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元社畜神様はコミュ症すぎて異世界でも逃げ出したい  作者: 片白
2章 ダンジョン編

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2-6 八つ当たり



【アメリア】

──────────


……どれくらい戦っただろう。


 息は上がり、剣を握った右手は震えている。

 身体中に痛みが走る。

 視界も歪む。


 もうボロボロだけど、絶望的な状況から手負いと、もう一匹を倒してやった。


 だけど、もちろん無傷とはいかなかった。

 徐々に体力を削られ、かすり傷も増えていった。

 体力と怪我はどうにもならない。増えれば増えるほど動きが鈍くなる。


 二匹目を倒した段階で、もう限界に来てしまった。


「はぁ、はぁ」


 震えが止まったと思ったら、右手に力が入らない。

 目の前で唸っている、残り二体のワーウルフも、この状況は想定外だったのだろう。


 わたしがこんな状態なのに警戒している。

 でも、所詮、獣。

 もうそれも時間の問題だろう。


……笑みがこぼれる。


「ワオオォン」


 ワーウルフが痺れを切らしたのか、二体が時間差で向かってきた。

 一体は前方から、もう一体は視界から消えた。


……多分、死角から来る。


 わたしは最後の力を振り絞り、前から来る一体の方を見据え、剣を左手に持ち替えた。

 それだけで全身に痛みが走る。


 当然、時間の流れが遅く感じる。

 痛みでおかしくなったのだろうか。


……相手の攻撃の流れが見える。


 弱者を狩る為の、単調になった攻撃。

 これなら最小限で避けられる。


「ガァァア」


 見えた流れに逆らわず、わたしは身を任せた。

 身体が無意識に動く。

 不思議と痛みはない。


 左手に握った剣を前に置き、踏ん張る。

 迫り来るワーウルフの一撃を、紙一重で交わした。


ザシュ


 凄い……わたしは、ただ剣を魔物の顔付近に向けて待つだけで良かった。

 勢いよく突っ込んできた敵は、自らで勝手に自滅する。


 綺麗にカウンターが決まり、一体の頭を一突きにする。


「はは……」


……こんな世界があるなんて思わなかった。


 もう一体!と思い、身体を動かそうとした。


「ぐぁ……」


 今まで消えていた感覚が急に戻って来て、全身が千切れそうな痛みに襲われる。

 わたしは魔物の頭に刺さった剣を抜く力さえなくなり、その場に座り込んだ。


 後ろから、もう一体が向かってくる気配がするけど、もう振り向く力もない。


 こんな激しい戦いの最中なのに、音が消えた。

 もう何も聞こえない。


「見せたかった……」


 誰にかはわからない。声が出たかもわからない。

 ただ、自然と呟いた。


 わたしは、死を覚悟しながら長い刹那の中。


……カイル……。


……意識を手放した。



【カイル】

──────────


 ギリギリだった。


 飛んだ瞬間、急に頭になにかぶつかったと思ったら、

 目の前にうずくまるアメリアと、頭に剣の刺さった人形の犬みたいな魔物の死体。


 衝撃があった方を見ると、生きた犬の魔物が一体。

 状況を考えるまでもなく、アメリアが戦ったのがわかる。


 すぐに確認して、生きていることに安堵したが、

 危険な状態は変わりないので、駆け寄って身体中の傷を治した。


 だが、体力だけはどうしようもないので、そのまま木陰に運んで横に寝かせる。


………ゆっくりお休み。


 さて、これで一安心かな。


 立ち上がり、落ち着いてみると怒りが湧いてくる。

 もちろん大半が、不甲斐ない僕にだ。


 何が、『上級でも僕と一緒なら安心』だよ。


 さっきから僕に絶賛攻撃中の犬の魔物に、多少キレ気味の僕は八つ当たりした。


「うるさいよ」


パンッ


 手を横に払っただけで、魔物は消し飛ぶ。


 足らなかった。


 索敵で周りを確認する。

……すぐに魔物の群れが見つかる。


「あそこが多いな、嬉しいよ」


 今度こそ、僕がいれば安心だが、二度同じ間違いはしない。

 過剰だろうが、アメリアに四重くらい結界を張っておいた。


 さて、準備は整った。


 八つ当たりの始まりだ。



【魔物】

──────────


 ワレワレは、このダンジョンでデカくなった。

 モハヤ、テキは外の世界だけだ。


 スグニデモ、このダンジョンから出て、世界を蹂躙シテヤル。

 ワガチカラがあれば、ワレワレは無敵だ。


………む、なんだアイツは。


 真っ白いソイツは、突然目の前にいた。


「イツカラいた?」


 まぁイイ。ワレワレの前に現れたことが不運だと思え。


「ガアアアアアアアッ」


 お前達、狩りの時間だ。

 目の前の小物を食ったら、表に出るぞ!


