第3話「魔導と魔法」
「よし、やるか」
次の日、日が昇ってすぐに動き出した。
まずは異世界転移の醍醐味。魔法だ。
魔法にはずっと憧れていた。
超常の現象。
この世ならざる力。
退屈した日々から連れ出してくれる、そんなものが今自分の手の中にある。
興奮せずにいられるか!
「えーとまずは四元…魔導?」
省略化されている部分をもう一度開いてみる
<四元魔導> -
<火魔導> <風魔導> <水魔導> <土魔導>
「四元か…四元って強弱関係あったっけ?なんかややこしかった気がするな…(ネットの知識)」
というかゲームやら小説やらによって違ったよな。この世界ではどうなってんだろ。
「とりあえず使ってみるか」
使い方はおそらく思い浮かべるだけ。
この世界は大体それでどうにかなる…多分
「まずは火」
手のひらに集中して火を思い浮かべる。
「…出ないな…魔導はこういうんじゃないのか?」
大抵小さい火が手のひらの上に浮かぶようなもんだけどな……(ネットの知識)。
魔導…魔導…。
「手のひらじゃ役不足ってことか?」
次はもっと大きく……とするならば――
「空だ」
湖の上空。かなり上の方を向いて火魔導を使ってみる。
その直後空に亀裂が走った。
「え、え、え?」
空が割れ、穴が開き、その奥に別の空間……世界が見えた。その世界は見える限り全て青く燃えている。
穴から青い炎があふれだしそうになった時、俺は直感的に危険を察知しすぐさま止めた。
止めた瞬間、空は何事もなかったように青空を見せた。
「…あれはダメだ。これは使っちゃだめだ」
おそらくあの穴からあふれ出してたらあたり一帯焼野原になってただろう。
「魔導は禁止だな」
そう思ってすぐステータスから表記が消えた。
使おうと思ったら再び現れると思うけど…使うようなことが起きないことを願おう。
「魔法試すか。あれよりはマシなはず…だよな」
よく考えればこの森ん中で火属性はマズイ。
次は水属性を試すことにした。
「まずは手のひらからやってみるか。またあんな大きなの出てきたら腰抜かしそうだ」
魔法創造。たぶん魔法も思った通りのものができるはずだ。
「小さい水の玉から…」
手のひらに集中してピンポン玉くらいの水球を思い浮かべてみる。
するとどこからともなく水が集まりアッというまに水球が出来上がった。
「これが異世界魔法か…すげえ」
目を輝かせずにはいられない。
夢にまで見た光景が今目の前に存在しているんだから。
「どれだけ大きくできるかやってみるか」
水球を手のひらから離して空中に浮かべる。
「手なくても使えるんだな。完全に思い浮かべるだけ…さっきのも手のひらもいらなかったんだ」
なんとなくやるせない気持ちになりながら目の前の水球に集中する。
水球は野球ボールくらいからサッカーボール、バランスボールくらいとどんどん大きくなていく。
「おいおい、どこまでデカくなるんだこれ。あ、魔力見てみるか」
魔法とかは魔力を使って発動するものだと相場が決まっている。
さっき魔導使ったときも見たらよかった。
ステータスを開いて魔力の減り具合を確認してみる。
「えーと…十の位で変化してんな…さっきは一だったっけ。どうやったら八千万使い切れるんだよ…」
よそ見している間にも水球はどんどん大きくなっていく。
すでに某テーマパーク前のオブジェクトぐらいのデカさになっていた。
「どれだけ大きくなっても魔力消費量に変化なし。”水球を大きくする”で一定の消費が続いていると…でも大きくなる速度はだんだん速くなってるんだよな…どういう仕組み?」
考えるのはやめた。
次魔力消費が大きい魔法使ってから消費量とか回復速度とか見るか。
「にしても…これ際限ないな多分」
すでに湖の半分ほどの大きさになっている。
「これそのまま落としたら確実にあふれるよな…魔導も消せたし…これも…」
水球を見ながら消えろと念じる。
刹那空中に浮かんでいた水球は跡形もなく消え去った。
「魔法便利~…これ使う人間がこの世界にいるって思うと寒気してきた」
水球が周りの温度を下げたってのも考えられるが…。こんなもので攻撃されたら…いや関係ないんだった。
言語習得の権能があるってことはこの世界には俺以外にも人間がいるってことだ。
…何年まともに話してないと思ってんだ。言葉わかっても話せるわけねえ。
「でもまあ、話せるようになれば……あ…また…」
またいつものだ。
でも感覚がちょっと大きくなっている気がする。
三日目にして効果ありか?異世界療法すごいな――…
目が覚めたらまだ日は昇り切っていなかった。
「昼前か?…目覚め速くなってんな。これっていいこと…だよな?」
何であれ活動時間が増えたって思うと喜ばしい。
「…待てよ…丸一日寝てたとかもあるかもしれない。でも確認するすべが…あったわ」
