2-10 再会
【カイル】
──────────
「本当に大丈夫?」
「い、行ってきます!」
僕達は転送陣が三つ並んだ場所に戻ってきていた。
ここからアメリアは入口に向かう。
僕は意識を飛ばして、できる限り聞いてみようと思う。
【アメリア】
──────────
わたしはカイル様と別れ、入口に向かう。
騎士団がいる以上、カイル様も出づらいんだろう。
わたしが頑張らねば。
自然と足取りに力が入るのがわかった。
ダンジョンの入口付近にやってきて、すぐ色々な人の入り混じった音が聞こえてきた。
宛ら(さながら)、城下の商店街の様な賑わいだ。
その中から上手く騎士長に会えればいいのですが。
何だかんだ、まだまだ身体は強張る。
外の様子を、人に見つからないように見てみる。
ザワザワ
辺りを見回すが、騎士団の人達が見当たらない。
それにしても凄い人だかりだ。
ここに最初来た時と同じくらいいるかも知れない。
「あの中に入っていくのは難しそう」
知ってる人か、もしくは城の人が居れば……
あ、騎士団の兵士!
見慣れていたせいか、すぐ分かった。
前を通り過ぎようとしている。急がないと。
何か合図が出来れば……石?
石でいけるかな?
いつダンジョンに人がなだれ込んでくるかわからない。やってみよう。
足元の石を拾って、騎士団の人に投げる。
「えい」
カーン
上手く当たった!
驚いてキョロキョロしてる。
「おーい、騎士団のひとー」
他の人達にバレないように小声で呼び、騎士団の人に手招きをする。
すぐに気づいた騎士団の人が、こっちに駆け寄ってきた。
「アメリア様ではありませんか! こんな所になぜ?」
騎士団の人達とは、戦闘訓練やダンジョン探索などで、度々お世話になっていた。
騎士団にも階級があり、目の前の人は全身鎧を着た、なかなか上の人だと思う。
けど、この人……顔は見た事あるが、名前は……。
わかりません。
「お久しぶりです。いきなりで申し訳ありませんが、ここに来た理由は?」
笑顔だった表情が、すぐに仕事の顔になる騎士団の人。
「は! 勅命であります。なのでお話できません!」
礼儀正しく拳を胸に当てる。
今はいらないなぁと思いつつ、勅命……お父様?
「私にも言えない?」
「は! 勅命ですので、すいません」
再度、拳を叩く。
誰がこの規律を作ったのでしょうか。
イラっとする。
「同じですね……もういいです。騎士長は今日は来ていますか?」
「は! すぐに呼んで来ます!」
ガシャンガシャン
あの格好なのに、すごい速さで駆けていく。
騎士団は本当に、融通が利かない脳筋の集まりです。
国に命をかける、聞こえはいいですが、毎回会話の固定が辛い。
命令を受けていると特にそう。
人形と会話をしているみたい。
……すぐに騎士長がやって来た。
「アメリア様! お元気そうでなによりです」
目が潤んでる……。
喜んでもらえて嬉しいですが、今はいいです。
「騎士長。ここに来た理由を話しなさい」
ドン!
「は! 勅命です」
さすがの騎士長。
胸に拳も、他とは威力が違います。
って、そうじゃない!
「同じ! 貴方達は何でいつもそうなのですか!」
時間をかけて騎士長まで呼んだのに、勅命しかわからなかった。
「は! いつもの事であります!」
それなりに、わたしは騎士長とは仲が良かった方だった。
なのに、何なの!
未だに子供扱い? 馬鹿にして。
「埒があかないですね。アンかセバスは来てますか?」
騎士団は無理だ。
来ていないと思うけど、聞いてみる。
「は! どちらも今回は来ていません。が、アルテル様がいらっしゃってます」
ね、姉様が?
何でそれを言わないの。
融通の利かない騎士長に、苛立ちが募り。
「呼んで来なさい!」
口にしてハッとする。
少し言いすぎた……。
「は! アメリア様、お変わりなくて嬉しく思います」
そう言って、姉様を探しに行った。
……そう、昔のわたしってそうだったの?
