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現実

仕事を変えても、住んでるところを変えても、ずっとふわふわしてる。どこに着地できるのだろう。どこに着地したいのだろうか。

 


 夜光り続ける街が嫌になったわけじゃない。

 ただ定住することがむずがゆくて田舎に戻ってきたんだ。


 でもこれまでやってきた仕事にプライドがないわけじゃない。

 今まで積み重ねてきたキャリアは持ったまま、経験値は引き継いだまま、18年間住んでいた場所で働き、頑張りたかった。

 ただ、都会にいても、田舎にいても、俺はどこにいたとしても晴れない気持ちをずっと持ち続けていたんだと思う。テレビで誰かが言っていた芯のある人間ではなくて、ふにゃふにゃの紐を無理やりニスで固めたようなもろさをもともと持っていたんだと思う。

 だから俺はいつまでたっても中途半端で、いつまでたっても人に傷つけられるんだ。



 社長が言った。


 「周囲の君の評価は『人がいい』だ。横浜から帰ってきてこっちで新しく働いている君は、新社会人の  ような年齢でもない。にもかかわらず成果を上げられていないのは、周りの期待値からすると全然追い付いていないよ。わかるよね」

 

「はい」


 風邪をひき始めた俺ののどから出た返事はかすれていて、働き出してすぐ嫌いになったこの社長には、まるで重く受け止めているように聞こえただろうと思うと、魚の小骨が刺さったかのようにむずがゆくなる。


 「今年1年の働きを踏まえて、成長していくことを期待しているよ」


 最後に投げられた言葉には、お前にはがっかりだとフリガナをつけられるほど、目の前の大人の態度は同じ会社で働いているとは思えないほど他人奉行だった。



 周囲の君の評価はいい人

 これは「周りの人間も君に期待していたのに」と感じていることを暗に示しているんだろうなぁ。なんて思いながら仕事に戻る。

 そう感じるのは俺が人の言葉に敏感だからだろうか。

 いや、たぶん自覚しているからだろう。今の仕事場ではまったく畑が合わない。ずっと内臓が浮いているような浮遊感、嫌悪感を、4月から俺は感じている。


 「俺は生きるために仕事をしているけど、この仕事をしながら生きていけるのかな」


 デスクでひとりごちるが、もちろんその答えは見つからない。

のんびり書きなぐり、日々を積み重ねる

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