2−11 ダンジョン産
【カイル】
──────────
カイルです。
もちろん、見ていました。
呼ばれたけど、行っていいのかな?
気を遣ってくれているのか、アルテルとアメリアしかいないから、行こうと思えば行けるけど。
いや、今行かないと増えたら嫌だし、行こうか。
——
「やあ、アルテル」
満面の笑みとは、こんな感じの表情を言うのかな?……笑顔眩しい。
「カ、カイル様。来ていただきありがとうございます」
なぜか、アメリアは僕たちを見てモジモジしている。トイレかな?
「ううん、いいよ。
……アメリアも、わざわざありがとね」
急に呼ばれたからか、騎士団の人みたいに胸に拳を置いて背筋を立てるアメリア。
間近で見ると、少し面白い。
「ひゃい。わたしは特に何も」
話がそれそうだったので、僕は申し訳ない気持ちをアルテルに伝えた。
「ごめんね、追放された身で、また迷惑かけたみたいで」
見ていたんで、分かっている。
僕の『しでかし』のせいだ。
仕方なかったんだ……ダンジョン行きたかったし。
「いえ、それは……今はいいのです。
それよりも、ドラゴンの鱗は本当の事でしょうか?」
え……いいの?
よく分からないけど、いいなら良かった。
それにしても、鱗ね。
あんな物……って言ったら、プレゼントしたアメリアに悪いか。
ただの鱗だけど、何か特別な物なのかな?
だったら、プレゼントとしても意味が出るね。
「あれは、アメリアにプレゼントした物だから。
もし必要なら、アメリアに聞いて」
急に声が裏返るアルテル。
「プ、プレゼントぉっ……!?
アメリア、そうなのですか?」
プレゼントに、何でそんな過剰な反応してるの?
ドラゴンの鱗の話はどうなったの。
「は、はい。プレゼントしていただきました。カイル様、もう一度見せてください」
いまだにアルテルは戻って来てないけど、話が戻って良かった。
アメリア、ナイス!
さて、不思議空間からゴニョーンっと。
無駄にデカくて、かさばるドラゴンの鱗を出す。
「はい」
迫力があるのかな?
鱗を見たアルテルは、急に戻って来た。
「な、な、な、何ですか!これはーー」
ほんとやめて……。
ダンジョンの入り口で叫ばないで下さい。人が来ます。
さっそく、アルテルの叫びに何人か来たよ。
あぁ……せっかくの空間が地獄になる。
僕は認識阻害した。
もう慣れたものです。条件反射とも言っていい。
「な、何事ですか!姫様……ぎゃあああああ」
駆けつけた騎士団の人が叫び、その叫びに駆けつけた人が叫び、そのまた………………。
七人くらいまでは耐えました。
でも、止まるどころか、まだまだ増えそうだったので。
僕は、鱗を置いて飛びました。
【アルテル】
──────────
あまりにも大きなドラゴンの鱗。
アメリアの言葉から想像した、十倍くらいの大きさでした。
カイル様が取り出した鱗一枚で、騎士長の背丈以上あるのですが。
この大きさの鱗を持つドラゴンの大きさって、山一つあるのでは?
……それが、ダンジョンに?ありえるの?
目の前が霞んでいく。
…………はっ!
一瞬、気が遠のく所でした。
周りを見ると、いつの間にかダンジョンの入り口が異様な光景になっていた。
わかりますが……ドラゴンの鱗一枚で、屈強な騎士団や冒険者が、こうなってしまうのですね。
あれ?……辺りを見る。
「カイル様?」
カイル様も、いなくなってしまった。
でも、ある意味追放されてる身なので、残念ですが姿を隠されたのは流石です。
「アメリア。
カイル様が貴方へのプレゼントだとおっしゃったけれど、国に持って帰ってもいい?」
「は、はい。もちろんです」
断りづらい聞き方で、ごめんなさい。
もし、この鱗がダンジョン産なら、お父様の懸念に繋がる手がかりになるかもしれません。
「あ、そうだ、姉様。ついでに、もう一つあるのですが、いいですか?」
アメリアはそう言って、ダンジョンの奥に消えていった。
「まだ、何かあるのですね」
カイル様が動くと、必ず何か起こりますね。
それも、常識では考えられない事ばかり。
「騎士長、この鱗を……どうにか人目につかずに運べますか?」
さすがの騎士長ですね。
周りは酷い有り様なのに、鱗を見て叫びはしましたが、もう回復しています。
「流石に難しいかと。ですが、ドラゴンの鱗だと分からずに、なら行けるかと」
「それでお願いします」
「ふぅ……」
これで、お父様に現物を見てもらえる。
——
ズズーズズー
鱗が一息ついた頃。
ダンジョンの奥から、何かを引きずる音が聞こえる。
「姉様ー。手伝ってくださーい」
アメリアが、巨大な角を引きずって来た。
「ア、アメリア……この角は何?」
ドラゴンの鱗を見ていなかったら、危なかった。
「ミノタウロスの角です!」
角です!って……。
そんな無邪気に言えちゃう貴方も、おかしくなってない?
これもまた、騎士長以上ある大きさの角ね。
貴方達は、ダンジョンで何をして来たの?
聞くのが怖いけど……それが私の仕事よね。
「アメリア、この角の持ち主はどのくらいの大きさだった?」
少し考え、思い出したかの様に、とんでもないことを普通に言う、我が妹。
「わたしの四倍くらいかな?」
クラっとする。
「よ、四倍……頭が痛い。まさか、貴方が倒したの?」
自分が何をしたのか、理解していないのか。
笑顔が年相応で、無邪気だ。
「はい!頑張りました」
私は、戦いの細かい所はわからないから、言葉通りを受け取るしかできないけど。
頑張って、できる事なの?
