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異世界転生の女神に転生! 〜ひとつのカラダにふたつの魂〜あなたが転生出来るまで、私の仕事を手伝って!  作者: 黒砂 無糖


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生きてるだけで役に立つ 

 眠りから目を覚ますと、凪が、何かに取り憑かれているかの様に一心不乱にレポートをまとめていた。



 私が目覚めた事に気づいていない様だ。



(凪、おはよう。おかげでよく眠れたわ。ありがとう。交代するわ)


 私は凪と交代しようとしたが、



「待って、ごめんなさい、あともう少しなの。後2枚で終わるから!」


 凪の強い拒否に一旦怯んだけれど、後2枚って、どういう事かしら?



(凪、私どれだけ寝ていたの?)


 凪に尋ねても、集中していて返事がない。



 手元にあるレポートを終わらせ、次のレポートに凪の手が伸びた瞬間



(凪、凪、止まりなさい!)


 私が強く伝えたら、凪はビクッとしてようやく止まってくれた。



「あ、プルクラ…ごめんなさい」


 凪の心に、一気に不安と恐怖が広がった。



 ——なんでこんなに、不安定なのよ?



 私は、黙って凪と入れ替わった。



(あ…)


 凪は、仕事を取り上げられて落胆しているが、今は仕事をしている場合ではない。



「凪、私が眠っている間に何かあった?」


 私は、怯えている凪に、出来るだけ優しく話しかけた。



(あ、えっ…プルクラ、怒ってないの?)


 凪の張り詰めていた緊張は解けたけど、何やら解釈違いを起こしていそうだ。



「頑張ってくれていたのに、なんで私が凪を怒るのよ?」


 私は、凪の話を聞こうと思い話を振った



(だって、私に任せたのよ?起きるまでに、全部終わらせなければいけないのでしょ?)


 凪は心底そう考えていたみたいだ。



「凪、貴女バカなの?」


 私は呆れて、つい強く返してしまった。



(あ…ご、ごめんなさい)


 すると、凪はまたギュッと縮こまり、怯えた感情を見せた。



 これは、凪が幼少期から暴力を振るわれていた弊害ね…


 私は、暴言、暴力をこれでもかと振るっていた、彼女の父親を思い出し、思わず顔を歪めた。



「凪ここは、貴女の今まで生きてきた世界ではないわ。だから怯えなくてもいいのよ?」


 とりあえず、凪を落ち着けよう。



(でも、役に立たなかった…)


 凪は、任された仕事が終わらなかった事を気にしている様だけど



「そもそも、全部やれなんて、私一言も言ってないわよ?一枚だけでも良かったのに」


 そう凪に伝えたら、凪が狼狽えだした。



(よ、余計な事してしまい、出過ぎた真似をしてしまい、申し訳ありませんでした)


 と、今度は謝る次第。


 肉体があったら土下座しそうな勢いだ。



「凪、落ち着いて?貴女の事は全く責めてないし、自由だと言ったわよね?大丈夫だからそんなに自分を責めないで?」


 凪は、今まで生きてきた世界と、あまりにも違う対応に、ひたすら混乱している。



(はい、申し訳あり…「ストップ!」


 凪がまだ謝ろうとしたので、私は凪の言葉を遮った。



「凪、謝らないで?何でそんなに必死になってしまったの?」


 順調だと思っていたのに…



(仕事を任されて、ギードさんにも応援されたから、役に立たないといけないと思って…)


 凪は、反省している様だけど、そもそも、良かれと思ってやってくれたのに、反省するとか、全く意味がわからない。



「凪、役に立ちたいと思ってくれたのは嬉しいわよ?でも、役に立たないからって怒られると思うのは間違っているわ」


 凪は、驚いたまま固まっている。


 なんとか考え方を改めなければ、今後転生する時にまた同じ事を繰り返すわね…



「任された仕事は、責任持たなければいけないけど、全部はお願いしてないわよ?そもそも、この仕事は私の仕事なの。甘えていたのは私なのよ?」


 凪をひとりにするのは、まだちょっと早かったかもしれない



「手伝ってくれた凪に対しては、感謝されるべき事であって、貴女が責められたり怒られる事じゃないの。わかる?」


 彼女は、大切に扱われた事がなかったのに、私は軽く考えすぎていたわ。



「凪がいなくなった世界を見て、自己犠牲のやりすぎは良くない事に気付いたかな?」


 私の投げかけに、凪は小さく頷いた。


 それがわかっていながら、まだ過去のしがらみが拭えないのか…



「貴女が自分を顧みず無理を通した分、後になって、誰かが不幸になる事もあるのよ」


 凪はハッとした。職場の同僚達の事を思い出したのだろう。



「それに、役に立つ、役に立たないって、人間関係はそんな利害だけで成り立つわけじゃないわよ?」


 凪は、えっ?と言って驚いている。彼女の周りには、利害関係で成り立つ人しかいなかったからだろう。



(昔から父が、役に立たないなら存在価値がないって…違うの?)


 あのクソ親父…


 根底から悲しい考えに支配されてるわね



「バカな事言わないで頂戴。人間社会で暮らしている限り、生きてるだけで誰かの役に立っているわ」


 私の言葉に、凪がポカンとしている。



「生きる為に食べるわよね?食事を作るには、食材がいる。電気、水道、ガスも使うし、使った分お金を払うわよね?」


 当たり前の事を語り出したので、凪は困惑したままだ。



「食材買うにもお金を払うわよね?そのお金は、作ったり、販売したり、働いている人に支払われて、その人達の生活を支える」


 凪はようやく、私の言いたい事が理解できたのだろう。


 凪の肩の力が抜けた。



「生きてるだけで、誰かの生活の糧になるし、役に立ってるのよ?」


 結構、皆、忘れちゃってるのよ



(でも、何もできなかったら、やっぱり…)


 凪は納得したくないみたいね。



「極端な事言うけど、病気になれば、病院で働く人の糧になるし、引きこもっていても、食事はするし、トイレにも行く。ね?生きてるだけで役立ってるでしょ?」


 私が、特例を挙げて凪を説き伏せたら、凪はこいつは何を言ってる?と更に困惑した。



「誰かの迷惑になる時でも、一方では誰かの役に立っているのよ。勿論、基本的には迷惑にはなりたくないだろうけどね?」


 迷惑にはなりたくないと言った所で、凪が深く頷いた様な気がした。



 凪の心が、すぐに変わるとは思わないけど、あくまでも知識として、頭の片隅に入ってくれたらそれでいい。



「凪、仕事をして、誰かの役に立つ事も必要だけど、疲れてしまった時は、生きてるだけで役に立っている事を忘れちゃダメよ」


 今度は、凪がしっかりと頷いてくれた。



(はい。教えて頂きありがとうございます)


 私の話が、少しだけでも凪を楽にできたらいいのだけど…



「元気になった時に、また誰かを助けられればいいじゃない。凪は自分を削りすぎないで?もっとゆっくり進んでいいのよ」


 だから、もう少し自分を大切にしてね?



(…ありがとうプルクラ)


 緊張が解けた凪が、ようやくふわりと笑った気がした。



「これからは間接的に、誰かを傷つける前に、立ち止まってね?」


 願わくば、彼女のこれからが幸せであってほしいと思う





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