23.提案の結果は……
誠太郎がイメージ画像やイラストを使ったプレゼンテーションを終えると、質疑応答の時間になった。
「これ、誰が楽しいんですか」、とはボランティア企画に対する突っ込み。
「地産の食材ってけっきょく普段食べてるやつですよね。でもこの辺の地産って、主に根菜なんで、華がないんですよねー。松茸とか採れれば別ですけど」
ひと工夫ないと地元の人間には響かないか。特に、若者には。
「フェスでひとつになるのって、演者とひとつになっても意味なくないですか? それにみんながロック好きってわけでもないですし」
企画運営を一緒にやることでひとつになる、という提案だが誠太郎の説明は、そこが不充分だった。しかし二年生のほとんどが運営側に回ったら、外部からも客を入れないと盛り上がらない。そうなると規模的に難しくなりそうだ。
「仮装しちゃうと顔がわからなくなるし、ダンスや歌って文化祭の続きみたいで新鮮味がないですね」
これは予想できた。
「ボランティアはいいとして、こういうのって、目立つようにやると偽善的に見えちゃうんですよ。そうでなくてもウチら、こういうのやらなそうに見られてるから余計」
とかく偏見の目でみられがちな特殊な高校だ。どう見られるかは重要なのだろう。
「マラソンって今からじゃ無理だと思います。道路の使用許可って、この辺って幹線道路に繋がってるんですけど警察の許可取れます? そこチェック済みですか。外周道路も私道に見えますけど、違うんで」
マラソンは佳奈美のアイディアだ。道路使用許可の問題は、確か検討していたはずだ。開催を早朝にするなど、時間を考慮すれば可能、という結論だったが地元から反対意見が出たら計画はとん挫する。これは、無理にでも止めるべきだったかもしれない。
いずれにしても、提案は全滅だった。
誠太郎はボコボコのサンドバッグ状態で、質問への答えもしどろもどろだ。なにしろ実行委員側に共感の色が全く見えないのだ。これでは援護のしようがない。
誠太郎は突っ込みの嵐に、とうとう「もう一度、考え直させてください」と白旗を挙げた。




