20.宿題
翌日、ミーティングが行われた。
誠太郎が、集まったメンバーに面談の結果について情報共有すると、
「それで残ったのがこの五十八個なわけ?」
身長百八十五センチの佳奈美が立ったまま腕を組んで呟いた。椅子に座っている外﨑からすると、声が天から降ってきたようだ。
続いて凜華が感想を述べた。
「しっかしこの大量のバツ印をセイさんの目の前で付けたんだ。たいした心臓ねぇ、あの子」
誰からも反論がでないところをみると、感じていることは他のメンバーも同じらしい。
「ウチから出したのって、確か百二十くらいありましたよね」、と大悟。
「てことは半分がボツか」と正平が呟くと、後ろで見ていたシズ姫が「最初の取り消し線でいったら八割ボツですよ」と身も蓋もないコメントを付けて笑った。
「バツ印の付いてないのをグルーピングして深掘りしてこいってのが、次の宿題なんだ」
と誠太郎が言うと、正平が
「女子高生に宿題出されてやんの」と軽口を叩き、
「うっせーな」
「ウチも対抗してリンちゃん出せば」などと雑談モードに入り始めた横で、大悟が黙々と、ノートパソコンに何か打ち込んでいるのが見えた。
横から覗いてみたらバツ印が付いていないアイディア名だった。
何をやろうとしているのか、何となく読めた。
「おい大悟、たったの五十八個だぞ、アタマ使え! 何でもChatGPTに頼ろうとすんな」
「バレました?」
「見え見えだ。ディスカッションしながらグルーピングすることで企画の落としどころも見えてくるんだから、こんなとこで手ぇ抜くなよ」
実は、外﨑は今イチChatGPTが使いこなせないのだが、そこは伏せておく。
「じゃあトノさん……、これも、ライン使っちゃっていいすかねー」
誠太郎のことばに、『意外と使えるかもしれんな、ライン』という思いが頭を掠めた外崎だったが「まぁ忙しいからなー、みんな」と止むなく認める感を声音に滲ませて使用を許可した。




