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トノさん、マジでちょっとウザいんですけど[うっせぇッ、お前ら言葉遣いくらいちゃんとしろ!]  作者: 伊藤宏


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7.人事発令

 週が明けて月曜日。

 いつもより十分早く出勤したが、井澤誠太郎と琴平正平は既に出社していて、何やら話し込んでいた。

 ふたりは外﨑の顔を見るなり、会話を止めた。


 外﨑は「おはよう」と軽く挨拶してからパソコンを開くいた。

 画面の右下にメール着信を知らせるポップアップが表示されていた。

 “通達” というタイトルのメールを開けてみると、発信者は社長で、本文は『添付の通り通達いたします』のみ。pdfファイルの内容も至ってシンプルだった。


 【6月18日付け発令 組織変更、及び人事発令】

 業務改革プロジェクトを新設し、外﨑実夫(現職:嘱託)を特命課長に任ずる。

 〔目的〕

 営業部、企画部の業務リスクを管理し、効率化することを目的とする。



 組織といっても部下はいないし階層についての記載もない。だが、目的に “管理し、効率化する” という文言が入っている以上、指揮命令の権限が与えられていることは明白だ。

 問題は、その特命課長が、昨日までアルバイト同然の地位だった、あのお殿様であるということだ。



 連中は、この事実をどう受け止めるだろう。

 外﨑は、一番声を掛けやすい人物に声を掛けた。

 「正平はいつもこんなに早いんか、感心だな」

 アルバイトの琴平正平は口が悪く、見た目もチャラいが働きぶりはまじめだ。以前社長から、正社員にならないかと誘われたらしいが、本人はあくまでも世界に通用するロッカーを目指すそうだ。

 外﨑は、三十六歳を超えてなお夢を追い続ける正平の態度に好感を持っていた。正平の気持ちはよく分かるし、成功して欲しいとも思っている。


 「それよりトノさん、気合入ってますね」、と正平は自分の腕時計を指で(つつ)いた。

 

 「おう、社長に頼まれちってな。あとで臨時朝礼するから」

 そう正平に答えつつ、誠太郎にアイコンタクトを送ったのだが、みごとに外された。

 そういうことか。

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