2-3 謎の監視者
【カイル】
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入って早々トラブルが起きた。
……誰かに見られている。
気がついたのは、ついさっきアメリアからダンジョン内部の話を聞いていた時だ。
——
ギルドが管理しているという、ビブリナのダンジョン。
この世界は、大体がギルド管理になっているらしい。
例外は、まだ見ぬダンジョン。
国の法で申告は必須。
最初に見つけた者に、最優先で探索できる権利が貰えるらしい。
力があれば、根こそぎ持って行ける特典。
ただ、法で縛ってもしっかりとギルドに申告をするかは、見つけた者次第。
それもそうだろう。
教えなければ、入り放題なのだから。
だが、此処に落とし穴がある。
結局の所、
冒険者はギルドに管理されている。
新しい素材、宝、採取物などは、どこから取れるかは、ほぼ全てギルドを通して世の中に流れる。
そんな中、新しいダンジョンに申告もせずに入り続けると、どうなるだろう。
ギルドに、ダンジョン産のアイテムなどを捌きづらくなるのだ。
他のダンジョン産と誤魔化せばいいと思うじゃないですか。
——それが今回の問題。
「つまり、ダンジョンの入り口にいた?
受付の人に、ダンジョン証明を貰わないと、このダンジョンで手に入れたアイテムは売れないと?」
いた?……覚えてないよ。
「はい、説明できなくてごめんなさい。
何も分からずに、ここまで来てしまったので。」
完全に僕のせいだよね。
……だから、あんなに人で溢れていたのか。
順番待ち……響きが恐ろしい。
「でも、僕たち、証明書を持っていたとしても、ギルドに登録してないよ?
それでも大丈夫なの?」
「はい、多少査定で引かれますが、登録していなくても捌けますよ。」
なるほど。
あれ?でも、まだ疑問がある。
「なら、外の魔物の素材はどうなるの?」
「えっと、外の魔物は元々ダンジョンから溢れた魔物なんです。
その魔物を外で倒して素材を売りたいなら、ギルドで依頼を受注しないといけません。
なので、倒しても捌けないです」
何とも、厳しい世の中だ。
「他にも……」
その時だ。
アメリアが話している最中なのに違和感に思考が持っていかれる。
「?」
……どこかは分からないが、見られている。
小さな声も聞こえた。
振り返っても、索敵にも近くには誰もいない。
「どうしたのですか?」
アメリアが、僕の突然の行動に心配している。
伝えた方がいいのかな?
いや、殺気もないから、余計な心配をかけるのもなぁ。
「大丈夫だよ。
でさ、アイテムとかは諦める?
お金がなくても、その辺の……木の実」
あ、聞いておかないと。
もしかしたら、アルテルが例外だったかもしれない。
「アメリアは、毒、食べられる?」
「!?……無理ですよ?」
そうなのか。
食事どうしよう。
僕は平気だけど、アメリアは毒無理だし。
自慢じゃ無いが、僕は無一文だ。
「!?」
まただ……見られてる。
今回ので、はっきりした。
………しかも、二人いる。
【ビブリナ】
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「あひゃひゃひゃひゃ」
「面白すぎる。笑い死ぬ、ひゃひゃ」
リディアさんは映像を観ながら、空中で笑い転げている。
……此方の仕事の邪魔をしないで欲しいですね。
「五月蝿いですよ……リディアさん」
「だぁって、あぁんな方法でダンジョン入る奴、見た事なくなぁい?
それに毒……毒、食べる?って……言葉に殺される……あひゃっ」
確かに此方も、其処は同意せざるを得ぬが、
お子の言の葉は、笑いながら話されると、もう訳がわからぬ。
「いつまで此処に居るつもりですか?
貴方の管理階層は、此処では無いはずです。」
「いぃじぁゃん。
硬い事いぅなよ。
ビブリナ嬢」
このお子との会話は、疲れますね。
節がおかしいのです。
此方とは相容れません。
「最上神様の御命令ゆえに、致し方なく此方の世界に入れて差し上げたのに……
此方の仕事の邪魔までするのは、怒こってもよろしくて?」
殺気を込めて睨む。
「ちょーい、ちょぃ。
会話しながらだって、できるでしょうに。
ひどいょ、泣いちゃう。うえーん」
……反省の色が無い様ですが。
この世界での戦は厳禁。
憤怒の念は尽きぬが、致し方ないですね……今は矛を収めましょう。
「リディアさん、入ってみて如何でしたか?」
「そぉねぇ。
やっぱり上限は世界固定だったよぉ。
あたしもカイルも、同じく影響があったねぇ。」
「ギフトの方は?」
「あの短い時間じゃぁ、わかるわけないじゃぁん。
世界を壊していいなら、実験できるけどぉ?」
「………」
無言で威圧する。
「ごぉめん。
わざとだよぉ」
やはり、嘘泣き。
ブンブン、此方の上を飛び回りよって。
大人しくなさい。
このお子を見ておると思考が——。
ふぅ。
一度落ち着き、考えをまとめましょう。
……此方の決めた制限は、神の従者にも反映される。
ギフトなどの制限は、まだ不明。
しかし、驚くべき事実です。
カイル……其方は非常に美しい。
此方の思考を、一つ上げてくださいました。
………おや、やはりダンジョンの中を覗くと、其方に勘づかれますか。
カイル……其方は其方なりに、私の世界を楽しみなさい。
本日は、この辺りで離れましょう。
よしなに。
【カイル】
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ふっと、表現しづらい圧が消える。
……急に、感じなくなった。
何だったんだろう。
「あの、この先に、三つに分かれるエリアがあります」
アメリアが、この先の道を示してくる。
「分かれ道なんてあるんだ!」
分かれ道!……楽しそう。
「はい!説明しますね」
「待って!
楽しみは取っておきたい」
せっかくだけど、これから見られる場所を、先に聞いてしまうのは勿体無い。
……あー、楽しみだなぁ。
気持ちが移り、さっきまでの疑問をすっかり忘れて、先に進んだ。
お久しぶりのリディア!
評価など、頂けたら喜びます!




