2-4 離れ離れ
【カイル】
──────────
「おぉー。転送陣なんてあるんだ」
「はい。ダンジョンの罠の一種です。
もし、この罠を地上でも実現できれば、長距離の問題も一気に解決できるのですが。」
確かになぁ。
自分で飛べる僕はあまり気にしなかったが……行った事のない所には行けない。
ただ、王様の件で、壁の向こうなど見えなくても、索敵で状況が分かれば条件付きだけど飛べることがわかった。
見て楽しみたい僕には、あまり使わなそうな利点だけどね。
僕達は、人工的な二メモリ十分くらいの長い通路を通って、突き当たりの大きな扉を入る。
正方形の部屋に、三つ並んだ転送陣が設置されている場所に着いた。
さて、目の前の、いかにもな三つの転送陣。
アメリアに聞いたときにはワクワクしたが、無造作に並んでいるのはガッカリだよ。
左から初級、中級、上級。
見た瞬間……えー、ってなるよね。
これなら、〇〇の試練とか欲しかった………。
もう、楽しみが薄れたので、どれでもいいかな。
「アメリア、君が選んで」
彼女に任せよう。
「ひぁい。わ、わかりました」
なんか、久しぶりに聞いたような……
よくわからないタイミングで来るね。
「そ、それでは………上級でお願いします」
え、なかなか冒険するね。
嫌いじゃないけど、大丈夫かな?
「上級は、どのくらいの強さなの?」
前にも聞いたけど、三つの難易度がある以上、ちゃんと聞いておかないとね。
「外の魔物と同じくらいです」
なるほど。
外にも上級の魔物はいるのか。
なら、僕がいれば大丈夫だね。
アメリアのやる気が凄いし、ここは尊重しよう。
「わかった。行こう」
「はい!」
と、そのままアメリアが先に転送陣に入っていく。
アメリアが中心に立つと、魔法陣が光りだし、青白く溢れ出す。
そのまま中心にいるアメリアを包み込んだと思ったら、光と共に消えた。
「凄いけど、派手だねぇ」
僕達の使う転移は、光なんて起こらないけどなぁ。不思議。
さて、なぜか先に行っちゃったけど、転送する所が見られて、結果は良かったかな。
でも……転送先は上級みたいだし、何が起こるかわからないから、僕も早く入らないとね。
いやぁ、いざ入ろうとするとドキドキする。
いい緊張感を持ちながら、僕は転送陣の中央に立った。
「…………………飛ばないじゃん!」
転送陣は、うんともすんとも言わなかった。
【アメリア】
──────────
上級。
わたしが引きこもる前に、このビブリナのダンジョンは何度か来たことがある。
戦うのが好きなわたしは、中級攻略も中盤ほどまでは完璧にこなしていた。
わたしは一人でも行ってみたかったけど、立場上それは出来なかったので、条件付きではあったが、中級をそこまで難しいとは思わなかった。
そんなわたしの戦いを見て、騎士長にも
『次は上級で腕試しもいいですな!』
と、言われたほどだ。
きっと行ける。
だから少し嘘をついた。
まだ一度も戦った事のない上級の魔物を、森の魔物と同じだと。
でも、きっとやれる。
今まで何もできなかったわたしを、ここで変えるんだ!
逸る気持ちを抑えきれず、一言も確認せずに転送陣に乗った。
——
初めての場所だと言うのに、あっさり辿り着く。
すぐに転送陣から離れる。乗っていると、次が発動しないからだ。
「あっけないものです」
中級と同じ様な空間に辿り着く。
そこは入り口とは違い、小さな神殿みたいな場所で、中心が少し競り上がり、そこに転送陣がある。
六角の柱が周りを囲み、目の前に大きめの扉。
周りには、青白い光のクリスタルが明るく照らしている為、視界はかなり見やすくなっている。
カイル様も、すぐに来るはず。
それまでは、気をつけないと。
……おかしい。一向に来ない。
あれから、結構時間も経つ。
向こうで、なにかあった?
わたしは、急いで転送陣に戻った。
「え?………起動しない」
どうしよう。
あれだけ覚悟したのに、一人になると途端に不安が押し寄せる。
わたしは結局、弱い人間だ。
……いや、もう足手まといは嫌だ。
落ち込みそうな自分を奮い立たせる。
カイル様になにかあったのなら、転送陣が使えない、ここで止まっていても意味がない。
ダンジョンには、いくつか中間地点という休める場所がある。
そこには、脱出用の転移陣までついている。
……まずは、最速でそこを目指す!
「行こう」
わたしに、待つという選択は、もはやなかった。
扉を開け、しっかりダンジョンの先を見据え、足を進み始める。
【カイル】
──────────
僕は、悲しんだ。
まさか起動しないとは。
楽しみにしていたのに。
この落胆は大きい。
転移先は、多分安全だと思う。
転移先で、魔物の大群とかはないだろう。
ただ、どれもこれも希望的観測。
すぐに対処しないのは愚かだ。
僕は、足元の転送陣を見ながら考えた。
……まぁ、飛ぶしかないよね。
早速、索敵で探すことになるとは思わなかったよ。
僕の転移で、アメリアの所まで行きたいんだけど。
………あれ?
どこまで飛んだの?
どれだけ探しても、全然見つからない。
嘘だ……。
急に焦りが襲ってくる。
全身から、大量の水が流れ出してきた。やばい。
落ち着け。
出来ることは、試しておこう。
真ん中の中級、左の初級……。
全部試してみたけれど、結局何も起きなかった。
絶望感が押し寄せる。
アメリアは、大丈夫だろうか。
僕も頑張るから、君も負けるな。
……僕は、どこかで未だ楽観視していた。
すんなりとは行かないです。
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