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元社畜神様はコミュ症すぎて異世界でも逃げ出したい  作者: 片白
1章 逃げた先でも逃げたい

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1-13 上げて落とす



【カイル】

──────────


「カイル。お主を城から追放する。」


 昨日リディアと別れた場所に呼ばれたと思ったら、いきなりだよ。


 昨日は焦っていたので気が付かなかったけど、凄い場所だね、ここ。

 リディアの事もあるし今日は素直についてきたけど、僕はもう人が多すぎて帰りたい気持ちでいっぱいだ。


 ただ、広い空間の真ん中に僕一人。

 目の前の段差になって少し高くなっている場所の、昨日と同じ椅子に座る王様。


 その横に知らない叔父さんとアルテルがいる。

 周りは結構な人で溢れているが、多少みんな離れているから、まだ気持ちを保っていられるだけだ。


 今回は身内がご迷惑を掛けたので、何もしていない。ノーガードだ。

 唯一この状況でも僕を守ってくれるのは……瞼しかない。


 でも王様の言葉を聞いて……僕は喜んだ!

 自由になれる。

 心は飛び跳ねているが、悪い気もするので顔には出さない。


 朝、急に呼ばれてビクビクだったけど、

 まさかこんなサプライズがあるとは!


「お父様! 何故ですか!」


 王女が王様に直訴しているけど、やめて。

 このまま行かせて。


 一応、何も言わないのも不自然になるのかな?

 形だけでも聞く? どうしよう。


 いや、王様と会話するの怖いし……いいや。


 僕は黙ることにしたけど、今だに目の前で望まぬ争いが起きている。


「なら、私もカイル様についていきます!」


……何言ってるの?

 後先考えて。

 僕のことも考えて。


 王様、さすがに止めるよね?

 物凄い顔で考えている王様が、ばっと僕を見た後、扉の方を見る。


 反射的に瞼でガードした。

 思った以上に効果は薄いので、目線を下げた。


「その事なのだがな……入れ」


 誰も目線に入れたくないので、意識を飛ばして見た。


 扉は静かに開き出す。

 護衛をつけた一人の少女が現れた。

 こちらに向かって来て、僕の隣で跪く。


「面を上げよ」


 一言一言、迫力が酷い。


「……はい」


 少女が顔を上げる。

 そのまま顔を僕の方に向けて、ニコッと笑う。


 あれ?

 この子……元気になってよかった。


「アルテル。アメリア、こっちへ」


 二人が王様の両隣につき、僕の方を向く。


 なぜか王様は二人を見て、目を閉じた。


 僕も怖くて、瞼を下げた。



【国王】

──────────


——私は今朝の事を思い出した。


……なぜこんな事に。


ドンッ


 寝殿の机を叩き、頭を抱える。


 事態を重く見た宰相などが気を使い、私の体調不良として今日の公務は中止になった。

 私は自分の部屋で一人、先程リディアと名乗る、カイル殿と姿が似た少女に言われた事を思い返していた。


「……私にどうしろと」


 命をかけてなら、まだマシな方だ。

 世界をかけるなど、私一人には重すぎるぞ。


トントン


「お父様、いらっしゃいますか?」


 む、こんな時に。


「……入れ」


「失礼します」


ガチャ


 入って来たのはアメリアだった。

 声で分かったが、まさかアメリアから私の所に来られるようになるとは。


 涙腺が緩むのを、グッと堪える。


「アメリアか。何だ?」


 よく見ると、アメリアの顔は何故か怒っているようだ。


「いつ会わせていただけますか?」


 その話か……。

 今日の私の事はアメリアには伝わっていなかったからか、思いのよらない所から違う意味でカイル殿の話が飛んできた。


「今日はその話はなしだ。部屋に戻るか、たまには身体を動かして来るといい」


 初めは幽霊が出たと騒ぎ出し、幽霊が命の恩人だと分かると、私が一人の時を見つけては同じ話をしてくる。


「なぜ、一言もお礼を言わせてもらえないのですか!

 わたしを、そんな恩も返せない人間にしたいのですか!」


 何という無茶苦茶な正論を言うのだ。

 ……仕方がない。どうせすぐ伝わるのだ。

 アメリアには悪いが、話すしかない。


「うむ、すまぬな。いずれお前にも伝わるから正直に言おう。

 カイル殿の事は忘れなさい」


 それを聞いたアメリアは臆する事なく私の前まで来て、机を両手で叩いた。


バンッ


「説明を!」


 元々の性格はこうだったなと、前と何も変わらない娘に懐かしくなり、緩む涙腺を再び堪える。


「……言えぬのだ」


 私の言葉に納得のいかない様子の我が娘。


「それでは、今日限りで私は第二王女の名を捨てます。

 今まで育てて頂き、ありがとうございました。お父様。」


 何を思ったのか……いや、変わらぬな。

 アメリアの方が亡き妻に似ている。


………などと言っている場合ではない!


「許すと思うか?

 お前がカイル殿をどう思っているかは、今の言葉で理解した。

 昨日まで幽霊怖いと言っていたのにだ」


「ゆ、お父様!

 私は決めたのです。もう何を言っても無駄です」


……引かぬか。


 そうか、お前の気持ちは理解した。

 アルテルも多分同じだろう。

 うちの娘二人は、どうしてこうも。


「分かった。では、こうしよう」


 これは——私の裁量の及ばぬ話だ。

 娘達には悪いが、一矢報いる事が出来るかもしれん。


 後はカイル殿に委ねるぞ。



【カイル】

──────────


「カイル殿。我々の都合で申し訳ない。

 だが、今日限りこの城から出ていてもらわねばならなくなった」


 王様の雰囲気が一気に重くなり、辺りに広がる。


「最後になるが……カイル殿に、今までの功績を称え、褒美を授ける」


 王様が両手を広げた。


「どちらか一人を選べ」


 二人が一歩前に出る。


………………今、とてつもなく恐ろしい人が、恐ろしい事を言ったぞ。


 王様の両隣の二人は、

 「どっちが選ばれても恨みっこなしね!」とか、

 「何で貴方がカイル様と……」とか。


 選ばされる方の身にもなってよ!


 僕は今までの事を考えて、最善を導き出した。


「いりません」


——世界が凍った。


 そんな能力、持ってないんだけどなぁ。




世界が凍った。

カイル「これ、逃げてもいいかな?」


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