俺は権能創造で初期画面…これからはトップ画面と呼ぼう。そこに時計をつけた。
「ご丁寧に現在時刻もしっかりと…カレンダーもつけてみるか」
暦が地球と同じかどうかも調べてみよう。
サンプルはいくらでもとれる。何十年単位、何百年単位でも際限なく飽きるまで。
なんてったって不老不死なんだもの。
「便利なもの創って気づいたけど俺一番重要な物造ってねえじゃん」
身体が強くて地面に寝ててもまったく違和感なかったけど…。
「ちゃんと寝床作ろう。つか家作るか」
素材には困らねえしできるだろ。
数時間後
「…マイ〇ク〇フトかよ」
できたの完全な豆腐建築。とにかく木を加工して並べて繋げただけ。
「まあでも雨風しのげるしいいか」
床の木はちゃんと削ったはいいもののフローリングみたいにはならなかった。ささくれもある。
敷くシートみたいなのは作れたけどそれをちゃんと張りつけられていない。
内装とかやったことねえよ。
完全に硬い絨毯だ。
「まあ素足で歩くわけじゃないしな。海外式だとでも思っておこう」
寝具も作った。
まあ無理だよね。俺の想像力じゃ木枠に綿詰め込んで布かぶせるくらいしかできなかった。
寝心地はまあ察しの通りだ。
「…木枠なしにして巨大クッション作った方がよくね?」
てことでがんばって作った木枠を消した。
寝転がったクッションは中々よい。〇ギボー目指すか。
「今日からここが俺の第一拠点だ!」
家というにはお粗末だしな。
時間はたんまりあるし、ここから少しずつ進化させてこう。三十年もすればましなもん立てられるようになるはずだ。
…建築の本欲しいな。
「そういえば、図鑑ってまだ見てなかったな」
作ったクッションに座り<図鑑>を開く。
「…石しかなくね?」
図鑑に表示されてるのは石だけだった。
「自分で埋めてくパターンね。ものの作り方とか知れたらって思ったんだけどなあ」
権能を使っても生み出せないものは結構ある。
多分前の世界のものはオーバーテクノロジーとして認識されると作れないって制約があるみたいだ。
弓はそこまで影響を及ばなさそうだしフローリングもそういう扱いらしい。
「現代兵器無双はできませんってか。まあこの身体とスキルだけで十分チートは貰ってるしな」
高望みはしすぎるとよくない。さっきの魔導みたいに化け物じみたやつ貰っても怖いだけだし。
「それより、図鑑の埋め方だよ。なんで石だけ…あ」
思い出した。鑑定で石見たんだっけ。そして鑑定したのは石だけだ。
「てことは、えーと」
自分の座っているクッションを試しに鑑定してみる。
すると図鑑に見たまんまのクッションが追加された。
「おおできた…ってなんで最高級ってなってんだよ」
どう見ても売り物にならないレベルのものだ。
等級の決め方どうなってんだ?
「…この世界のレベルで見てってことか?」
そうなると文明レベルはかなり低いな。
これで最高級ってなると、お決まりの中世ってことはなさそうだ。もっと昔か。
「文明…よりまず人か…。接触するにはまだ早いかな~あと十年は一人でいたい…」
でも、いつでも接触できるように生活圏だけ調べておくのもありだな。
また今度やろう。
それから一週間ほど経ち、俺は知りうる限りの魔法をステータスに刻み込んだ。
しっかり名付けて規模を決めておいた方が便利だ。とっさに魔法使って後の祭りになるなんてのは嫌だからな。
「……これはもう詳細開くのやめとこう」
俺は所狭しと魔法名が書かれた一覧をそっと閉じた。
<魔法> 136 +
「生活の知識なくせにこういう知識はあるんだもんなあ。食べなくていい身体じゃないとそろそろ餓死してたんじゃないか?」
そう思うと怖い。餓死で死ぬのはつらいだろうからな。
魔法以外にもこの辺をちょっとだけ散歩してみた。拠点の周りにはいなかったけど、それなりに動物がいることがわかった。見たことがあるようなものばかりだったが大抵どこかが違う。鹿の角は輝いていたし、虫は結構大きい。
苦手なクモは出なかった。出くわしたら迷わず特大の魔法をぶちかます自信がある。ありえないほどデカかったら魔導使うかもしれない。それくらい嫌いだ。
ああ、あと地図と距離も測れるように権能を創造した。探索できたのは大体1キロ圏内だ。過眠症で急に眠くなったら怖いからな。もし森で寝てしまって起きたら虫に囲まれてたとかなったら……考えたくもない。
睡眠障害はまだ直らない。
でもどんどん良くなっている気はする。まだストレス感じることがないからだと思う。完治も近いかもしれない。
「…あっと…来おったな…」
クッションに寝ころび目を閉じた。
目が覚めて拠点の外に出て時計を見る。
「よし、今回は45分。いい感じに縮まってるな」
伸びをして体を伸ばしているとあるモノが目に映った。
「なんだよこれ……」
俺の足元には頭に布袋をかぶり、手足を縄で縛られた少女が力なく倒れていた。




