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トノさん、マジでちょっとウザいんですけど[うっせぇッ、お前ら言葉遣いくらいちゃんとしろ!]  作者: 伊藤宏


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3.外﨑実夫の夢

 外﨑(とのさき)が勤務しているのは、イベント企画と、その運営を事業の核とする株式会社、シアワセファクトリーである。

 二年前までは株式会社(さち)工房という社名で、映画のセットや大道具、ドラマやコマーシャルの撮影に使う小道具の貸し出しや特殊撮影を請け負う職人集団の会社だった。当時のメンバーで残っているのは、今や外﨑ひとりだ。


 外﨑は元々、フリーで、映画の制作に関わる仕事をしていた。

 仕事にあぶれていた四十六歳のある日、幸工房の初代社長に声をかけられて入社し、そのまま十有余年、映画職人のサポートと関係会社との協力体制の構築、営業などを担当してきた。


 フリーから雇われる身に変わっても、外﨑は夢を捨てなかった。

 夢とは、映画監督になることだ。高校を卒業して以来、一度もブレたことはない。

 (さち)工房の社員になってからも、土日や有給休暇を使って一、二年に一本のペースで自主製作のフィルム映画を作成し、コンテストに応募し続けた。そんな暮らしだから結婚など考えもしなかった。その代わり、給料はすべて映画に注ぎ込んだ。

 しかし五十歳になったのを(しお)に諦めた。審査員が評価するのは作品の質ではなく、才気煥発な若い才能だと悟ったからだ。年齢のハンデは、どう頑張っても覆せない。


 諦めたとき、自分の映画人生を振り返った。

 サード助監督ではあったが、一本だけメジャーな映画に関わった。

 カメラの経験を買われて撮影助手を務めた映画は五本。

 あと、幸工房の一員として仕事をしただけなのにエンドクレジットに個人名を載せていただいた作品があった。あれはちょっと、泣けた。

 外﨑実夫の映画人生で、経歴として記すことができるのは、この七本ですべてとなった。

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