オマエらの倫理観は間違いだらけぞ?
男が何かを言おうとしていたけど、
「グフぅ──!?」
俺は足の裏からイメージと魔力を流して、
「モヤシ…… いきなりすぎ…… ってか、エグすぎ……」
互い違いに並んだ、複数の鎌?の刃みたいなのを男の両側から挟みこむ様にして発現させて、
「クスクスクス── 妾の旦那様は容赦がないのぉ♪」
刃がバランスを崩して自重で一斉に倒れて、男が串刺しになった。
「グッサグサでござるな……」
ってか、引き裂かれた。
「スライスされちゃってるよ……」
ってか、千切れた……
「グロすぎです……」
最初は、トラバサミをイメージしてたけど、途中から、ハエトリグサっぽい方がカッコいいかな?って思ったけど、そう言えば、俺、トラバサミもハエトリグサも見た事ねぇし、構造とか仕掛けとか全く分からねぇって気づいたから、取り敢えず、目についた、ウP主がしているヘアクリップっぽいのを発現させたんだけど、
「………………」
エグすぎた……
しかし、みんなでグロな光景に放心している暇は全くなく、
「来るぞ!」
「旦那様! 葵とウP主を!」
雫と玉藻が機敏に動く。
「クソっ!」
ってか今は、目の前のグロが強烈すぎてアレコレ細かく考えられないから、みんなまとめてドームに入れる。
「なんなんだよ!? 次からつぎへと!!」
「ヒぃっ──!?」
「暗っ!?」
「暗いでござるぅぅぅううう!!」
「暗すぎっ!? 息がっ!」
「薫よ。 明かりを」
「う、うん! ソレ!!」
ってか、自分でやっておいてアレだけど、ドームの中が暗すぎて怖すぎ!!
いきなりな真っ暗闇のせいで、軽く呼吸困難になりかけたわ!!
そりゃぁ、中に入っていた囮にされた4人も、いきなりこんなんに閉じ込められたら、恐怖で精神がガックガクにもなるわな!!
マジで、クリリンが発現させた光の球と、腕に輝く『勇者』の光にどれだけ心が救われたことか。
流石は勇者様様。
メシアだよ!
って言うか、
「派手にやってるっぽいね……」
「ゲキオコでござるな……」
「そりゃぁ、いきなり、自分達のハコの管理者があんな無惨な殺され方をしたら……」
「モヤシ。 容赦なさすぎ」
「殺れって言ったのお前だし!?」
ドームの外から派手な音が鳴り響いていて、
「ってか、自分で言うのもアレだけど、本当に大丈夫かこのドーム?」
強度が不安すぎて落ち着けない。
「いや、大丈夫も何も。 こんなクッソ硬くて重いのとか、そう易々と突破できる訳がないでござるよ」
「葵ちゃん、マジ、ソレな。 コレを簡単に突破された日にゃ、死を潔く受け入れられる自信があるわ」
「でござるな。 逆に突破できたら吃驚でござるよ」
でも、雫たちにとっては、強度的に問題ないどころか、最強らしい。
「でもさぁ、どうやって帰るんだよコレ?」
でも、このまま籠城するのは流石にキツい。
ウンコしたくなったらどうすんだよ?
俺はトイレを作らせられるのか?
ってか、汚物で汚れた魔力を回収しなければならないのか!?
と、トイレ事情に頭を悩ませていたら、
「取り敢えず、オマエ、一回、周りの地面をトゲトゲだらけにしろよ?」
「でござるな」
「は?」
いきなり何言ってんだコイツら?
言っている意味がマジで意味不明なんだけど?
主語とか目的が抜けまくった、理解不能な事を言ってきた。
「なんで、だよ? ってか、トゲトゲってなんぞ?」
「アレだよアレ。 針みたいにクッソ細くて長い剣山みたいなのが、一瞬で地面からシュン!って勢いよく出て、また、シュン!って戻る感じな、アレ!!」
「は……?」
ナニソレ?
意味が分からんぞ?
シュン!ってナニ?
「良いでござるなソレ。 間違いないでござる」
いや、豚よ……
オマエら、どんだけ通じあってんの?
なんで今ので理解できてんの?
ってか、何が間違いないんだよ……?
今の話を解釈した俺の想像によると、オマエらの倫理観は間違いだらけぞ?
「撃ち漏らしは、妾と雫に任せよ」
「それじゃぁ僕は、ウP主さんと桜田クンの護衛かな?」
「え?」
何故か、俺が針の剣山を周りに発現させるって事確定で、俺を無視して勝手に話が進んでいく。
「え? ウソ? 俺に拒否権は無いんですか?」
大量虐殺とかマジで嫌だけど、
「ってか、さっさと家に帰ってゲームやりたいんだろ、オマエ?」
「お家に帰る為には、やるしかないんじゃないかな? 紅葉?」
「ゲーム……」
雫が言う通り、我が家では、愛しのゲームが俺の帰りを待っている。
って事で目を瞑って、雫に言われた通りに、細くて長い針をイメージする。
細さは──
針。
長さは──
電柱くらい?
それを、俺たちが居るドームの周りの地面からシュって出て、シュって一瞬で引っ込む感じ。
って言うか、一瞬で出せても、一瞬で引っ込ませるとかマジ無理だから!
魔力を固めて出すだけの俺に、動きをつけた要求とかオーダーすんなし!!
って事で、ヤケクソになって、
「もう! だったら! こんなんではどうでしょう!! ──かっ!!」
地面からもドームからも、適当に尖った針っぽい、長い何かを発現させようとイメージしたけど、
「無理……」
目視できないし、距離の把握ができないし、それに、外の状況が全くわからないから、雫の注文は諦める。
その代わり、
「玉藻、さん? 外には何人くらいいて、どれくらいの距離とか範囲にいんの?」
「数は5。 距離は…… 旦那様が発現させている領域内に全員が入っておるな」
「………分かった。 ありがと……」
周りの様子を玉藻から聞いてから、
「って事は、コレでいける、だろ……? 多分?」
足元に向かって、魔力と一緒にプランBなイメージを送りまくる。
「これでどう?」
そんで、イメージを発現させたと同時に、
「──!?」
「ヒェっ──!?」
「な、なんの音だ!?」
「ドームからめちゃくちゃヤバそうな音がしてるでござるよ!?」
「紅葉…… 大丈夫なの、コレ……?」
俺達を覆っているドーム内に、
「やってしまった……」
クッソ重くてヤバそうな音が間断なく連続して鳴り響いた。
ってか、音が怖すぎて、急いでドームの内側に新しいドームを2重で発現。
そして、唯一、魔力とか気配を察知できているっぽい玉藻が、
「だ、旦那様よ……」
唖然、呆然、愕然としながら、ドームの外に向かって目を釘付けにさせていた。
「玉藻、さんや? 外の様子、どんな感じっスかね?」
「妾に尋ねるまでもなかろう…… あの様な状況の中、アレだけの波状攻撃を喰らえば…… 一瞬で全滅しておるわ……」
と、玉藻からの全滅報告を受けたと同時くらいのタイミングで、
「おぅふ……!?」
「うわっ……!?」
「オマエ、ナニしたんだよ……?」
全員の身体がレベルアップで輝いた。
「コレって、もう、能力解除しても良い感じ?」
「問題ない。 周囲に魔力の気配は全くない」
「………………」
って事で、左手にドームを食わせてリサイクル。
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