16.収容所?
一週間後。
外﨑は、誠太郎と共に聖アンナ鈴蘭学園に向かった。
ところで。
ウチのメンバーは当初、二千万円という予算上限の金額に、明らかににビビっていた。これは健全な反応だと思う。
映画人の多くは高予算を示されると舞い上がって喜ぶ。だがそういうのに限って途中で潰れるのだ。
大金を消費する、或いは大きな購買を任される緊張感は胃が捩れるほどキツい。これは経験した者でなければ分からないはずだが、シアワセファクトリーのメンバーは想像でそれが分かるのか、それとも、若者の防衛本能がそうさせるのか、外﨑には分からない。ともかく、この仕事の責任を引き受ける覚悟がありそうな者はひとりもなく、かといって誠太郎ひとりに任せるのも危険なので、外﨑は、最後までサポートすることにした。
スマホの地図アプリに頼るまでもなく、聖アンナ鈴蘭学園はすぐに分かった。
目立つのだ。
広大な敷地は、高さ二メートル以上ありそうな白い塀に隙間なく囲われていて、近くで見上げても、塀の上に、辛うじて、棕櫚の頭が揺れているのが見えるだけだ。校舎は奥にあるのか、屋根も屋上も見えない。
左に半周ほど回ると、正面玄関らしきものに行き当たった。
直径一メートルを超える一対の太い白門柱に挟まれて、格子の鉄扉が閉められている。色こそ白に塗られているが、格子の隙間はほとんどなく、威圧感は相当なものだ。格子に鈴蘭の花の意匠があしらわれていなければ、大使館か、怪しい宗教施設か? と思わせる厳めしさである。
誠太郎が門柱のインタホンを使って社名を告げると、白塀に嵌め込まれていたドアがカタッと鳴って解錠を知らせた。




