15.さて、どうしたものか
最初の提案期日は、先方から一週間後と指定された。今度は、場所は鈴蘭学園だ。
今の段階では質よりも量を優先で、という若水生徒会長の要望にしたがって、誠太郎はつい今しがたメンバー全員に『各自、五つ以上のアイディアを考えてください』と指示を出した。
ラインを禁止にしておいてよかった、と外﨑は胸をなでおろした。
以前のフローだと、依頼を受けた誠太郎が、誰かにこの仕事を振り分け、そいつひとりが悶々とアイディアを考える流れに陥ったはずだ。
とはいうものの、今、誠太郎のデスク周りに集まっているメンバーは、誰ひとり声を発しない。
ようやく声が出たと思ったら、建設的な意見にはほど遠かった。
「今の高校生って何が楽しいのかしらねー」
今のって……、そんな昔のことじゃないだろう佳奈美。しかしそうか、お前はバレー漬けだったからな。
「やっぱパーティーでしょ」
という凜華の提案には、誠太郎が「何のッ」と被せた。正解!
「思い出ってさぁ、作るもんじゃなくて、残ったのをいうんじゃないの」
おい大悟、お前は会社の存在を否定する気か。
「とりあえず、彩菜ちゃんをホストクラブで接待すればいいんじゃね」
と言う正平を、頭をひっぱたいて黙らせてから誠太郎に提案した。
「ブレーンストーミングやってみたらどうだ」
「そう、なんですけどね」
ということは、手法は知っているということか。ブレストの四原則を講義するつもりだったが必要なさそうだ。
「そのことでちょっと、トノさんにお願いがあるんですが」
「なんだよ」
「ライン、使っていいすか」
「ラインだぁ?」
思わず語尾を上げてしまったが、……なるほど。考えてみれば、ブレストはラインと相性がいいかもしれない。
記録はスマホがしてくれるし、互いのアイディアからインスピレーションを受けることができる。スピード感があって隙間時間が有効に使えるから忙しいヤツも参加できそうだ。
「いいんじゃないか。その代わり、俺も入れてくれ」
「了解っす。じゃあ俺、この案件でグループ立ち上げるんで協力よろしく!」
「はい」、と声が揃ったところで打ち合わせは終了し、皆、それぞれの仕事に散っていった。




