表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元社畜神様はコミュ症すぎて異世界でも逃げ出したい  作者: 片白
1章 逃げた先でも逃げたい
10/10

1-9 人混みから逃げ出したい



【カイル】

──────────


 あー無理だ。


 これを知っていたら、ついて行かなかった。

 どこ、ここ……お城より人多いじゃん。


 管理してた世界には、ここより人で溢れてる所があったけど、

 見ると、居るとじゃ全然違う。


……どうしよう。


 便利なボイドは、歩いている時には流石に使えない。

 僕はいいけど、ぶつかられた人が可哀想だ。


 認識しないから、そこを取れば……

 いや、認識したくないから、そこを取ったら、目を瞑るのと何も変わらない。


 どんどん近づいてくる。

 いい考えが出てこない。やばい。

 とりあえず目は絶対、開けられない。

 仕方ない……見ないだけで、とりあえず乗り切ろう。


——


 早く進めば人が減るかと思ったら、増え続けて、

 今では周りは人の気配だらけになってしまった。


 うげ、さすがにこれは……

 何故か胃がムカムカして、口から出そう。


 頼れる人がアンしかいない……


 あー詰んだ。



【アン】

──────────


 城下に来て、何がしたいのだろう。


 ずんずん歩いたと思ったら止まって、前を向きながら、今は顔が真っ青だ。


 彼の目線を追うと、奴隷が映る。


……この国が、いくら他の国より優れていると言っても、

 この制度だけは捨てきれない。


 貴族の一部も容認している。

 メイドの私でさえわかるのだから、上の方々でも難しい問題なのだろう。


 それを、この方は悲しんでいらっしゃる?


……なぜ?


 聞こえは良くないが、関係ないと思うのですが、

 この国の出身では絶対なさそうなのに。


 優しさか、哀れみか。


……判断は難しいわね。


 姫様なら、一緒に悲しみそうですが。

 あの方も勿論、この問題に心を痛めている。


 考えに夢中になり、彼から思考が逸れた瞬間。


——彼が急に走り出した。


 不味い。監視の私が、彼から目を離すわけには。

 国から出て行ってもらう前に、こんな事になるなんて。

 私はすぐに後を追った。


……油断した。


 微かな痕跡を追いかけたら、どんどん人気のない所に。


 当の本人は、どこにも見当たらない。


——ゴミが! やっぱり騙していたのね。


ドゴーン!


 その時、凄い音が奥の方から聞こえた。

 私は瞬時に、音があった場所に向かった。


——


 私でさえ来たこともない裏路地の、さらに奥で彼を見つけた。


 そこには何故か、複数人の男共が倒れていて、

 子供が三人、泣きながら彼にしがみ付いていた。


……どう言う事?



【カイル】

──────────


 耐えられなくなって、僕は走り出した。


 もうやだ。人のいない所、探さなきゃ。

 今すぐにでも、こんな所に居たくない一心で、

 人気のない所を探しながら急ぐ。


 どこもかしこも人でいっぱいだ。

 裏だ、裏に行こう。

 広い所が良くない。狭い所を探そう。

 ここより、きっとマシだ。

 このままだと、本気で意識がやばい。


 限界ギリギリの僕は、どんどん人気の無さそうな所に入っていく。

 細い道を進み、狭い所を探す。

 なるべく人から離れて、誰にも見られない所。


……あの角が良さそうだ!


 急げ、僕。


 最後の力を振り絞って曲がり角を曲がったら、

 人が何人も固まって居た。


 嘘だ。こんな所にまで人が……

 でも、もう止まれない。

 せめて威力は抑えないと。

 思いっきり急ブレーキをかけた。


 ガガガガガ


 地面が抉れる。

 止まらない。

 ごめん、後で謝れたら謝るよ。


……僕が生きていたらね。


ドゴーン!


