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トノさん、マジでちょっとウザいんですけど[うっせぇッ、お前ら言葉遣いくらいちゃんとしろ!]  作者: 伊藤宏


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12.鴨がネギ?

 社長は仕事を選ばない方針を貫き、自ら、SNSを使って全方位的なPR活動を行っている。積極的な広報活動に異議はないが、全方位戦略にはリスクも潜んでいるので、いつか社長と話さなくてはならない。


 そんなことを考えていた、ある日の昼休み。誠太郎が頓狂な声を上げた。

「おいおい、なんか変な仕事が入ってきたよ」

 皆が誠太郎を振り向いた。


「なぁにセイさん、暴力団組長の襲名式とか?」

 おいおい凜華さまよ、恐ろしいことを言ってくれるな。


「違うよ、これ、高校生の依頼なんだよねー、こいつら支払い能力あるのかねー」

 そこか。


「ちなみにどこの高校なんですか」

 口を挟んだのはシズ姫こと浜波しず香だ。

 シズ姫は東京生まれの東京育ち。学校のランクには明るいはずだ。


「えっと、育愛会聖アンナ鈴蘭学園……、だって。女子高かな?」


「セイさん、それ超名門ですよ。女子高っぽい名前ですけど共学です。成績プラス、有力者の推薦がないと入れない閉ざされた学校なんでランク表には普通載らないんですけど、お嬢ちゃんお坊ちゃん限定のお金持ち高校っていうので有名です。登下校はカツアゲ対策で全員にSP付きってのは……、これは都市伝説ですけど」


「おおッ、なんかいいカモっぽくない?」

 外﨑は、身を乗り出した正平に「こらッ、その言い方!」とまずは諫めてから注意点を指摘した。

「小さい仕事だったら誠太郎が現場で判断していいが、でかいようだったら校長か理事長に話通した方がいいぞ。金持ち高校が金払いがいいとは限らないからな。で、なんなんだ? 依頼されたイベントは」

 

 誠太郎はメールに目を落としながら説明を続けた。

「ん~なんか、修学旅行に代わる思い出作り、だそうです。旅行はもうマンネリで思い出にも学びにもならないから、だそうです。けっこう真面目ですね」


「どうするよ、誠太郎」

 名門私立の修学旅行といえば予算は軽く一千万円を超えるはずだ。へたをすれば二千万円でもおかしくない。全額使えるかは要確認だが企画の自由度は高いし儲けも期待できる。


「もちろん受けます!」


 担当を誰かに振るつもりはないらしい。仕事の大きさを自覚しているのだろう。

「おぅそうか。じゃあ久しぶりに俺も同行するかな。いつ行く?」


 スマホの画面を確認しながら誠太郎が言った。

「それが……、明日来るっていうんですよ、ウチに」


「おぉ、鴨がネギしょって」とほざいた正平の頭を、漫才の突っ込みの如く張り倒したら、パシンッといい音がした。

 凜華が「パワハラー」と呟いたが無視。

 これが愛のムチ、いや親愛の証でなくてなんなんだ!

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