第50話：運命
遂に……遂に、『日本代表決定戦』の開催が決まった！
でも、それは裏を返せば、日本がこのゲームで大きな国単位の要求を突き付けられ、その要求に対する解決の方法として、このゲームが必要になった事を意味する。
恐るべき事態だ。
『日本代表決定戦』の候補者は、全部で1000名。その中から、上位5名を選抜する。
海外勢の出場が無い、と云う事を考えれば、『Venues』さんの実力を推し量るチャンスだ。
そして、老師・岡本を除き、チーム・老師・岡本道場のメンバーは、全員が候補者として参加の是非を問われた。
当然、全員が参加を表明した。
日本国内ランキングの上位1000名を候補者とした訳では無い事は明らかだ。何故ならば、老師・岡本が候補者になっていないからだ。
恐らくは、直近のゲーム参加回数等にも因ると思われる。
その為、夕姫の急速育成の必要が生じて、老師・岡本が夕姫の道場で行う全ゲームをチェックした。
対戦後には、指導対局もする。
若さとは、素晴らしいものだ。夕姫はスムーズに老師・岡本の指導を飲み込んでいった。
世界は、未だ『TatS』のシステムを理解していない。日本に要求を呑ませようとした国も、何故、他の惑星への優遇トレードが、自らの惑星にとって有利であるかと云う事実を理解していない。
『TatS』とは、共存共栄のゲームなのだ。極端に得点を稼いだ単独の惑星は大きな失点を伴う。
それに対し、チーム・老師・岡本道場は、チーム内でチーム内の他の惑星への優遇トレードを行う事によって、失点を殆ど受けずに高得点をチーム内全員が獲得する。
共存共栄を目指しておらず、最悪の場合には軍事力で無理矢理自国の言い分を相手国に通す、野蛮な文化力の低い国に負ける等と云う事は、許してはならない。
今回の選抜に依る対戦を仮に日本が勝利したとしても、社会主義国はその時は軍事力を行使するまでだ、と考えている可能性が高い。
もしも神がそれを赦すなら、世界は破滅を迎えるであろう。
と云うか、ほぼ全ての符号が合っているのだ。核戦争による全世界の破滅は、ほぼ確定的に見えている。
問題は、核保有国がその行使を我慢出来るかの問題となる。
そして、怒り狂ったサタンがひと柱、核保有国のトップに立っている──
もう、確信を持って言おう。
西暦2026年6月6日。
露が札幌に核を落とす！
恐らくは、隠れた(実際には殆ど隠れていなく、ただ目立たないだけなのだが)キーパーソンの殺害、及び『蝿の王』の駆逐。ソレが目的だ。
ソレを回避出来たとしても、ソレは日付の変更程度であり、ソレ以前に日露戦争が始まっている筈だ。
例え、宇との二正面作戦になろうとも。
まず、軍事力の規模が違い過ぎるから、露は勝利を疑っていないだろう。
窮鼠猫を噛む、を思い知って頂こう。
同時に、中と朝も動き、恐らくは韓も巻き込まれる。
堕天使戦争。ソレによって、少なくとも日本は壊滅的なダメージを受ける。
勝ち目？無いだろう。引き分けに持ち込めたとしても、ソレは全世界を巻き込み、破滅を齎す世界規模の核戦争の結果であろう。
──で、あるからこそ、今周期ではその可能性を回避したい！
例えば、核兵器の打ち上げ直後の暴発。
例えば、日本侵攻を企む各国首相の病死。
例えば、世界中で『天罰が下る』事態への気付き。
例えば……
例を挙げれば、キリが無い。
ソレは、日本人に対しても言える。
いい加減、北方四島を諦めろ、と。
言論の自由、大いに結構だ。
だが、領土の境は既に定められている。
北方四島を求める余り、北海道が奪われたら、責任が取れるのか？
命を以てしても償い切れないだろう。
北海道には、日本の石油貯蔵タンクがある。
ソレを奪われたら、日本のエネルギー問題が破滅的になる。
日本は、『TatS』或いは代替eスポーツに於いて、負けてはならないのだ。
老師・岡本道場では、皆がソレを理解している。
但し、露が北海道を賭けてeスポーツで競うと言い出した場合、日本が勝った時に求める条件は、北方四島だけでは済まない。
せめて、樺太位は加えて賭けてくれないと、釣り合わない。
否、それでも足りない。
露の領土の、東から2割。その位は賭けて貰わなければ、日本にとっての北海道とは釣り合わない。
譲渡では無く、租借でも構わない。
99年の租借を受けた後、発展したその領土を返還しよう。
この条件で不十分だと言うならば、世界の全てが滅ぶ覚悟で札幌に核弾頭を落として来なさい！
世界の全てが滅ぶと云う事が、露も中も朝も滅ぶと云う意味だと理解しているのでしたらね！
少なくとも、チーム・老師・岡本道場は負けないわ！
だから！まずは日本代表の全ての枠を、チーム・老師・岡本道場で独占させて貰うわよ！
でも、どうせ負けたら軍事力の行使によって無理矢理に領土を奪う、野蛮人なんでしょうけれどね！
文化による侵略を行なえる程の文化性も持っていないでしょうからね！
