開いた扉の向こうには
物語は、20話で完結+エピローグになります。
『能力開発部』を後にして、部屋に戻る時に、私はまた凪と入れ替わるつもりだ。
「ギード、入れ替わるから、凪を部屋まで案内してね」
私はギードにお願いすると、彼の返事も聞かずに凪と入れ替わった。
「あっ、おい、コラ!プルクラ!」
ギードが慌ててるけど、無視だ。
「あの…ごめんなさい」
いきなりギードに怒られた凪は、咄嗟に謝っていた。
「いやっ、その、全部プルクラが悪いだけだから、凪は気にしないで」
ギードは、凪には弱い様だ。
——折角だから、私は少し眠ろうかな
(凪、私少し眠るから、部屋に戻ったらさっき見た資料の続きを、まとめてくれる?)
私は、この際、事務仕事を凪に任せてみようと思って声を掛けてみた。
「え、私がやってもいいの?」
凪にパァっと喜びが広がった
(後からチェックはするけど、よろしくね。おやすみなさい)
私は今は、長々と話すつもりはないので、さっさと意識を閉じて、眠りについた。
***
「プルクラ、眠っちゃいました」
凪は、眉根を下げて、ちょっと困った様な顔をしている。
プルクラなら、絶対にしない表情だな…
俺は、見た目がプルクラでも、中身が違う彼女を前に、不思議な気持ちになる。
「あいつは全く休まないだろ?凪には悪いけど、ちょっとだけ休ませてやってくれ」
プルクラは、仕事中毒だ。
忙しいのも事実だが、全く手を抜かないから、いつも眠らずに仕事をこなしてる。
「はい。ギードさんは、プルクラの事が心配なんですね?」
凪は、頬を染め首を傾げながら、プルクラの顔で、声で、俺の気持ちを聞いてくる
——プルクラ、かなりやり難いぞ
実際、入れ替わっても、プルクラが丁寧な態度だったら咄嗟には分からないだろう。
「ずっと一緒に仕事してるからな、担当がプルクラじゃなくなったらやり難いだろうな」
本人は気づいていないが、プルクラはかなり人気が高い。
美人なのは勿論だけど、仕事がめちゃくちゃ出来るのに、ちょっと抜けてるし、裏表も無いから付き合いやすい。
——他の奴と組むとかは、考えられないな
俺が、ひとりうんうんと頷いていたら
「ギードさんは、プルクラの事好きなんですか?」
プルクラの声で、凪がとんでもない事を尋ねてきたから、
びっくりして、思わず凪を見た。
俺は、凪を見たはずなんだ…
そこには、胸元で手をキュッと握りしめ、恋をしている様なキラキラした目で、俺を見つめる
眩しい笑顔のプルクラの姿があった
「うっ…」
俺は、不覚にもプルクラの美しさに、思わず目が眩んでよろけてしまった。
「ギードさん?大丈夫ですか?」
凪が心配して慌てて、俺を支えてくれたけど、むしろそれは悪手でしかない。
「凪、大丈夫だから、気にしないで」
俺は手を振り、平気だと主張して、その後は出来るだけ凪を見ない事にした。
「俺はプルクラの事、好きも嫌いも考えたことすらなかった…(本当になかったか?)」
凪に質問されたから、答えようと思ったが、自分の言葉に自分で引っ掛かるとは…
「神様達は、恋愛しないんですか?」
凪はまだ若いから、気になる事なのだろう。
「恋愛ねぇ…する奴もいるけど、神によるかな?それは人も一緒だろう?」
俺達は長く生きすぎたから、あんまり感覚が無かったというか、気にしていなかっただけというか…
「そうなんですね…てっきり、ギードさんとプルクラは、仲良しだし、その、恋人同士なのかなって思っていたので」
凪は真っ赤になりながら、俺に話をしてくれたが、
照れて目を潤ませて、顔を赤くして、はにかんだ笑顔を見せるとか、
——正直、かなり目に毒だ
これはプルクラじゃない。これはプルクラじゃない。これはプルクラじゃない。これはプルクラじゃない。これはプルクラじゃな…
よし、大丈夫だ。
俺は脳内に呪文の様に刻みつけた。
「まあ、人間で言うなら、プルクラとは、ビジネスパートナーの関係だな」
うん、それが正解だ。
間違っても、邪な関係など、考えてないぞ!
俺は必死に、頭の中の騒音を、片っ端から色々と否定して歩いた。
そんな事をしながら、凪と話しつつ歩いていたら、あっという間に部屋に着いた。
「あ、付きました。送ってくださり、ありがとうございました。お茶でも飲んで行かれますか?」
凪が、それはもう可愛らしく、俺をお茶に誘ってくれたけれど、
「いや、まだ仕事があるから、失礼するよ。凪も資料まとめるんだろ?頑張れよ」
俺は出来るだけ爽やかに笑って、背を向けて手を振りながら、ゆっくり、最大限に大股で歩みを進めた。
曲がり角を曲がった瞬間
俺はダッシュで自分の執務室に駆け込んだ。
「なんだよあれ!めちゃくちゃ可愛いとか反則じゃねーか!この先、この気持ちどーすんだよ!」
俺は叫んだ。
プルクラは昔から好きだった。
長い時間かけて、気持ちを浄化したんだ。
な、の、に
劇薬をぶちまけられた。
別に俺は、可愛いプルクラが好きだったわけじゃない。
たまに見せる笑顔や、油断した顔が、俺はたまらなく好きだったんだ。
すっかり、仕舞い込んでいたはずなのに、一瞬で閉ざしていたはずの扉が消し飛んだ。
しかし、あんな表情も出来たのかよ…
思い出しただけで、込み上げて来るものがあるが…
でも、中身がプルクラじゃないから、
やっぱりちょっと、違うんだよなぁ
ここ読んで頂きありがとうございました、
お話は残り後5話+エピローグです。
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