また会う日まで
本編最終話です。
いざ、凪を解放しようと決断したけれど、自分の気持ちが中々スッキリしない。
理由をつけて引き止めてしまいたくなる。
「プルクラ、凪の記憶を消すって簡単に言うけど、記憶保持者の転生なんだろう?どうするつもりだ?」
ギードは、具体的に何をすればいいのか知りたいみたいだ。
「凪は、人間関係がダメだったから、知識だけ残して、対人関係を消すのはどうかしら?それなら、不幸な事は忘れるわ」
転生に必要なのは知識だ。それ以外は、特別必要ないだろう。
「それだと自分が誰だかわからないんだろ?大丈夫だろうか?」
ギードは、心配そうに資料を見ている。
「本来なら、前世の記憶なんかない方がいいんだから、大丈夫よ」
輪廻転生だって、基本的に記憶はないわ
「前世の価値観に悩まなくていいんだから、帰って楽かも知れないな」
ギードも納得してくれたみたいだ。
「凪の指定された世界は、基本的に平和だけど、勇者召喚があるでしょ?凪は魔法使いみたい…」
また、働きすぎなきゃいいけど…
「ギード、凪に能力追加していいかな?」
このまま送り出すのは、ちょっぴり不安だ。
「何の能力をつけたいんだ?物によっては、すぐに用意するように言うぞ?」
ギードは『能力開発部』に掛け合ってくれるつもりの様だ。
「うーんと、出来れば『真実の瞳』かな。ダメなら鑑定が出来る魔眼かな」
相手を見抜く事が出来れば、無駄な労力を使わなくていいはずよね
「凪には良さそうだな。ただ『真実の瞳』はチャート能力だから時間がかかる。とりあえず発注して、魔眼だけ貰ってくるよ」
ギードは、そう言って席を立ち
「プルクラ、凪をすぐに送るなら、転生室で落ち合うか?また後にするか?」
私の表情を伺いながらギードは凪をいつ送るのか聞いてきた。
「…すぐ、送るわ。じゃないと決断出来なくなるわ」
本当は、凪ともう一度お話したい。
でも、それは凪の為にならない。
もう、天界の事は忘れた方がいい。
「分かった。じゃあ『転生の間』で待っていてくれ」
ギードは、サッと部屋を出て行った。
「凪、あなたに会えて、本当に良かったわ」
私は胸に手を当てて、凪には聞こえないけど話しかけた。
「行きましょうか」
私は部屋を出て『転生の間』に向かった。
今日は、いつもの転生日では無いので、入り口に見張りはいない。
中に入り、壁の時計を見る。凪の転生する世界の時計はカチコチと時を刻んでいた。
「凪、これからはこの世界で頑張るのよ」
凪には聞こえないのに、つい口にしてしまう
「私は当分、独り言が増えそうね」
そんな自分が可笑しくて、ついクスクス笑ってしまう。
時計の横にあるつまみを引き出すと、手動で数字を設定出来る文字盤がある。
「凪の転生時間は…」
文字盤に数字をセットしてから部屋に入ると、魂を送る時に、指定した時間軸に送る事が出来る。
私がセットし終わる時、ギードが能力の箱を持ったままやってきた
「時間をセットしてくれたのか?助かるよ。やっぱり、今は魔眼しか無かった。後から追って追加しよう」
ギードが、私に箱を渡してきた。中を見ると、いくつか能力玉が入っている。
「随分と沢山入ってるわね?」
よく見ると、小さなスキルばかりだ。
「無いよりはいいだろ?」
ギードは、凪に付けられるスキルは、つけてあげるつもりみたいだ。
「…ありがとうギード」
私はギードの優しさに少しだけ感動した。
「とりあえず、鑑定に強い魔眼と細かいスキルをつけて『真実の瞳』は『天啓』を送る時に付ければ良くないか?」
そう、凪には神から『天啓』を送らなければならないみたいだ。
「ギード『天啓』は私が送ってもいい?」
可能なら、私が伝えたい。
「ああ、その時はまた声をかけるよ」
ギードは、そう言って『転生の間』に入って行く。私も彼に続いて部屋の中に入った。
「プルクラ、凪の記憶の消去と、転生は俺がやるよ。それでいいな?」
ギードは、準備をしながら、記憶消去の確認をしてきた。
私には、無理だと思ったのだろうな…
「でも、ギード出来るの?」
記憶の消去は、回収班の仕事のはずだ。
「俺、案内人の前は、回収班だったよ」
ギードの過去を聞いたのは初めてだった。
「そうなの?全く知らなかった!」
ギードは、ずっと案内人だと思っていた。
「お前とは、案内人に移動になった時の同僚だからな」
もしかしたら、私より長い時間、天界の仕事をしていたのだろうか?