 ぶつかった。それはもう派手に。


 威力を抑えたせいか、痛くもなく生きていた僕。

 周りを見ると、倒れてる大人と、隅で泣き喚く子供達を見つけた。


 反射的に目を背けたが、限界ギリギリだったのに、

 不快感が消えて行くのを感じた。


 もう一度、確認する。

 子供達を見ても大丈夫な事に喜んだ。


 すぐに、僕のせいで泣かせたと思い、

 泣き喚く子供達を慰めた。


「驚かせてごめんね。もう大丈夫だよ」


 触れてみて再確認できた。

 こんな僕でも、子供は大丈夫みたいだ。

 小妖精のおかげか? いや、それはないな。


 子供達も、なぜか僕を怖がらずに。


「ありがとう。真っ白いお兄ちゃん」


 と、微笑んでくれた。


……荒んだ僕の心は癒された。


 僕のせいなのに、お礼を言えるなんて、いい子達だ。


「ここに来れて、良かったよ」


 子供達の思いに、心があったかくなり、

 反射的に呟いてしまった。


 その時、背筋が寒くなり、後ろを振り返るとアンが居た。


「や、やぁ。早かったね」


 ……睨んでるよ。



【アン】

──────────


 どうやって分かったの?


 地面が抉れてるくらいの、壮絶な戦闘の跡。

 状況を見て、すぐにわかった。


 コイツらは、姫様も追っていた奴隷売買のゴミ共。

 姫様を攫った、黒もみあげどもをけしかけた奴らだ。

 そのせいで姫様は狙われた。


……これは今はいいわ。


 どれだけ探しても、尻尾を見せなかったのに、こんな所で。


 子供達を慰めてた目の前の彼は、確かにこう告げた。

『ここに来れて、良かったよ』と。


……まさか、探してた?


 だから、急に着替えを要求して城下に出た?


……そうだ、忘れないうちに。


 私は、青いクリスタルの付いたブレスレットを天に掲げた。


 すぐに光が飛んでいく。

 姫様が持つネックレスとは違い、

 この国の敷地内だけの限定的な物だが、直ぐに騎士達が来てくれる。


 これは、この国で久しぶりの偉業よ。

 目の前の彼のおかげで、奴隷制度が変わる恐れも。


 ……それは、早合点ね。


 はやる気持ちを抑えようとする前に、彼が振り向き。


「やあ、早かったね」


 と、呟いた。


 彼に抱きしめられ、安心してる子供達を見る。

 本当に、子供達を助けてくれてありがとう。


 私は彼に、初めて心から微笑んだ。



【カイル】

──────────


 急に走り出してごめんよ。


 最初より優しい目になったけど、真意はどっちだ?


……疑いしか出てこない。


 その時、遠くの方から、悪寒が近づいて来る気配を感じる。

 すぐに思考を飛ばすと、今まさに大群が、ここに迫って来ていた。


 やっぱり罠だ!


……アンめ。

 今では、その優しい目の裏に、恐ろしい悪魔が見えるよ。


 どうする………。

 そうだ、もう当たって砕けよう。

 子供達のおかげで、心が爽やかだ。

 今なら、アンにも少しは話せる。


「あの、子供達が怯えてる。

 この子達は僕が連れていくから、後は任せるよ」


 ごめんね。いい子達を、だしに使ってしまって。


 僕には余裕がないんだ。


 だが、アンはそんな僕を尻目に、あっさり承諾してくれた。


 しかも、この子達を、何処に連れて行けばいいのかまで教えてくれる。


 罠かもと思ったけど、ここから早く出なくてはいけなかったので、

 恐る恐る言われた所に行ってみたけど。


 死ぬほど感謝された。


 そこは、道中もほぼ人とは会わず、

 建物の中には大人一人に、子供が沢山で、

 僕には、ほぼストレスなく過ごせた。


 緑の飲み物も振舞ってくれた。

 ここで栽培しているものらしい。


 喜んで貰えるのは、僕も嬉しい。


 帰りには「また来てねー」と、

 子供達みんなで手を振ってくれた。


……結果、終わってみると、いい日だったなぁ。


 気がつくと、すごい事に気がついた。

………僕は一人だった。


 これはチャンスだ。逃げられるぞ!


 城とは反対に向かおうとしたら、声がした。


「お迎えにあがりました」


……笑顔のアンだった。


 全てを見据えてる彼女に、僕は諦めるしかなかった。




帰り道。

カイル「ね、ねぇ…あの倒れた人達は?」

アン「こちらで、対応しておいたので安心してください。」


ぜひブックマークや評価(☆☆☆☆☆)で応援をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