空気が変わる。
「元は最上神様の御命令。簡単に言えば、王様への罰だよ」
なるほど。手際が良いと思いましたが、最上神様が絡んでいるとなると合点がいきます。
「だけど、あの仕掛けは私の独断。最上神様は簡単に言えば『カイルをお前達が使うな。使うなら覚悟しろ』と、言葉は違うけど仰った。それを伝える為に、私をビブリナの世界に遣わせた」
最上神様の威光は、その通りです。
「でもあの王様は、ちゃんと守ったと見せかけて、最上神様の言葉を勝手に捻じ曲げ画策した。たぶん最上神様は細かい事は気にせず受け入れたでしょうけど」
殺気が漏れ出す。
「ユルセナイ、よね……。だから私なりの罰を仕込んだのさぁ」
リディアさん。まともに言の葉を紡げるのなら、此方も幾分気も楽なのに。
しかし、どこまでもこのお子は最上神様に忠実。此方には無いものです。
「理解しました」
カイルが懲らしめた。
あの禍つのドラゴン。
此方の世界で産まれた災害、あのままでしたらダンジョンを食い破り此方の世界は混沌と化した。
これをリディアさんは王に伝えた。
カイルを使わずに自分達だけで処理せよと。
更に、小さきお子が撃破したミノタウロス……あれは禍つのドラゴンの影響で理を無視した成長を遂げていた異数の存在。
これもまた、あのままでしたら世界は無事では済まなかった。
崩壊自体は間引くのを侮ったお子達の末路でしたのに、カイル自身に意図は無くとも此方の世界はカイルに依存した。
神は世界にいるだけで影響を与えるのか。
カイルだからなのか。
結果、王が知る由もなく思惑通り此方の世界は救われた。
「結局さぁ、カイルが世界救っちゃったじゃぁん?それは別にいいよぉ?でも神を筋書きに入れる奴がいたら罰を与えないとねぇ」
……と、なると腑に落ちぬ事が、ほぼ答えは出ておりますが。
「此方を此処へ繋ぐのもリディアさんの思惑ですか?」
ニヤっと顔だけで嫌なお子。
「さぁすがだね!正解。因みにぃ、代わりはロイだよぉ」
あの、お子ですか。
はぁ……此方もまだまだのようです。
今更分かっても後の祭り。
カイル、意味のない謝罪になりますが申し訳なく思います……
くれぐれも気をつけなさい。
その後二人は語る事もなく罰を受け続けた。
【カイル】
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僕たちはダンジョンから離れ街道を城に向かい歩いていた。
「次はどこに行く?」
「あの、先ずは今度こそギルドに行き。登録と何日か日を置いてお城で報奨金を受け取りに行きましょう。」
話を僕の頭の上で聞いていたヒアが話に割り込む。
「何それ?ぎるどって食べられる?美味しい?」
ヒアは何故か燃費が悪すぎて常にお腹が空いている。
ゴネれば食べ物が貰えると味をしめたな。
「硬いけど食べられるのかな?ギルドって素材は何?」
ただ、その発想はなかったので真面目に聞いてみた。
「カイル様……ヒアちゃんギルドは食べ物じゃないですよ?」
何故か呆れられた。
「なぁんだ」と食べ物じゃないと知り飛んでいくヒア。
調子狂うからもう、戻って来なくていいよ。
「ギルドか……アルテルに迷惑掛かるし頑張らないとね。」
「はい!カイル様。」
あれ?そういえば。
「いい加減、様を取ってよ。」
「は、はい。分かりました。」
今回はまぁ、ゆっくり待ちますか。
「か、か、かいる、へぼっふ!」
言葉が終わる前にヒアがアメリアの顔に突撃してきた。
「アメリア!アッチに美味しそうな食べ物が。一緒に来て。」
アメリアは様まで言えなかった事に放心状態みたいだけど、結果的に言えたで良いのかな?
「アメリア、言えたね。今後もそれでよろしく。」
ヒアに引っ張られながら食べ物があると言われた方に行く一人と一匹。
「さて、僕は二人が戻るまで此処で休んでようかな。」
ゆっくり座ると遠くから声がした。
「カイル……さま。行ってきます。」
「アメリア顔赤いよ?とにかくはーやーくー。」
「ひゃ、わかったよーヒアちゃん。」
なんか少しドキッとしたけど、まだ無理そうだね。
さて、次はギルドか……。
あー空が青い。
【ロイ】
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——そこは、ロイが管理している世界のある場所。
他とは少し違い世界からは憎悪が漏れ出ている、あまり小妖精も近づかない所。
「うーん」
多少のデメリットは覚悟したけど、まさかお腹がこんなに空くとはね。
でも中々上手く行った、よく見えるよ。
カイル君は面白いね。
僕も少しやる気出てきたよ。
あまり時間もないから急がないとね。
完成したら遊ぼうか。
ふふ。はぁ……冷める。
2章完
第二章完結!
いかがだったでしょうか!
新たな仲間も入り少しずつカイルの生活も変わって来るかもしれません。
評価など頂けたら喜びます!




