お邪魔虫?
凪と話し合った日から、私は凪の様子に注意をして、交代しながら仕事を進めている。
あの日から凪が少し変化した。全体的に積極性が上がり、自ら動きたがる事が増えた。
——そろそろ凪を休ませたいわね
張り切るのはいいが、疲れてしまっては元も子もない。
今は、創造神ディミウルゴスに提出する為の『定期報告書』を作成している。
こればかりは、凪には頼めないので、渋々まとめていた。
コンコン ガチャッ
「プルクラ、アルビトルから、魂の数の変動表を貰ってきたぞ」
ギードが、紙束と共に現れた。
すると、凪の心があからさまに反応した。ウキウキそわそわと、落ち着かない。
最近、ギードが来る度、凪は会話をしたいのか、彼に向かう熱意をすごく感じる。
普段、私しか会話しないから、凪の気持ちも理解出来る。今もかなり浮かれている。
通常なら、すぐに凪と交代するけど、今は大切な仕事中なので無理だ。
「ギードがアルビトルから任されたって、急な変動でもあったの?」
『世界の魂数調整』をしているアルビトルは、滅多に修正をかける事は無い。
私は一覧を覗き込んだ。
「どうも、この世界で、またバグが発生したみたいでな…魂の数が狂っているみたいだ」
ギードが指した先には、先日賢者を送り込む事を決めた世界の名前があった。
「やだ、ついこの間、送る事を決めちゃったわ。変更した方がいいのかしら?」
私は、慌てて資料を出そうとしたが
「いや、送ってほしいみたいだ。平和な世界のはずが、バグのせいで、今は少し荒れているし、どうも、勇者召喚が行われそうだ」
召喚…
「この世界に、異世界転移の予定が?」
だから、賢者が送り込まれるのかしら?
「ああ、そうみたいだぞ」
ギードは、転移を肯定する様に頷いた。
「この世界を司る神達は、ちょっとクセが強いから、要望がやたらと多くて嫌になるよ」
ギードは窓口だから、苦笑いしている。
「とりあえず、変動はあるけど、今のところは気にしなくてもいいのね?」
とりあえず、お知らせって事でいいかな?
ホッとしたら、急に凪の気持ちが、ざわざわしている事に気付いた。
「ギード、今忙しい?」
私が尋ねたら、ギードはキョトンとして
「今?暇では無いが、なんかあったか?」
と、こちらに気を回してくれたので
「ちょっと凪と変わるわ」
と、言って凪とチェンジした。
(凪、言いたい事があるなら、言ったら?)
凪がギードに対して、なんらかの思いがあったのだろう。
私がギードと話す間、凪の気持ちは、ずっとザワザワしていた。
「あ!プルクラ、ちが、違うの!」
凪は何故か慌ててるけど、あれだけザワザワしておいて、何も無いとかありえない
(ギードに聞きたい事があるなら、ちゃんと話をしなさいね)
私はそれ以降は黙る事にした。
「凪、俺に何か用事があったのか?」
ギードが不思議そうに凪に尋ねた。
「えっと、その、ギードさんとお喋りがしたかったのです!」
凪は慌てた結果、ギードにめちゃくちゃストレートに希望をぶつけた。
「は?お喋りって、俺とか?」
ギードは、困った顔をしている。
「あの…ダメですか?」
凪は恐る恐るギードに尋ねた。
「ぐうっ…ダメじゃ無いけど」
ギードが、何故か唸りながら答えている。
凪と話をするだけなのに、ギードは何をそんなに焦っているのかしら?
2人がお茶を飲みながら話をしているのを観察していて気付いた。
——あれ?もしかして、凪…ギードの事…
ギードも、いつもと違うし、もしかしてこの2人、いい感じなの?
——待って、もしかして、邪魔なのは私?!
2人にとって、お邪魔虫だったのかしら?
どうしようか、どうしたらいいか、まずいな、とりあえず、本人に聞くか…
私が迷っていたら、ギードが
「そろそろ仕事に戻ります。プルクラ、後でまた話があるから」
私に伝言を残したギードは、さっさと部屋を出て行った。
私はすぐに、ギードとお喋りをして、ふわふわと浮かれている凪と入れ替わった。
「凪、あなた、もしかしてギードの事…」
凪に問いかけてみたら、彼女の心がドキンと跳ねて、バクバクと心が乱れている。
(違います!別にギードさんの事が好きとか、そんなんじゃ無いです!)
口に出すまでも無かったか…
「凪、私はまだ何も言ってないわよ」
何も言わずとも、凪が自白したんだけど、どうしたもんかな?
(プルクラ…ダメなのは分かってます。でも、初めて…こんな気持ちになったの。どうしたらいいのかわからないの)
ギードへの淡い恋心かと思ったけど、知らぬ間にしっかり、根付いていたみたいだ。
まさか、凪、自覚無しだったのかな?
「凪、心配しないで?初めての恋心なんて、そんなものよ?」
移ろいやすくて、脆くて、儚いわよね
私は、軽く流したつもりだったのだけど、何となく、今日は凪の様子が不安定に感じる
「凪、あなた、今日はもう休みなさい」
私はこの後、ギードとちょっとお話をしなければならない。
(大丈夫です。まだお仕事します)
凪は、心がゆらゆらしたまま、仕事をすると申し出てきた。
「ダメよ、あなたはすぐに無理をするのね」
仕方がない子だわ、とため息が出る。
(プルクラだって、いつも無理するじゃない)
珍しく凪が、反論してきた。
——やっぱり疲れてそうね?
「凪、私は女神だから、平気なの。あなたの魂は人の物、そもそも許容範囲が違うのよ」
私達神は、不眠不休が当たりなのだ。
人の魂は、適度に休息を取らなければ疲弊してしまう。
女神の私が眠るのは…趣味よ
(でも…)
凪は不安そうにしている。
「凪、大丈夫よ、貴女が楽しいならいいけど、疲れを感じなくなるのは、今までの辛さが大きすぎて見えなかったのかもね?」
麻痺していたのだろう。
「休息を取らずに、疲れた状態を、当たり前にしちゃダメよ?だから今日は休みなさい」
私に言われて、疲れを自覚した凪は、おとなしく眠りについた。
私は、凪の魂を深く眠らせ、私が解放するまでは起きないようにした。
ギードと真剣に話し合わなければならない




