父の原因不明の病ともう一つの病
私が中学3年生になり、何ヶ月かたった頃、父が体調を崩した。
相変わらず、お酒を朝から飲み続け、そんな生活を毎日のように繰り返していたある時だった。
父がよく吐くようになった。
何も食べていないのに吐いて、それが何日もあった。
急いで救急車を呼び父は病院に搬送された。
父はICUに入院することになった。
次の日、お見舞いに行くと私のおじいちゃんがいて、父は自分のお父さんの会社で働いていたため、その場で会社を辞めることを伝えていた。
また次の日、事件が起きた。
翌日の朝、突然、病院から母に電話があったのだ。
不安になった私たちはスピーカーにして話を聞いた。
すると看護師の方が慌ててこう言った。
「旦那さんが病室で暴れてます!」
「早く来てください!」
衝撃だった。父が病室で暴れているなんて…
父は昔から格闘技をしてたと自慢げに話していたので、誰か怪我をしたらどうしようと思った。
病院につき、ICUの個室に移っていた父に会いに行くと、目は虚ろで、話してることは訳がわからず、仕舞いには、管を無理矢理引っこ抜こうとしていた。
母が看護師さんと話している間、私は父と病室で二人きりになり、すごく怖かった。父は私に対して、ハサミをとってこいと命令し、私が「なんで?」と聞くと、「この管を切るんや」と言われた。絶対ダメと言うとベットを殴って怒りを露わにし、暴れようとしていた。もっと怖くなった私は急いで看護師さんを呼び、何人もの看護師さんが父を押さえつけて暴れるのを阻止していた。
ICUの個室だったこともあり、パニックになったのだろうと主治医の方に言われ、すぐに病室を一般病棟に移すことになった。だが、いつ暴れるか分からない父をそのまま連れ出すわけにも行かないので、父は車椅子に乗せられ、ベルトで上半身も下半身も固定され、そのまま病室を移動した。
私は怖くて母と一度家に帰ったが、母はもう一度病室に戻り、父のそばにいたそう。
その時も、よく分からないことを言い、母だけでなく看護師さんも困らせていたそう。
母はその後、主治医の先生に言われたそう。
原因不明だと。膵臓のあたりだけど、何かは分からない原因不明だと言われたらしい。
後に父に聞くと、自分が暴れていたことも覚えていなかったらしい。
しばらく入院して体調が安定すると退院することになった。また再発の可能性もあるから定期検診には来るようにと言われた。そしてお酒を辞めることも。
だが、父は変わることはなかった…
退院してすぐ、お酒を飲み、翌日も、そのまた次の日も朝から晩までお酒を飲み、やめろと言えば、私と母に怒鳴って何も言えなくさせた。
そんな日が毎日続き、私は精神を病んだ。
高校に進学しても、人間関係が上手くいかず、私は高校二年になり、ストレスで毎日お腹を壊し、頭痛も酷く、学校にも行けないぐらいになった。そして結局、学校を中退した。
私には夢があった。声優になるという夢が。
でも、酷く否定され、何をやろうとも怒鳴られた挙句、私は諦めた。高校もちゃんと卒業したかった…
毎日毎日、怖いと思いながら生きて、何度も何度も死のうと思った。だけど、出来なかった。死ぬことすら怖くて、何も出来なかった。私はただ臆病なだけだ。
そう分かったんだ。
高校を中退してしまった私は、引きこもるようになった。父と同じような人間になったんだ。そう思えば思うほど、醜い自分が嫌になる。何度も立ちあがろうとしても前に進めない。進もうとしてるのに、父はまるで私が何もしていないかのように責め立てる。
こうはなりたくないのに… 同じような道に進んでしまっている自分が許せない。だからいつか時間がかかっても絶対に変わってやると思った。
そんな父は、生活習慣を変えなかったからなのか、
また病気になった。
十二指腸に穴が開いたのだ。
すぐに救急車を呼び、すぐ手術。
いい加減これでお酒には懲りてくれと思った。
だが懲りることがないのが私の父。
退院してすぐお酒に溺れ、機嫌が悪くなると私と母に当たるばかり。もう恐怖のどん底だった。
頭の中では機嫌を損ねればいつか殺されるかもしれないという恐怖だけが頭の中を駆け回っていた。




