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元社畜神様はコミュ症すぎて異世界でも逃げ出したい  作者: 片白
2章 ダンジョン編

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2-5 孤独な戦い



【アメリア】

──────────


 はぁ、はぁ……


 中級のダンジョンと違い、上級がまさか自然ダンジョンだとは思わなかった。

 中級は正に迷路みたいな所だったが、通路が広く、常に前方だけを気をつけていれば良い、比較的わたしには合っていた場所だった。


 だが上級は、ビブリナの森と同じ様な場所だ。

 とにかく死角が多い。常に全面を意識して進むだけで進行速度が遅くなる。


……ソロで攻略できる所じゃなかった。


 これは予想以上にまずいです。


 単体ならまだしも、複数に囲まれたら……


——久しぶりの戦闘が、最初から今まで戦ったことのない強さの魔物。


 一体目は少し手間取ったが、杞憂に終わる。

 二、三体と苦戦はしたが、一体目よりは難なく倒せた。「これならいける」と思ったが、考えが甘かった。


 二体同時に相手にした時、痛感した。

 たまたま二体同時に視界に入っていたから良かったものの、左右、または前後で来られたら、無傷で突破するのは無理だ。


 わたしの武器は長剣。森の戦闘はあまり適さない。

 なるべく広い場所を目標に敵を誘導して戦うのが理想だ。


 だけど、この死角のせいで、下手に敵を誘導すると挟まれる恐れも出てくる。


 恐怖に支配されそうな心を奮い立たせ、あてもない中間地点を探す。


……あれからどれくらい歩いただろう。


 すでに迷子状態だ。


 二体同時に相手をしてから、複数をなるべく避けるようになった。

 森の戦いの経験値が少なすぎる。


 しかも今回はソロだ。

 とにかく騎士長や他の人達から聞いた情報を思い出しながら進むしかなかった。


「……ちゃんと勉強しておくべきでした」


 三度目の同じ目印を見て呟く。


 ぐるぐる回っている。

 もうどっちが帰り道かも分からない。


 迷路などは目印を付けながらマッピングすると教わった。

 森でも通用するかと思ったけど、結果的に目印を付けた場所が増えすぎて、どの位置か判断しづらくなる状態に陥っている。


 敵を避けながらこの状況。疲労も増えてきた……どうしよう。


ガサッ

ガサガサッ


「!?」


 疲れからか、二方向からの敵に気づかず、かなり近づかれた。

 このまま近づかれたら完全に挟まれる……。


 わたしは挟まれる最悪な状況だけは避けるべく、二体を前方に入れられる位置を探すために移動しようとした、その時。


「……うそ」


 さらに前方からも魔物が迫ってきた。

 目視できる相手はワーウルフ。すでに二度は倒している。

 ウルフ種は鼻がいい。目視出来る時点で、向こうには完全にバレている。


 どうする。多分、横の二体も……

 考えとは裏腹に、すぐに前方に向かって走り出す。


 他の二体に完全に合流される前に一匹殺る。

 思いっきり首を目掛けて振り上げる。


バシュッ!


 手応えはあった。

 わたしの刃は綺麗に首を両断したかの様に思えたが、腕一本に止まる。


「くそっ、反応された」


 間髪入れずに二撃目に動こうとした、その時。


「ゔをぉぉぉおおおおん!」


 しまった……叫ばれた。

 すぐに魔物を視界に入れながら後ろに飛ぶ。


 声を聞きつけたのか、前方から同じワーウルフが二体姿を表す。


 やっぱり群れ……一番恐れていた事が起こった。


 幸か不幸か、攻撃した事で、わたしの前方に三体。

 まだ囲まれてはいない。

 だが、一体は手負いだが、分が悪すぎる。


 せめて初手で仕留めきれていればと悔しがるが、後の祭りだ。


 逃げるしかない。


 すぐに後方に走り出そうと後ろを向くと。


ガサッ


 四体目のワーウルフが姿を現した。


「ははは……」


 作られたような絶望に、渇いた笑みが漏れた。

……これで逃げられなくなった。


 覚悟を決めるしかなかった。

 だが、無理に突っ込まない……冷静になって、一匹でも道連れにしてやる。


 わたしは静かに集中した。



【ビブリナ】

──────────


 リディアさんの仕業ですね。


 異変にはすぐに気がつきました。

 此方こなたの管理世界に細工などすれば、すぐに明るみに出るのは、流石のリディアさんでも分かる筈。


 ……しかし。


 此方が観測を解いた刹那せつなを突き、転移の法陣に細工を施すとは。

 呆気なく身を引いたのは、この為でしたのね。


……流石と言うべきなのでしょう。


 すぐに管理対象をダンジョンに戻し、リディアさんの細工した転移魔法陣にスクロールする。


……この様なバグ、此方に掛かれば容易い。


——静かに、リディアさんののこした細工を解きほぐしていく。


 なれど、これに何の意味がございましょう。

 いたずらに此方の憤怒ふんぬを買うだけだというに……。真に、愚かなお子。


 音の少ない世界が、更に静まり返る。


……其方の行い、最早万死に値する。


 掲げた手から溢れた、どす黒い靄が、毒蛇のように地面へと消えていく。


「反省なさい」


……此方も不徳の罰を受けますが、甘んじてこの身に受けましょう。


 カイル、此度は此方の責任。


……償いは、何れの時に。


 遠く、世界の彼方で、リディアの悲鳴が聞こえた。



【カイル】

──────────


 やった、やってやったぞ!


 僕は気がついた。

 アメリアの言っていた言葉、『転移陣はダンジョンの罠の一種です』。そう、この「罠」という言葉の部分に。


 僕には罠の類は効かない。


 そもそも、毒も呪いも効果がないはずだ。

 毒が効かなかったのは、もう実験済みだし、その流れで「罠」も無効化していたから、転移陣が反応しなかったんだな。


 そこで、どこに飛ばされたかも分からないアメリアを索敵で探すより、自分にかかっている「罠無効」を無理やり解除してやろうと思いついた。


 自分自身との、長く苦しい精神的な戦い……


 上で睡眠無効を解除した時と、似た様な要領だ。

 簡単に言えば、網を破るみたいなもの。

 毒で言えば、体内に入っても網があるおかげで毒だけが弾かれる。その要領で、罠を弾く網を破る。


 だけど、ただ切っただけじゃダメだ。完膚なきまでに叩き破る。

 それがまた難しい。すぐ元に戻るからだ。


 どのくらい破れば効果が切れるのかの調整が難しかった。

 やり過ぎると、他にも影響が出る恐れもある。

 慎重にやりながら、時に大胆に破り……


 そしてようやく、僕は自分を守っていた「罠無効」を打ち破ったんだ!


 もはや、こんな喜びに浸っている時間も惜しい。早速、乗ってみよう。


 僕はドキドキしながら、アメリアが消えた転移陣に足を踏み入れた。


 足元が輝き、青白い光が僕を包み込む。


 成功だ!


「待っててね、アメリア!」


——


 光が収まっていく。


 へぇ、なるほどね。光以外は、僕達の転移とさほど変わらないのか。


「あっけないものだね」


 さて、ここは………。索敵してみると、遠っ。どこまで飛ばされたんだ?


 これは索敵しても意味がないよ。

 罠無効を破って、無理やり飛んできてよかった。


……あぁ、せっかく破ったけど、もう戻ってる無敵な罠無効。


 それは、まぁいいや。

 アメリアは……って、なんであんなところに?


 でも、場所はわかった。


 すぐに行こう。


 僕はアメリアの所に飛んだ。




カイルも頑張っているよ!


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