2-9 努力の先
【カイル】
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入り口付近にいると人が来るかも知れないので、上級の中間地点みたいな所にいる。
感覚が他と違ったので、魔物を使って確かめてみたが、結界を張らなくてもここには魔物は来ないらしい。
敵に気を張らなくていいので、そのあたりは楽なのかも知れない。
色々あったので、なるべく油断はしたくない。
ここに居れば完璧だ。
手持ち無沙汰の僕は、ちょっと実験的に入り口に意識を飛ばす。
相変わらず、人が多いな。
人の量で気分が悪くなる中、音に意識を集中する。
「お……も……ち…」
「はぁはぁ」
……限界だ。
おもち、美味しそうな響きだ。
実験は成功したけど、これは僕には無理だ。
身体中から水が出てくる。
でも、諦めない。
アメリアが起きるまでは続けようか、僕の無駄な努力を!
意識を飛ばして、失いかけてを繰り返す事、数回目。
「ぜぇぜぇ……」
最初の僕は何をやってたんだ。
固定概念って、やっぱりあるよね。
これ、見なくていいじゃん……。
意識を飛ばして、人を意識から消し、音だけをクリアーにする。
……するとどうだろう。
「本当に怪物がここに出たんだな?」
声だけでも嫌悪感はあるが、見ながらより全然聞ける。
魔物の相手ばかりしていたからすっかり忘れてたけど、最初にこの世界に来た時にやっていた事の応用だね。
さて、そうとわかれば情報収集しておこう。
……色々な声が入ってきて辛いけど、選別しないと。
「白い怪物です」……来たね。
これ、やっぱり僕の事だよね。
あの時の事は、ほんと悪いとは思うんだけど。
こんなに押し寄せなくてもいいのでは?
恐怖だけでも大事になっちゃうのかな。
「これは、まだ噂だが、ギルドの上が騒いでいる案件があるらしい」
なんか、それっぽい気になる情報が聞こえた。
……これも関係あるのかな?
「城が躍起になって強者を募っている事に、ギルドも関与してるってな」
城って王様?
何でだろ。
「俺の仲間も何人か声が掛かったってよ」
……だめだ。
まだ続き聞きたいけど、余裕を持ってやめよう。
「ふぅ」
とにかく、王様が何かあるので強者を集めていると。
少なくとも、それに白い怪物は関わってないのは確定だよ。
無駄だけど、否定しておいた。
「ドラゴン!」
え?
急な声に振り向くと、アメリアがガバッと起き出した。
キョロキョロしてる。
あ、僕を見て真っ赤になってる。
「アメリア、おはよう」
「ひゃい。あ、あの、おはようございます」
うん。
俯いて顔赤いけど、元気そうでよかった。
……アメリアも起きた事だし、入り口の話をしよう。
——
「わ、わたしが行きます」
即答に、いい思い出ないのに。
「無理はよくないよ?」
「だ、大丈夫です」
んー。
やる気があるのは僕にとっても嬉しい事なんだけど。
仕方ない。
もう一つ、やりたかった事を試してみよう。
「僕の背中に、手を置いてみて」
「て、手ですか? いいんですか?」
アメリアの言葉を待って、背中を向けた。
「いいよ」
……ん?
いくら待っても、手が来ない。
「アメリア?」
振り向いたら、飛び跳ねた。
大丈夫かな?
「ひゃい、ごめんなさい。緊張します……」
なぜに!
緊張とか言われると、伝染するんですが!
もう一度、背を向ける。
意識しすぎて、ゾワゾワしてくる。
「ひゃっ」
急にアメリアの手が、僕の背中に触れて、変な声が出てしまった。
「ご、ごめんなさい」
謝らなくていいさ。
面白い経験だった。
「いいよ」
さて、行きますか。
……アメリアの意識を、僕と繋げて。
(聞こえる?)
「ぴゃ! え、カイル様?」
(おっ、成功したね。言葉を念じてみて)
(は、はい。ど、どうですか?)
さすがだなぁ。
この辺の飲み込みが早すぎるよね。
(聞こえるよ。それじゃ、このまま……)
僕はアメリアを連れて、意識を飛ばした。
本当は嫌だけど、先ずは一緒に確認しないと。
(あ、あめりあ……見えるかい?)
今まで以上に、悪寒がのしかかってくる。
(ひ……みえ…ます)
これは辛い……。
繋がっているからか、ダブルでクル。
これはダメだ。
すぐに戻した。
二人とも真っ青で、項垂れた。
「ごめん、コレは無理だね」
「い、いえ、もう一度お願いできますか?」
なぜ、やる気?
凄いけど……もしかして僕だけダメだったとか?
んー、試してみる価値はあるか。
「なら、もう一度行くよ」
「はい!」
アメリアが背中に手を乗せる。
今度は僕だけ見ないように。
一度試したから、要領は大丈夫だろうしね。
意識を飛ばす。
……あれ。
不快感がさっきより少ないどころか、全然ない。
僕のせいかー。
ある意味複雑だけど、なんか良かった。
(どう?)
(はい、よく見えます)
おお!
これはアメリア、克服できたのかな?
(あ、わたしの知ってる人が数人います)
(朗報だねー。行けそう?)
(待って下さい。お城の騎士団も来ました)
(え?)
増えたよ。
でも騎士団なら、アメリアの身内だし、いい方向に傾いた?
(あ、騎士長! 行けそうです)
お、いい方向かな?
(良かった。なら一度、戻って入り口を頼んでもいいかな?)
(はい!)
「ふぅ」
便利かも知れない、この力。
「おかげで、望みが出てきたよ」
「い、いえ。お役に立てるなら、頑張りまひゅ」
噛んだね。
「はい」と僕は右手を出した。
一瞬迷って、すぐアメリアが掴む。
僕達は、入り口に向けて飛んだ。
無駄な事でも、やっておくと何かの役に立つ。
……事もある
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