俺は平穏に毎日を過ごしたい
一晩で2つのハコを倒した俺達。
正確には、1つと1つのハコの眷属達。
あの時、何故か鎖野郎のハコの管理者がいなかった。
玉藻の気配察知にも引っかからなかったって事は、最初っから埠頭には来てなかったっぽい。
見たことない人を探し出すのとかマジで無理すぎて、眷属は全滅したから取り敢えず放置って事になった。
ってか、眷属を全滅させられたハコの管理者は、ジュークボックス終了後まで生き残る事ができれば、新たな眷属を再度見つける事ができるらしい。
マジか……
もし終了まで生き残ったとしても、復讐とかお礼参りとかだけは、どうか無しの方向でお願いします!
と、小心者な俺は心の中で祈りまくった。
そんで、俺達は桜田のリキャスト回復を待って、空を飛んで帰宅した。
相変わらず、フアフア感が最悪すぎて、家に到着と同時に、風呂もゲームも何もできずにソファーに顔から突っ伏して、そのまま眠ってチーンだった。
──翌朝──
目が覚めたのは12時過ぎ。
俺の黒い魔力は白い魔力とは違って、全く喪失感はないんだけど、
「ふぁ~あ──」
それでも、昨日は沢山の魔力を使ったからなのか、生きるか死ぬかの戦いをしたからなのか、色々な疲れが相乗効果を発揮しまくって、今の今までマジ爆睡。
買いだめしていた食パンとハムとスライスチーズを冷蔵庫から取り出して、ホットサンドプレートを使って、ちゃちゃっと簡単にホットサンドを作る。
勿論、シーザードレッシングを入れるのは忘れない!
作り終えたホットサンドが冷めるのを待つ間、急いで風呂に入って目覚めスッキリ。
そんで、風呂から出てホットサンドを食べようとしたところ、
「なんで食ってるし…… ってか、なんで居るし……」
玉藻とウP主が俺のホットサンドを食べていた。
マジでコイツらの不法侵入具合が猟奇的。
ってか、然るべき所に被害届を出したすぎる。
「旦那様は料理が上手いのぉ」
「千羽クンの隠れた才能ですね!」
「………………」
俺を本当に褒めてるのかリップサービスなのか知らんけど、そんな二人に対して無限に怒りが湧いてくる。
「………………」
ってか、コイツらに何を言ったところで無駄だと瞬時に悟り、自分の分を改めて作り直す。
「妾はもう一つ所望する」
「あ、私もおかわりお願いします!」
「ふぅ~……」
この自由な不法侵入者共にはマジで溜息しかでねぇ。
取り敢えず、3人分のホットサンドを作って一緒に食べる。
「んで、何しに来たし?」
質問しながら、ホットサンドの内側が冷めるのを待っている猫舌な俺。
速攻で食べ終えた二人が物欲しそうに俺のホットサンドを見てるけど、
「コレはやらん」
パンの表面をペロペロ舐めて、
「コレは俺のだ」
全力で死守する。
「最低……」
「寧ろ、妾にとってはご褒美でしかないな」
「ってか、お前ら出てけ」
結局、玉藻とウP主は、途中で買ってきたって言う今川焼きを取り出して食べ始めた。
最初っからソレ食っとけや!?
「妾達は、旦那様が心配で様子を見に来たのだ」
「は? なんで? 俺、怪我とか無いんだけど?」
「「………………」」
意味が分からなさすぎて、あっけらかんとした様子で答えたけど、
「うむ…… 自覚無しか……」
「末期ですね……」
「え?」
何故か可哀想な人を見る感じの目で見られた。
ってか、末期ってナニ?