さすが神童と言われただけある。
こないだまで引きこもっていたのに……凄いわね。
「騎士長、ちょっと聞きたいのだけど。貴方は狩れる?」
ドンッ!
ただの質問なので、敬礼はいらないのに。
「は!やれと言われれば、命を賭けて!」
そういう事ではないのですけど。
……命をかけないと難しい、と取るべきね。
問題が、どんどん増えていくような気がします。
今まで、このダンジョンで、こんな事は無かったのに。
今日だけで……
『白い怪物』『ドラゴンの鱗』『ミノタウロスの角』
三つ並んだら、それは偶然ではなさそう。
あ、でも白い怪物はカイル様ね。
だとすると、二つか……偶然?
パチンッ
手を叩く。
そうだわ。この状況で、問題が一つ解決できる。
「アメリア、この角はダンジョン産でいいのよね?」
アメリアの方に目を向けると、妹は角に座っていた。
ギョッとしたけど、これは仕方ない。
物の価値を、あまり勉強しない子だったものね。
「?、はい。このダンジョンの魔物から取った物です」
これなら、自然に二人に褒賞をあげられる。
資金の問題は、私も気になっていたから、よかった。
「アメリア。当面の資金は、今回のダンジョン産二点で、十分大丈夫よ。後で、お城にでも取りに来なさい」
帰りづらいなら、ギルドでもいいけど。
「は、はい。カイル様にも伝えておきます」
大丈夫そう?
なかなか、肝が据わっているわね。
「そうね。カイル様は、お城には入れませんが。今後、お金の問題が解決できれば、健やかに過ごしてもらえそうです」
さて、ミノタウロスの角も運んでもらわないといけないし、今後はお父様との話し合いね。
「貴方達の問題は、私の方で処理しておくわ。ただ、今後はちゃんとギルドを通しなさい」
『白い怪物』は駄目ね。
どうしても、人を思い浮かべてしまう。
ここは、都合よく『悪夢』の噂も流れているみたいですし、そちらを上手く使いましょう。
「ありがとうございます、姉様」
カイル様……結果的にですが。
少しでも会えて、よかった。
この状況を見たら、今の私では、貴方の隣は最初から難しかったのですね。
……強くなります。
少しだけ上を見上げ、名残惜しく感じるが、公務に戻る。
「それでは、私達はもう帰ります。カイル様に、またいずれと伝えておいて下さい」
そして、最後に私はアメリアに抱きつき「頑張ってね」と伝えて、ビブリナのダンジョンを後にした。
【カイル】
──────────
……終わったようだね。
所々、人が多過ぎて見れなかったり、聞けなかったりしたけれど、その辺は後でアメリアに聞こう。
やっと、少しずつ人が減っていく。
外は、もう暗くなって来たなぁ。
とりあえず、アメリアを迎えに行こうかな。
——
「アメリア、お疲れ様」
「ひゃい。あの、姉様のおかげで、色々大丈夫なようです」
みたいだねー。
また迷惑かけちゃったなぁ。
「後、お城に行けば、今回の素材の褒賞金が貰えるみたいなので、後で行って来ますね」
行くのはいいけど……アメリア。
あの橋、渡れるの?
なんなら、飛んで連れて行けるよ!
僕は消えておくけどね。
「それは、後から考えよ。
今日はどうしようか? 汚れとかは大丈夫だけど、お腹は空くよね?」
人が関わると、僕は役に立てないから、せめてご飯くらいは、僕の力で取って来てあげたいなぁ。
「はい。さすがに、今日のご飯はお金がないので難しそうですね。
この辺りで取るとなると、動物のお肉とか、後は果実とかなら取れそうです」
果実って、木の実?
毒が無いものがあるの?
「ちょっと待ってね」
不思議空間から、二種類の木の実を取り出す。
「これは?」
両手にそれぞれ持って、アメリアに差し出す。
まじまじと見るアメリアが、淡々と語る。
「毒ですね。私たち王族は、この手の物は特に教え込まれるので」
なるほど……それでアルテルも詳しいのか。
「僕が前に、ビブリナの森を探したけど、コレしか無かったよ」
少し考え、すぐに答えてくれる。
「この森は、この木の実でいっぱいですよ。
食べられる木の実を探す方が、難しいかも知れません」
ほんと、詳しくてありがたいよ。
「それじゃ、どうしようか」
もじもじするアメリア。
トイレかな?
「あ、あのカイル様、背中に触れてもいいですか?」
急にどうしたの?
……あぁ、アメリアって、頭いいよね。
「いいよ」
アメリアの手が背中に触れる。
さて、(食べられそうな物を見つけたら、教えて)
(はい。任せてください)
僕たちは、意識を飛ばして、俯瞰で探し始めた。
こんなやり方があったなんてね。
無駄かと思う事も、やっておくものだね。
物の価値がわからない僕だけじゃ、無理だった。
使い方次第で、ほんとに幅が広がるなぁ。
(あれも食べられます。あれは、火を通すと美味しいですよ)
アメリアが、どんどん見つけてくれる。
僕一人じゃ、未だに木の実をかじっていただろうなぁ。
これで、今日の二人のご飯は確保できそうだ。
「さて、ご飯を取りに行こうか」
アルテルは出来る子ですよ。
評価など頂けたら喜びます!




