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ひゃくものがたり

2. 目と目が

作者: 久那 菜鞠


 家の中で一番嫌いな場所は、洗面所だ。

うちの洗面所はちょっと構造が変で、洗面台の反対側の壁に姿見があるのだ。

姿見があるのは良いけど、なんで洗面台の反対側にあるんだ。

洗面台の鏡と姿見で、鏡と鏡が向かい合ってるじゃないか。

普通に気味が悪いし怖いんだけど。

この配置を考えた人は、合わせ鏡は縁起が悪いって小学校で習わなかったのか。

友達と放課後に怖い話をすることが楽しい小学生時代を過ごした人間なら、普通は思いつかないでしょ。

たぶん友達居なかった人が考えたんだろうな、この家。

ふざけんな。


 うら若くてお洒落が楽しい普通に今時の女子高校生の私。

そんな気味悪い洗面所であってもお洒落のためには鏡の前に立つしかない。

部屋に大きい姿見が欲しいとお母さんに頼んだけど、鏡なら洗面所に2つもあるでしょ、家の中にそんなにたくさん鏡はいらないって言われた。お父さんには、お母さんに言ってって言われた。ちくしょう。

一応卓上のミラーは持ってる。100均で買ったやつだけど。悪くはないけど小さいし、髪をいじるときにはやっぱり広くて明るい場所で、大きい鏡を使いたい。

だから怖いのを我慢して洗面所の鏡を使う。お洒落に犠牲はつきものだって、冬でもミニスカ素足の友達が言ってた。見習わねば。


 昼間はまだ良いけど、夜なんかは洒落にならないぐらい怖い。

風呂上がりのドライヤーとか、歯磨きとかはまじでつらい。洗面台の鏡に向き合いながら、その中に写る反対側の姿見は見ないように毎日頑張ってる。

そもそも、ホラーとか普通に怖いし、嫌いだし。

お母さんとか、夏の心霊番組を一緒に見てると引くぐらい怖がってるのにこの鏡は平気なわけ?

意味分からん。


 今日も、頑張ってドライヤーした。後は寝る前の歯磨きだけだ。

トイレを済まして、洗面所に向かう。先にトイレに行くのは、鏡のことがあって怖い思いをした後に、トイレに行くとか無理だから。怖すぎ。

洗面台に向き合う。歯ブラシに歯磨き粉をつけたら、歯磨き開始。鼻歌歌ったり、ケータイで動画をかけたりしながらいつも気を紛らわしてる。

一番怖い瞬間は、口をゆすいで顔を上げる瞬間。

よくあるじゃん、顔を上げた瞬間に背後に幽霊が立ってるとか、鏡の中に幽霊がいるとか・・・。

やば、考えてたら気になってきちゃった。


 口から水を吐き出して、顔を上げる。

余計なことを考えてたからか、つい、鏡をよく見ちゃった。鏡の中に写る、反対側の鏡を見てしまった。

鏡越しに、反対の鏡の中の私と目が合った。

口をぽかんと開けて、なんかアホな顔してた。

うわ、可愛いくない顔、やば。

顔をしかめたら、向こう側の私も顔をしかめてた。

まあ鏡だし、当たり前だよな。


でもやっぱ、合わせ鏡って怖いから何とかして欲しいけど。

小学生の頃に友達から聞いた、いろんな合わせ鏡の怖い話を思い出しちゃった。

あの世と繋がってるとか、向こう側にいる自分に鏡の中に引きづられて入れ替わっちゃうとか。

根も葉もない都市伝説?なんだけどさ、普通に怖いし。


あー、よかった。何にも無くて。

歯磨き終わったし、部屋帰ろ。

歯ブラシをコップの中に放り込んでいつもの場所に置いて、顔を上げて鏡を見た。


向こう側の私が、にっこり笑ってるが見えた。

あ、


                         終





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