それを喜ぶ騎士長も騎士長だけど、少し悲しくなった。
入れ替わりが凄いけど、すぐに姉様が来た。
「アメリア!」
あの時以来の姉様。
随分会ってない感覚だけど、まだ一日も経ってない。
その事が頭をよぎり、今更、複雑な思いが頭を支配する。
「姉様! 何故ここに?」
再会を喜ぶわけでもなく……。
咄嗟に出た言葉は、変な質問になってしまった。
「それは、こっちが聞きたいわ」
確かにそうです。
わたしの質問に、特に気にする様子はなかった。
先ずは、こっちの話からしないと。
「わたし達は、ダンジョンの攻略に来ました。ただ……」
不法探索です。
とは、言いづらいので、間が空いてしまう。
「ただ?……まぁ、いいです。攻略にですか」
姉様はチラチラ後ろを気にしたりしていますが、カイル様は通報された身。
今は会いづらいと思いますよ?
「姉様、カイル様を連れて来ましょうか?」
それでも、思う所はあるので、気を利かせた。
「え? い、いえ。大丈夫です……見当たらないなぁと思っただけです」
やっぱり気になっているのに断る。
そういう所ですよ、姉様。
でも、姉様がそれでいいのなら、話を進めます。
「……姉様達は何故、こんな大勢でダンジョンに? ギルド経由の冒険者も、姉様達がらみですよね?」
わたしの言葉に、少し驚いてる。
それもそうかな?
カイル様がある程度情報を持っていたから……きっと今も、この会話を聞いてらっしゃるんだ。
「どうしてそこまで? 騎士団は多分喋らないわね……まさか、カイル様?」
当然、気づきますよね。
「はい、ある程度知っているようです」
わたしの言葉に、姉様が固まる。
どうしたのかな?
顔の前で手を振ったり、頬っぺたをツンツンしてみたりしたけど、動かない。
「おーい、ねえさまー」
「一つ聞いていい? 白い怪物って知ってる?」
突然、真剣な顔になり、何を言い出すのだろう。
「白い怪物? 知らないですよ。それが今回の事と関係が?」
「それはわかりません。私も直接、お父様から聞いたわけではないのです」
少し表情が曇る姉様が、続ける。
「ただ、この国に何かが起きようとしているのは確実です」
白い怪物……。
白いで思いつくのはカイル様だけど、怪物ではない。
でも、よく考えると、どうやって私達はダンジョンに入れたのでしょう。
……何だか聞くのが怖いですが、聞いてみないと。
「あの、姉様。その怪物は、いつ頃出たんですか?」
わたしの問いに、考えながら話し始める。
「そうね、えっと……確か黄九の青六。ここのダンジョンの受付が始まった頃だったと思うわ」
あぁ、その頃は、まさに……カイル様。
これは伝えるべき? それとも……。
いえ、ここで偽ると確実にこじれる。
伝えるべきですね。
「姉様、私達は今日の受付を受けずに、ダンジョンに入りました」
無理もないですが、ポカーンとしていますね。
考え込んだと思ったら、頭を抱え出しました。
「えっと、カイル様?」
私は無言で頷く。
「そうですか……これは預かります。因みにですが、ダンジョン内で何かありました?」
何か?
とは、どういった事だろう……。
あ、あれは出しても大丈夫でしょうか?
って、今は持って来てなかった。
ここまで来たら、隠さず伝えた方が良さそう。
驚くでしょうが……物もそうだけど、あの大きさに。
「ね、姉様。あの、カイル様が物凄く大きいドラゴンの鱗を持ってました」
姉様の表情が、驚く前で固まった。
まぁ、固まりますよね。
わたしは見て、気絶しました。
「——これは、まさかの今日の今日で会わなければいけなくなるとは思いませんでした。あれだけ覚悟したのに……アメリア! カイル様を呼べますか?」
言葉とは裏腹に、顔が綻んでますよ?
今も見ていると思うんで、呼べば来てくれると思うんですけど、どうなんでしょう。
「カイル様ー!」
叫んでみたけど、来てくれるかな?
近くにいると思ったのか、姉様はすぐにカイル様が来ると思い、人払いをしだした。
まだ、一日経ってないとはね!
書いててびっくりしたよ。
評価など頂けたら喜びます!




