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元社畜神様はコミュ症すぎて異世界でも逃げ出したい  作者: 片白
1章 逃げた先でも逃げたい

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1-14 選択からは逃げられない



【カイル】

──────────


 凍りついた世界で考える。


 大体、王様も王様だよ……。

 追放した僕に自分の娘を与えるって、いくらコミュ症の僕でさえおかしいって分かるよ。


………まさか、リディアに何かされた?


 あまり人のプライベートを覗きたくないけど。

 もし呪われてたりしたら、僕の元同僚の責任だし、解いてあげないと。


 気をしっかり持って、気絶だけはしないように薄目で目に力を入れる。

 う、辛い………。

 え? 王様、弱くない?


 守られる立場だからかな。

 王様、もっと努力しないと。


 でも、強さでは測れない怖さを僕は嫌ってほど知った。

 まぁ……人は全部怖いけど、特にね。


 あ、ちゃんとしないと。


………もう一度見るけど、特に何ともないな。

 だとしたら、王様……酷くない?


 この二人の事、嫌いなのかな。

 ……可哀想。

 無理矢理、僕の褒美にされるなんて。


 ちゃんと言ってあげないと。

 でも怖いんで、目は瞑ります。


「二人が、かわいそうです……よ」


 すっごく声ちっちゃいけど、言えたぞ!

 聞こえたかな?


 僕の言葉の影響かは分からないが、程なくして騒めきだす。


……薄目を開けてみる。


 ひぃ、睨んでるよ。


 しかも、久しぶりにどこからともなくアンの殺気が……。

 アン、居たんだ。

 アンだけじゃない。そこら中から殺気が僕に向かって来た。


 なんで、僕が悪いの?

 どう考えても王様の方がおかしいじゃん。


 褒美の二人が涙を溜めている。


 それは、どっちよ。

 僕に? 王様に?


 ……状況を見ると、とても不思議なんだが、僕なんだろうね。


 時間は待ってくれそうにない。

 どんどん募る殺気と哀気。

 こんな状況ってあるんだね。


 こんな僕に選ばれる人って、可哀想だと思うんだけど。


 なんか周りが怖すぎて逃げたいけど、今回は本当に身内の責任でもあるし、泣かれると駄目だなぁ。


 もう少しでいい。

 勇気を出すんだ、僕。


「……わかりました。ちょっと時間を下さい」


 声は相変わらずちっちゃいですが、仕方ない。

 ちょっと見るけど、ごめんね。


……王女、出会いが悪かったせいか名前忘れてたよ。

 アルテルには散々迷惑かけちゃったしなぁ。

 年齢は十八歳。うん、見た目通りだ。

 能力は戦闘向きではないけど、外交特化だね。

 一緒に居れば楽そうだ。

 性格は、温厚、高潔、義理堅い。

 うん、凄くぽい!

 まだあるけど、これくらいで。


 次は。


 ……へぇ、アメリアの方がアルテルより強いんだね。

 神童の効果かな? 戦闘向きだ。

 年齢十五歳、思ったより歳上だった。

 あとは……前見た時は悪いと思って状態しか見なかったけど、これは!

 性格に、まさかの『コミュ症』が。

 紛れもない親近感。

 後は、情熱的、激情、苛烈。

 このくらいにしておこう。


 二人をもう一度、見る。



【アルテル】

──────────


 カイル様。

 命を助けられてから色々ありました。


 ……目を閉じる。


 人生初めて無視をされ野宿

 毒の木の実

 血塗れの白い悪魔

 抱えられ空中を高速移動

 膝の上の血塗れの死体


 いい思い出……とは言いづらいですが。

 思い返すとお城では、経験なんて出来ない事ばかり。


 それに、お城に来てからは。


 お食事

 私の追っていた案件の解決

 妹の心を救ってくれて分かり合えた


 とても代え難い思い出です。

 

 突然カイル様が目の前から消えた時。

 私は絶望に襲われ「帰って来て」と泣きました。

 貴方は帰って来て名前を教えてくれた。


 あの時、私は貴方と共に居たいと思う様になりました。

 

 私は第一王女、でも選ばれた方は王位継承権から外れる。

 私はその覚悟を持って今貴方の前にいます。

 

 私は目の前のカイル様を見つめる。

 

 お願いします。



【アメリア】

──────────


 わたしはカイル様に返せきれない恩を頂いた。


 初めは恐ろしい幽霊だと騒ぎ出し。

 誰もその幽霊が恩人だとは教えてくれなかった。

 お父様を見つけては突撃して、セバスが居れば邪魔をして「いい加減にしろ」と怒られたがやっと教えてもらえた。

 わたしに掛かればいつもの事、チョロかった。


 それからは「会わせて」と同じ事を繰り返してやっと今日、まさか追放の時に初めて会えるとは思わなかったけど……カイル様はあの時の幽霊で私の恩人だと確信できた。


 わたしは元々王女に興味はない。

 カイル様と旅に出れるなんて幸運でしかない。


 でも、もしねえさまが選ばれたら。

 その時は王女として……いえ、弱気はダメだ。


 わたしを選んで欲しい。

 そして恩を返したい。


 わたしはカイル様を見た。


 お願い。



【カイル】

──────────


 二人ともプライベートなのにごめんね。

 たださ、二人の真ん中に王様は邪魔。


 今回は逃げないと決めてたから、視界に入れない様にするのが大変だった。

 

 でも不思議。

 結構見ても平気だったのは、子供と見慣れた王女だったからかな?


 僕自身が成長してたら嬉しいんだけど。

 王様のせいで、ないのはすぐわかる。


 二人とも綺麗に正反対だったなぁ。


 でも、決まったよ。


「………彼女でお願いします」


 僕は王様から目を逸らして、褒美の一人を指差した。





逃げたいカイルは今回ばかりは向き合いました。

カイルがどちらを選ぶかは次回に。


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