「ギードの方が長く天界にいるの?」
どの位先輩なのかしら?
「どうかな?とりあえず俺は、回収班から案内人だけだぞ」
あれ?案内人の仕事は、私の方が若干先輩だった様な…
「私は案内人は、向かなかったからすぐに辞めて『転生を司る女神』になったわね」
呪文が苦手で、後から入ったギードにすぐに抜かれたはずだ。
「確かに向かなかったよな。総年数としては俺とお前は同じぐらいだろ」
調べれば分かるだろうけど、年数が長すぎて、100年200年違った所で誤差だ。
「そうね?」
ギードは、準備が終わったみたい。彼は、無駄話をして気を紛らわせてくれていた。
「プルクラ取り出すけど、泣くなよ?」
ギードは、気遣う様に声を掛けてきた。
「泣かないわよ」
私は、必死に虚勢を張ってみた。
「/ˌjoʊ.deɪˈiː.niː.koʊ.koʊˈjoʊ.iː.ʃiː.məˌtɑː.ruːˈnɑː.tʃuː/」
ギードが私から凪の魂を取り出した。
凪の魂は、以前と違い光っている。その光が優しくて凪らしいと思った。
私はそれを見て、やっぱり我慢できずに、涙が流れてきてしまった。
「やっぱり泣くじゃないか」
ギードは、私の二の腕を掴み、彼の元にグイッと引き寄せ肩に腕を回した。
「プルクラ、凪の記憶を消すぞ」
私は、寂しさに耐え切れず、ギードにしがみついたまま泣きながら頷いた。
ギードは私を抱きしめたまま呪文を唱えた。
「/ˌjoʊ.kiː.uːˈʃoʊ.hɑː.deɪˈmoʊ.oʊ.teɪ.siː.koʊ.noʊ.woʊˌkeɪ.dɑːˈkiː.ʃiː.tʃiː/」
凪の魂から、キラキラと思い出のカケラが溢れ落ちて行く。
嫌な思い出すら、手放すときは綺麗なんだなと泣きながら見つめてしまった。
「凪、お別れは言わないわ…」
ギードが、次々と凪の魂に能力を授けている。細やかな能力だけどかなり沢山あった。
沢山の能力を授かった凪の魂は、力強く虹色に光り輝いている。
「転生は、お前がやるか?」
ギードが、凪の転生を私に任せてくれた。
「そうね、やってもいい?」
自分の手で凪を送り出してあげたい。
「ああ、何があっても、何とかするよ」
結局ギードには、凪の事で、沢山の借りができてしまったわ
「さすがプロね頼もしいわね」
私はそう言って、凪の魂に向かって、久しぶりに苦手な転生の呪文を唱えた。
——さすがに失敗できないわ
ギードは、呪文の間、緊張で膝がガクガクする私をずっと支えていてくれた。
「/ˈheɪ.mə ˌtaɪ.kuː.ˈmuː.niː ˌiː.sɛn.ˈdʒɪə.ɹuː ˌnɑː.ɡiː.tsuː/」
——上手く出来たわ!
床に穴が空き、凪の魂は吸い込まれる。この宇宙空間のどこかに、凪が転生するんだ。
「行ってらっしゃい凪」
今度は優しい世界で幸せになるのよ
ここまで読んで頂きありがとうございました。
女神に転生!は私の作る世界を運営している神様達を描いた話なので、よく見たら他のお話に出てきた人の名前や、魂の過去などが出て来ています。
実は、凪の魂も、異世界5国リンクスシリーズに出てくる、とある女の子の前世で、その子の前世をちょっとだけお見せした話です。
物語は終わりましたが、この後、エピローグを書きました。そこに、凪の転生後がちょっとだけ描かれています。
良かったら、最後まで見て下さいね!
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