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4.私が主役(アンヌマリー)

アンヌマリー視点です。

「アッハハハハハ、やったわ!」

城から帰った後、着替えもそこそこにベッドに飛び込んで、そのまま笑い続けた。

「あぁ長かった。いろいろ苦労したけど、その甲斐があったわ」


姉のローズマリーとレオンハルトの婚約を聞いたのは、アンヌマリーが9歳の時だった。

聞いた時は「お姉様スゴイ」と、誇らしかった。

しかしそれから歯車が狂い始めた。

ローズマリーが婚約と同時に王太子妃教育の為、城に住むようになり家にはほとんど帰らなかった。

そのうえ家中が、ローズマリー中心になったのだ。

普段はさほどでもないが、ローズマリーが家に帰ると、誰もアンヌマリーには見向きもしなくなった。

家族一緒に食事をしても、両親は姉にばかり会話と笑顔を向けて、アンヌマリーには目もくれない。

話をしようとしても、顔をしかめて「ローズマリーと話しているのだから、邪魔をするな」という。

使用人達もローズマリーを心配して率先して世話を焼こうとし、アンヌマリーには「あら、いたんですか?」「アンヌマリー様は放っといても大丈夫でしょう。それよりローズマリー様が心配です」というばかり。

(ふんだ、何よ。お姉様なんか城で贅沢三昧してるくせに、あんなに顔色悪くてガリガリだなんて、我儘言って偏食してるんじゃないの?)

王太子の婚約者が城で暮らすのだから、当然公爵家なんかより待遇が良い筈だ。それなのにあんなに顔色悪くてやつれているなんて、我儘言い過ぎて罰を受けているか、好き嫌い言い過ぎてロクに食べてないのどちらかしか思えなかった。

この頃はやきもちは焼いても、婚約者の座を奪おうとまでは思わなかった。

決定的になったのは、レオンハルトが公爵家に挨拶に来た時だった。


「こんにちは、君がローズマリーの妹だね。私はレオンハルト=ヴェルヌ=ブライトンだ。これからよろしくね」

差し出された手とむけられた笑顔に、アンヌマリーは心を奪われた。

そしてローズマリーへの羨望が、嫉妬へと変わった。

(お姉様ズルい)

オルコット公爵家と王家を繋ぐ為の婚約ならアンヌマリーでもいい筈なのに、長女というだけでローズマリーが婚約者になったのだ。

(姉と言っても1つしか違わないし、顔だって姉とそっくりだし、私でもいい…いや、私の方がいい筈だ)

顔色悪くやつれた姉を思い出す。

(レオンハルト様だって、私の事を気に入ったみたいだもの。私が婚約者になる方が、皆の為になるわ)

次の日からアンヌマリーは、姉を陥れて婚約者の座を奪う事に全力を注いだ。

家族やレオンハルト達に『ローズマリーに虐められている』と、嘘を吹きこんだ。

これは半分失敗した。

ローズマリーはほとんど家に帰らず、たまに帰ってきても常に誰かしらついているので、家族や使用人達には『そんなわけないだろう、何言ってるんだか』という感じで軽くあしらわれたが、レオンハルトとその友人達は信じたようだった。

それからはレオンハルト達に的を絞った。

たまに帰った姉に「礼儀がなっていない」と言われれば「お前の礼儀は猿以下で、見苦しくて見ていられない」などの暴言に変えて、レオンハルトに泣きついた。

それ以外にも姉の部屋から、私物を持ち出しては自分のものにした。

姉に訴えられた両親が私に注意すると「いつもいなくて寂しいから、姉の物が欲しかった」などと言えば、両親は私に味方して「王太子妃になるのだから、広い心を持て」「妹に譲れ」と言った。

叱られて落ちこむ姉を見るのは痛快だった。

味を占めて、わざとローズマリーが特に大事にしていた物を持ち出して、レオンハルトの前で見せびらかしもした。

思いつく限り嫌がらせをして、レオンハルトの好意を得る事も出来たが、婚約だけ破棄させられなかった。

ローズマリーの持ち物もほとんど奪い取ってしまい、行き詰る事になった。

わざと転んだり、手を切ったりして「お姉様にやられた」と言ってみたが、やっぱりレオンハルト達しか信じず、レオンハルト達が憤慨するだけで終わった。

(いっそ階段から落ちるフリでもして、お姉様に突き落とされたという事にしようかしら?)

そんな風に悩んでいたある日、ローズマリーが事故で亡くなった。

(なんてラッキーなんだろう!)

「これからは、私が主役よ!」

レオンハルトと婚約して皆からちやほやされて、お城で好き勝手に暮らすのは私だ。

明日からの己の幸福を確信しながら、私は最高の気分で眠りについた。






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