1-1 僕は恐怖を知る
チュン、チュン。
鳥の鳴き声。心地よい風。
ゆっくり目を覚ます。
動くと少し痛みが走る。
「いてて……ここは?」
立ち上がった僕は辺りを見回す。
周りが木々に囲まれて地面にも草が生い茂る、上を見ると木々の隙間から青い空が見え所々には白い雲が漂っている。
管理している時に映像などで見た森だ。
……ということは逃げられた?
「自由だー!」
両手を上げ力一杯叫んだ。
今までの苦痛からの解放。
僕は喜びに打ち震えた。
もう記憶の彼方にありすぎて思い出したくても思い出せないくらい久しぶりの風や大地の感触を確かめる。
……やっとだぞ!
感動的だ。
あの世界は、何にも無い場所だった。
あるとすれば管理していた僕の世界くらいだが映像と現実、感動の度合いが違う。
色も管理する世界以外、単色だった。
でも見ろ……。
ここには、色がある空気がある。
思いっきり空気を吸い込む。
「すぅーーっ、ごほっごほっ」
吸い込みすぎて咳がでた。
あっちは空気なかったもんなぁ。
今更だけど、それで生きてる神様……凄いな。
ふと、僕は辺りを見回し高い所を探した。
「やっぱ、見るなら高いとこからだな。」
一際目立った、高い木があった。
………おっ、いい所発見。
あの距離なら、ひとっ飛びだ。
と、いつもの感覚で走り出したが。
「……おっも、え?」
身体がいつもの様に動かせない。
どう言う事だ?『身体チェック』
僕のステータスが目の前に表示される。
「……何だこれ?」
酷い有様だった、レベルが下がってる。
……何でだ?低すぎる。
……他の能力も軒並み低い。
最低値が運。
「……僕、運悪!」
この世界を上から目線しようとしていた僕は今までの常識に、現在の僕を受け止められずにいた。
死ぬ……間違いなく終わる。
この世界が魔物のいる世界だったら本気で詰む。
神の従者は死ぬよな?
そんな事考えたこともなかったけど。
「………よし!帰ろう。」
僕の短い冒険は幕を閉じようとした、その時。
「キャー」
たぶん、女性の叫び声が聞こえたがそれを秒で無視した。
さて、一度上を見上げたが。
よく考えると、重大な事に気がつく。
……帰り方が分からない。
ここが何処かもわからない。
そもそも、どうやってここに来たかも覚えてない。
後先考えないのが僕の悪い癖だが、これは非常にまずい。お腹も空いて来た。
「………え?」
お腹が空く?
こ、これはもしかして食事ができる?
……帰り方は一旦、置いておこう。
先ずはこの世界で、食べ物を食べてからでも遅くない。
その時……
「助けてー!」
二度目の叫び声が聞こえた。
ごめんなさい僕には無理。
一応、動こうとはした。
でもいざ人が居ると思ったら体が全然動かない。
これは恐怖というやつかな?
まさか、僕が人に恐怖しているとは……笑える。
「……」
ほら、声も出ない。
ずっとほぼ一人で仕事をして過ごした僕のコミュ力は遠に枯れ果てていたようだ。
こんな落とし穴があるとは思いもしなかった。
そんな僕が命懸けで女性を助けるなど出来るはずもない。
きっと神様が見守って下さる。
僕も神様的なやつだけどね。
三度目
「お願い、そこの白髪で服も白い幽霊みたいな人助けて!」
え?振り向いた瞬間、彼女はもう目の前にいた。
人を見た瞬間身体中に悪寒が走り出す——
(無理無理無理。)
久しぶりの人間は刺激が強すぎる。
全く身体が動かなくなった。
やっぱり人が恐ろしく感じる。
だめだ、逃げなきゃ——
動かない身体を無理矢理にでも動かそうとしていたら、その女性が擦り寄ってくっ付いてくる。
「キャー。」
思わず僕が叫んだ。
しがみついた女性がびっくりする、僕はそれどころじゃない。
やっぱり無理だ震えがくる、鳥肌が立つ。
全部久しぶりだがそれどころじゃない。
ガササッ
薮の中から武器を持った、厳ついおっさんが複数人現れる。
……詰んだ。
必死で逃げようとする僕を離すまいと女性がしがみつくが力が入らないので全然振り解けない。
それを見たおっさん達がニヤニヤしながら取り囲んで急に殴り掛かって来た。
ドガッ
僕は気を失った。
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