「いくら復活するとは言え、ジュークボックス中は人が人を殺すんですよ?」
「で?」
「…………。 旦那様は、人を殺しても、なんとも思わなかったのかえ?」
「………………」
そう言えば、俺……
殺っちゃってたわ……
玉藻に言われて、初めて事の大きさに気付いた。
ってか今言われる迄、全く気にしてなかったし、スッカリその事が欠如していた。
「ウP主よ。 旦那様は、確実に虚無の影響を受けておるのぉ」
「その様ですね…… 千羽クン。 以前も伝えた通り、千羽クンのバグったチカラは、虚無のソレと全く同じなんですよ……」
「え?」
そう言えば……
初めてウP主と会った時に、そんな事言われた様な……
「旦那様は今、虚無を取り込んだ妾と同じ、若しくは、ソレ以上」
「マジ?」
「うむ」「です」
ナニこの、難病とか余命を宣告されてる様なアレな雰囲気……
「妾の経験上、そうであったとしても、生きていく上で何の支障も無いのだが……」
「……だが?」
「完全に、平穏な普通の生活をおくるのは無理、となる……」
「なん、で……」
「ソレは、旦那様が、唯一無二となるからよ」
「いや、意味が分からないだけど……」
「残念です……」
イヤイヤイヤイヤ!?
残念ってナニ!?
「ちょっ!? ウP主さん!? なんなのそのクッソ重い感じ!?」
「虚無の影響を受けた千羽クンは、全ての世界線の千羽クンが1つになってしまってるんですよ……」
「どう言う事!?」
「要は、全ての世界線の旦那様の存在が1つに集まってしまった故、妾の目の前に居る旦那様が死した場合、旦那様は魂ごと世界から消滅してしまうと言う事よ」
「は?」
「魂さえ残っていれば、ソレ系の異能を持った人に生き返らせて貰ったり、死んでも輪廻転生とか出来るんですけど…… 世界線が1つしか無い千羽クンや玉藻さんの場合、他の人達と違って、死んでも残機ナシって事で、一発ジ・エンドになります……」
「言い方軽っ!? ってか、内容重っ!?」
ウP主と玉藻に告げられた俺の状態は、俺には微塵も想像できなさすぎて、実感も何も沸かない。
ってか要は、死んだら終わりって事だ。
そんなの、改めて言われたところで今更すぎるし、輪廻転生できたとしても、どうせ今の記憶とか残せないんだろ?
だったら、今からそんな死後の事とか考えるだけ無駄で、俺は今生を毎日、平穏に過ごせればいい。
「だが、世界線が1つになった者は、尋常ではないチカラを得る事ができる」
「ですです。 世界線が少ない人ほど分散されていた魂が一箇所に集まって、長寿になったり、健康になったり、魔力が増えたり、異能がレベルアップしたりと、悪い事だらけではないんですよ」
「そんなの、いるかいらないかって言われても、マジでどうでも良いんだけど…… 魔法が使えて毎日が平穏でスローライフを俺は望んでんだけど……」
ホント、コレ。
「平穏でスローライフは甚だ微妙ですが、魔法は確実に使える様になるかと。 なんせ、紅葉クンが魔法を使えると言う世界線も一つになっているので、紅葉クンが考え、想像できる事は、通常よりも現実性が高くなりますよ」
「マジ?」
「マジです」
「………………」
いや、そんなに真剣な顔で即答でマジって言われても……
「でも、紅葉クンが魔法を使う為のトリガーは現時点では不明ですけど……」
「え?」
「うむ。 ウP主の言う通り、妾も未だに妾自身のチカラを十全に熟知しておらぬ。 妾の想像力が乏しいのか、それとも、未だにチカラを使うきっかけを掴めておらぬのか、それとも、妾にはまだ他に無数の世界線が残っておるのか……」
「玉藻サンも虚無を取り込んで徐々に世界線が少なくなっていっているとは言え、世界線はまだ1つになっていないですから」
「んだよ!? 結局、残基が1つなのは俺だけなんかい!?」
「そうですね……」
「旦那様。 それでも旦那様は妾のものだ」
「なんか解決策出せよ!? 全く解決できてねぇじゃん!?」
「今後の紅葉クン次第でどうにかなるかと」
「おいぃぃ!? 終いには俺に全部丸投げしちゃってるよぉぉぉおお!?」
「旦那様。 妾が側についておるぞ」
「だったら、解決策を持ってきて!!」
マジで結局コイツらは何しに来たんだよ!?
ってか寧ろ、俺に教えなくても良い情報なんじゃねコレ!?
こんなんマジで呪いじゃねぇか!!
こんなん聞かされたら、もっと引き籠もるぞ俺!?
結局、不法侵入者共は、俺を不安に陥れて、なんの解決策も出さずに帰って行った。
マジで、2度と来んな!!
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