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魔王が齎す明るい未来  作者: 月詠 夜光


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第3話:ゲームの沼

 昼姫が参加を申し込んだ『eスポーツを体験してみよう!』のプログラムは、10名ほどが参加を申し込んでいた。


 その内の一人、岡本(おかもと) (ただし)が経験者であるらしく、軽く説明をしていた。


 参加している岡本以外の男性の視線は、昼姫に集中していた。


 チラッチラッと(のぞ)いているようだが、昼姫からしてみたら、ガッツリ見られている。


「じゃあ、この『パーソナル・ファイター』って云うゲームをダウンロードして、キャラクターを作ってみて」


 『eスポーツ』の中でも、特にこのプログラムで推奨しているのは、個人個人がキャラクターを作れて育成出来る、『パーソナル・ファイター』と云うゲームだった。


 課金も出来るみたいだけど、「無課金を推奨します」との教えの下、質問すれば岡本が答えてくれて、昼姫はなるべくバランスの良いキャラクター作りを目指した。


「キャラクターが出来た人から、対戦を試みて下さい。


 勝ち負けとかは、今は気にしないで、思い通りに操れるようになる事を目指して下さい」


 操作は、スマホを横にして持ち、左手で上下左右、右手で防御、武器攻撃、蹴り攻撃を操作するようだった。


 防御、武器攻撃、蹴り攻撃は、バー()のようになっており、左に寄せるほど強く遅く、右に寄せるほど弱く早く効果を発揮するらしい。


 バーは大まかに分けて、10段階に分かれているらしい。


 じゃあまあ、やってみようと云う事になって、推奨されていた、初心者用のCPUキャラと対戦と云う事になったのだけれど。


 まぁ、まず動きが判らない、攻撃出来ない、防御出来ない、──となったのだけれど。


「──何これ。面白い!」


 昼姫はやる気を出してしまったらしかった。


 何度か対戦している内に、岡本さんから指導も受けて、何とか戦える形が見えて来た頃にそのプログラムの終了の時がやって来た。


「はい、じゃあ、今日はここまで!お疲れ様でした」


 当然の如く、プログラム終了後も、他のプログラムにも参加せずに、昼姫はそのゲームに打ち込んだ。


「──あっ!」


 途中で気付いたらしく、ゲームを中断してトイレに向かい、鏡を覗き込む。


「……やっぱり」


 薄っすらと、(くま)が出来ている。


 昼姫は、「今日はココまで!」と判断して、スマホを仕舞いこみ、他のプログラムに参加するも、どこか上の空……。


 結局、何日かは少しずつでもそのゲームを進めて、次の『eスポーツを体験してみよう!』のプログラムに参加したものの。


「今日は、対人戦が出来る事を目標としましょう!」


 岡本先生が、そんな事を言い出した。


 急に不安がる昼姫。


「大丈夫、強いCPUキャラより強い人は、そう多くは居ないから」


 その言葉を信じて、昼姫は『Morning』のアカウント名で対戦を申し込んだ。


 相手は、『Fujiko』。女の子だろうか?熟練者で無い事を祈るのだが──


「ふぇぇぇぇぇぇぇ!」


 ボッコボコに叩きのめされて初めての対人戦は終わった。


「『Fujiko』さんかぁ。相手が悪かったね。儂も対戦経験があるプレイヤーだけど、中々手強い相手だよ。


 まぁ、今回の負けは気にしないで!時間内にどんどん、対戦を申し込んでみて!」


 言われるがままに対戦を申し込み、もう一度は負けるのだけれど、何とか一日のトータルは3勝2敗と勝ち越した。


 そして、岡本さんも『魔王』なのだろうか、こう言われた。


「さぁ、皆さん。ゲームの沼へようこそ!」


 ()まり込んで抜け出せない。『沼』と云う言葉には、そんな意味合いが含まれているかのように思われたのだった。

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