表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トノさん、マジでちょっとウザいんですけど[うっせぇッ、お前ら言葉遣いくらいちゃんとしろ!]  作者: 伊藤宏


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/45

19.非情の一次選考

「線で消したアイディアは、わたし達が考えて没にしたのと同じです。プロなので大丈夫だと思ったんですが……」


 若水生徒会長の眉間には小さな(しわ)が寄っている。『案外素人なんですね、あなたたちも……』と続けなかったのは乙女の情けか。


 目で隣を窺うと、プライドを打ち砕かれた誠太郎がうなだれていた。そこに、作ったような明るい声が降り注ぐ。

「でもさすがです。わたし達が思いつかなかった()()()()()ありますから」

 これが追撃のダメ押しパンチとなり、誠太郎は撃沈した。



 外﨑(とのさき)は、場の空気を変えるべく会話に入った。

「今日は、副生徒会長さんはいらっしゃらないんですね」


「小清水は、今日は、別の案件で打ち合わせに出ています」


「そうですか。こう言ってはなんですが、普通、一次選考は下位のメンバーが行って、二次、最終と進むに従ってトップメンバーや特別審査員が参加するものだと思っていました。こちらでは、最初から生徒会長さんが選考されるんですね」


「わたし、一次を軽く見るのっておかしいと思うんです。だって一次選考でいいものを落とされてしまったら、そのあといくら頑張っても無駄になりますから。だから一次を他人(ひと)任せにしたくないんです」

 言外に、小清水副生徒会長は当てにならない、という含みを感じるが、それはいいらしい。


「なるほど。私どもにとっては、最初からきちんと見ていただけるのはありがたいことです。では、次回は、線で消されなかった企画に絞って深掘りしてきましょうか」

 外﨑の問いかけに、若水生徒会長は黙った。


 透き通るような無敵のスッピンは見ている分には綺麗だが、“待て” の状態で長く相対(あいたい)していると、なぜだが、胃がじわじわと苛まれてくる。


 若水生徒会長は長い沈黙の末、

「いえ、失礼しました。アイディア名はわたしたちが没にしたのと似ていても、プロの方が内容を考えたら、実はおもしろいのかもしれません。最初に伊澤さんが仰ったように、今日は方向付けが目的だと、わたしも思いますので、今から、どうしてもダメなアイディア名だけにバツ印を付けます。で、残った企画を御社の方でグルーピングしていただいて、次は、深掘りした企画をご提案いただけますか」

 と、静かに述べた。


 ごくりと唾を飲んだ誠太郎が「わかりました」と答えると、若水は再び文書に向き合い、黙々とバツ印を付け始めた。

 強い思いが筆圧に乗り移ったらしい。シャーペンの芯が、ぷつんと折れて飛んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