 ワガ子達よ、競え。狩りを楽しめ。

 肉を覚えろ。外には大量に溢れているぞ。


 グハハハハ、ワガ子達が白いヤツに群がっていく。

 過剰な力だが、どんな時でもワレワレは全力だ。


 滅ぶがイイ、弱者よ。


ゴガーン!


 急に光が爆発したと思ったら、何故ワガ子達が吹き飛んでおるのだ?


「オカシイ」


 魔力を感じぬのに、ナニヲしている?


ボチャ、ボチャ、グチャ。


 次々と打ち上げられたワガ子達が、空から落ちてくる。


「ユルサヌ」


 お前達、行け。

 ワガ子の中でも精鋭。今までの子達とは格がチガウゾ。

 その無駄な足掻きを、後悔セヨ。


 ワガ命令で、すぐに飛び出していく。

……従順な子達ヨ。


ズガガーン


 突撃により、凄まじい爆風が舞う……オワリダ。


ベチャ


 同じ様に降ってくる。


 な、ナンダト。

 我が精鋭をもってしても、何も変わらぬだと?


「ガアアアアアアアッ」


 モウイイ。ワレ自ら滅ぼす。


 好き勝手やってくれたな……ワガ怒りを受けよ。


 大きく口を開き、エネルギーを溜め込む。

 森全体が揺れる。

 風が吹き荒れ、口の中にダンジョン内の魔素が集まり出す。


——チレ。


 その異様な力で放たれた熱光線が、敵は勿論、未だ残る味方もろとも、お構い無しに飛んでいく。


………………カッ!


 その威力は膨大で、音すらも置き去りにした一筋の光が、放たれた方向全てを消し飛ばした。


ドォォォォォン!!


 遥か彼方で爆音がする。


 やはりワレは最強だ。

 ワガ子達など、減ったのならば、また増やせば良い。

 ワガチカラに抗う事など、この世の生物にはできん。


 まばゆい光が収まり、えぐれた大地が露わになってくる。

 その光景を見て歓喜する。


「グハハハハハ…………ハ?」


 収まる光の先に、白い物体の姿が見えてくる。

 我、目を疑うように、眼前の光景を素直に判断できなくなった。


「アリエン」

 な、なぜ存在が残っている?


 ワレを見たソイツが、笑ったと思った瞬間。


……ワレの意識は、無くなった。


 人知れず、魔物の群れはこの世から消え去った。



【カイル】

──────────


 すごい沢山、羽の生えたトカゲがいたなぁ。

 あれ、『ドラゴン』ってヤツだっけ?

 急に群がって来たけど、交戦的な種族なんだね。


 まぁ、結果的に正当防衛だけど、少しはスッキリしたよ。


 あれだけ居たドラゴンの群れが、一際デカいドラゴンの一撃で、全て消し飛んだ。


 首の無いドラゴンと、光線が通っていき、見る影も無い森だった景色を見る。


 こいつは、何がしたかったんだ?

 この現状のせいなのか、八つ当たりだというのに、不思議と罪悪感は生まれなかったよ。


 記念に鱗を持って帰ろうかな。

 謝罪とは違うけど、アメリアにあげよう。


 もう一度、周りを見渡し、他に何も無いのを確認して、僕は戻った。


——


……戻ってみると、アメリアはまだ眠っていた。


 結局、初めてのダンジョンは、いい思い出にはならなそうで残念だ。


 アメリアが起きたらどうしよう。

 もうダンジョンは……嫌だろうなぁ。


 起きたとき、安心してもらうためにも、今のうちにいい所があるか回ってみようかな?


 少しでも、いい思い出にしてあげたいなぁ。


 僕はアメリアが起きるまで、ダンジョン内を探索することにした。




短いですが、初めての戦闘!

上手く表現出来ていたら嬉しい。


そして、可哀想なトカゲ。


評価など頂けたら喜びます!



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