先ずは空腹な俺に肉を堪能させてくれ
球体メッシュに入って、走り回ってペラッペラを駆逐し続ける事5分。
「はぁハァはぁハァはぁハァ──!!」
クッソ疲れた!!
ってか、基本、メッシュな球体に入って俺が走り回っているだけだから、
「ハァハァハァハァ──!!」
原動力は俺で、速度も俺で、走行距離も俺なワケで。
「っ駄目だ、コりゃぁあ!!」
って事で、一回、球体に銃用の穴を空けて、中で座って休みながら銃で掃射。
銃で掃射も良いんだけど、
「指が……」
フルオートじゃないから、いちいちトリガーを引かないと弾が出なくて指が死ねる!!
人差し指、中指、薬指と、指が疲れる度に指を変えまくってるけど、
「どんだけ俺に指を鍛えさせたいんだよ!!」
疲労に空腹も相まって、軽くオコな俺なう。
流石にこのままではジリ貧待ったなし。
ってか、俺ん家の横のマンションに住んでいる筈の桜田が、この外の状況に気づいてないってはおかしすぎる。
このペラッペラを操っている能力者をなんとかしなければ、マジで死ねる。
って事で、ペラッペラ共を無視して、人が居そうな場所……
雫ん家方面に向かって歩く。
ってか、アイツん家が崩壊しても、敵に家バレしたとしても、アイツの不始末って事でなんとかなるだろ?
知らんけど。
まぁ、俺ん家が無事ならそれで良いや。
歩く度にちょくちょくペラッペラがちょっかいを出してくるけど、
「もう無駄だから。 俺、今、賢者タイム中だから」
何処ぞに隠れて居るであろう、姿が見えない能力者に向かって呟いておく。
そうこうしている内に雫ん家の前に到着。
コンビニは明るいけど、人が居る様子が見られない。
こりゃぁ、此処もダメか?
と、軽く諦めながら門を潜り、竹林を進み、母屋の方に向かうと、
「──!?」
俺の目に信じられない光景が飛び込んできた。
「お、オマエら──!? なに、して──!?」
なんと、雫達が庭でバーベキューをしていた!?
雫、桜田、クリリン、ウP主、玉藻。
俺以外の全員が揃ってて、
「紅葉氏、何でござるかその格好?」
「紅葉! 来た!」
「ギャハっ──! アホがガチャガチャ化してんぞ!!」
「………………」
酒を飲み、肉を食いながら、メッシュ球体に入っている俺をバカ扱いしてきた。
「いや、おまえら…… ナニしてんの?」
「バーベキューでござる」
「え? 俺は?」
「みんなで何度も電話したけど、でなかったでござるよ」
「ってか、なんて格好してんだよオマエ? なんでボールの中に入ってんだよ? 引き籠もりバカが天元突破したのか?」
「………………」
イヤイヤイヤイヤ。
ナニ、コノ、天国と地獄?
俺が一人で襲われていたってのに?
は?
バーベキュー?
え?
バーベキュー?
マジ?
「いやね…… 俺、敵と戦ってたんですよ…… ってか、それが現在進行系なんですよ」
「えっ!?」
「ヲ”ぉ”い”っ!? バカ!? そんな事は早く言えよ!!」
「て、敵は何処でござるか!?」
「えーっと…… ん……? アレ?」
そう言えば、雫ん家に入ってからペラッペラが消えている?
「さっきまで、俺の周りにベタベタくっついていたんだけど…… アレ? 居なくなった?」
「ハァあ!? オマっ!? もしかして、敵を連れて私ん家に来やがったのか!?」
「うん」
「うんって、オマっ!? マジ死ねよ!! ナニしてくれてんだよ!! 巫山戯んなよっ!!」
イカれた戦闘狂でも、流石に家バレだけはNGだったようだ。
「大丈夫。 居なくなった?っポイ」
「居なくなったじゃねぇよ!! 玉藻! 敵は!?」
「うむ。 敷地内には妾達以外に理力の気配は無いのぉ」
「んじゃ、大丈夫だな」
やっとペラッペラから開放されて一安心。
そんじゃ、俺も魔力を解除して肉食お。
アムアム。
「イヤイヤイヤイヤ!? 大丈夫じゃねぇだろ!! 私ん家、バレてんじゃん!? マジ死ねよモヤシっ!! 呑気に肉食ってんじゃねぇよ!! 家に突撃されたらどうすんだよ!!」
「大丈夫。 アムアム。 敵の居場所は分かってるから。 アムアム」
「はぁあ!?」
「ホレ」
慌てふためくバカを鎮める為に、肉を食べながら足元を指さす。
俺が指さした地面には、
「線?」
俺が魔力で発現させた黒い線が引かれていて、
「此処ら辺の道路のアスファルトは、俺の魔力で覆っちゃったから」
「は?」
「これで、ペラッペラ共が帰って行った先は把握できた」
「は?」
「肉食ったら、狩りに行くから」
「は?」
俺の説明に、「は?」と言う一言しか言えなくなった雫。
まぁ、何も説明していない俺が悪いんだけど。
先ずは空腹な俺に肉を堪能させてくれ。
って事で、肉を食べながらさっきまでの出来事を説明してやろうじゃぁ、ないかっ。
………………
…………
……
…
「ペラッペラ?」
「喋る紙?」
「駅前に誰も居ない?」
「紐パン?」
俺が見て経験した、懇切丁寧な説明に対し、
「ホント。 これマジ。 嘘じゃないから」
みんなは信じられないと言った顔で俺を見てる。
けど、
「うむ。 もしかして、旦那様が戦っていたソレは、式神の形代やもしれぬのぉ」
「マジ? 式神って、陰陽師とかなアレ?」
「うむ。 此処ら一帯に人がおらぬのも、大規模に人避けの結界でも施されておるのだろう」
玉藻が俺をフォロー。
けど、
「下衆で臆病な陰陽師共め。 妾が今世で駆逐してくれようぞ」
陰陽師と因縁がある玉藻はブチ切れ寸前。
「それにしても、流石は妾の旦那様。 敵の奇襲をモノともせず、更には居場所まで突き止めてしまうとは」
「いや、俺だって、やる時はできる子だし。 ってか、人避けの結界?ってのがされているのに、なんでオマエラは此処に居るし?」
近くの道にも、門の横のコンビニにも人が居なかったんよ?
なーぜなーぜ?
「うむ。 雫の屋敷の敷地には魔を滅する結界がある。 そのおかげで、元々敷地内に居た妾達には影響がなかったのであろう」
「だったら、駅前に居た俺に影響出ろし。 俺だけ残すなし」
「旦那様が人避けの対象から外れる様、術式を組んでおったのであろうな」
「………………」
ピンポイントじゃん……
ガチで俺狙いじゃん……
「まぁ、運良く、妾達は全員が揃っておるし、旦那様によって術者の居場所も分かっておる故、ソノ、旦那様を狙った不届き者は、妾達、全勢力を持って駆逐してやろうぞ」
いや、恐ろしい事を言いながら、目が笑ってない笑顔でニコって返答を求められても、
「お、おぅ……」
こんなん、拒否権皆無だよね……?
「玉藻、ヌルい事言ってんじゃねぇぞ? 私の家がバレてる以上、そいつ等の組織は壊滅させてやる。 分かったな?」
「うむ。 それは妾も望むところよ」
「………………」
玉藻の私恨と雫の家バレが相乗効果を発揮した結果、どうやら、ヤヴァい2人の制御装置さんは、全力で仕事を放棄してしまった様だ。
コイツら、完全に殺る気マンマンじゃねぇか……
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