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思っていたよりもチョロすぎ

カッチカチに凍らされている鎖野郎を囲む様にして集まる4人の人影。


そこに、雫にパシられたイケメンが、ゆっくりと優雅に歩いて行く。




戦闘狂で酒乱で暴君な癖に、異能を選ぶ時と言い、今回の作戦と言い、不確定要素に対しては、ドン引くくらいに慎重になる馬鹿。


常に妥当で無難な選択をする俺とは違って、不明瞭な事に対して、少しでも確かな情報を収集してから慎重に事を進めるって考えと行動は、悔しいけど、マジで凄くて尊敬に値する。


ムカつくけど、長年続いている武士の家系の血を受け継いでいるってのは伊達じゃない。



いつもの様に、ジャイアニズムで有無を言わさずに、傍若無人に振る舞って自分のわがままを通し、クリリンが一人だけで行く理由とか詳細をみんなに一言も言わないし、説明すらしない。


口下手で、アウトプットが下手すぎな奴だけど、助けに来たヤツらが影武者とか身代わりとかだったら?って線を、真っ先に潰す腹積りなんだろうって事が分かる。


でも、いくら、ちょっとやそっとじゃ死なないからって言っても、クリリンを一人だけで行かせるのは可哀想すぎる。


けど、全員の安全マージンを取って敵の情報を集める為には、クリリン以上の適任者はいないから、これには俺も一応賛成だ。


って事で、


頑張れクリリン!




クリリンと4人の距離が近づくと、クリリンが光の剣を発現させた。


ソレを見て明らかに狼狽える4人。


そんな4人の反応を見て、



「どうやら、全て、黒よのぉ」



玉藻が静かに動き、



「クソ外道が……」



雫が怒りを顕にした言葉を零す。


そして、俺も俺で足元の地面に左手を着けて魔力を流す。


瞬間──



『──!?』



──狼狽えていた4人が黒いドームに覆われて、




──ドドォォォンンン!!




少し離れた場所から腹の底に響く様な音が鳴り響き、



「釣れたぜ!!」



粉塵から抜け出す様にして4人の人影が現れて、



「妾を欺けるとでも思うたか?」



続けて玉藻が現れた。



「マジで胸クソ悪ぃ、クソ野郎共だぜ」


「鎖野郎の仲間も、同じ穴の狢だったって事か……」



結果、最初の4人は囮とか影武者に立てられた普通の人達で、



「クソ!!  使えねぇ!!」


「時間稼ぎにもなってないし!」


「囮使った意味ねぇじゃん!!」


「ってか、なんなんだよ!  あの化け物!?」



鎖野郎の仲間達は、悪態を吐きながら埠頭に姿を現した。


もしこれが雫だったら、



「戦場での囮の使い方も情報収集の仕方も知らねぇ、全くのド素人かよ」



囮の中に1人か2人は本物を入れて、ある程度は敵の情報を引き出していたんだろうけど、


普通に生活していて、常日頃からそんな物騒極まりない事を考えている奴なんて、雫みたいな碌でもない奴ってことは確かだ。


ってか、俺が準備していた、新しい魔力の使い方が成功した。


鎖野郎の周りの地面を、魔力で造った薄い板で敷き詰めて、俺の意志と追加の魔力とイメージにあわせて発動させる、大規模トラップフィールド。


まぁ、設置した魔力の板に直接手で触れて魔力とイメージを追加しなければいけないから、どうしても有線になってしまうんだけど。










──1時間くらい前──


鎖野郎の仲間を待っている間に、俺が考えていた実験的アイディアを雫たちに話してみた。



「やれ。  って言うか、そこら中、広範囲にソレをぶち撒けろ」


「広範囲にって……  正気かよ……  ってか、どんくらいやりゃ良いんだよ?」


「オマエの魔力が枯渇する寸前で死ぬギリギリまで。  ってか死んでも成功させろ」



って睨まれながら雫に言われた。



「無茶苦茶かよ……  言うんじゃなかったわ……」





雫が死んでも俺に成功させろって言う理由は、



「モヤシのソレが上手くいけば、敵の確保も、仲間の防御も援護もできる様になる。  ってか、単純に私達の手数が増える。  謂わば、私達に有利なテリトリーって言うか、フィールドができるってこった」



俺がただ単純に考えていた、『嫌がらせ程度のトラップ』以上の可能性があったからだ。


この雫の発想にはマジで目からウロコだった。


けど、



「いや、そうできるんなら確かに最高だけど、距離が離れてたら正確性に欠るぞ多分?  ってか、こうも暗いと目視が厳しい」



距離感とか、状況や動きの詳細が分からないと、出来たとしても正確性がなくて、俺が考えていた様な嫌がらせ程度にしかならないだろうし、下手したら仲間の邪魔になってしまうかも。



「まぁ、ドローンを使って、上から俯瞰的に状況が分かればできない事もないんだろうけど、そんなんが不自然に飛んでたら、真っ先に警戒されるだろ?  ってか、今ドローンとか持ってねぇし」



しかし、



「であれば、妾に良い考えがある」



馬鹿に続いてストーカーまでもがノリノリに食いついてきた。



って事で、









──元の時間──


玉藻が追い詰めた4人を中心に、玉藻とクリリンが挟む様にして位置取った。


んでもって、



「モヤシ!  葵ちゃん、今だ!!」


「そぉぉぉおおおい!!」



雫の合図に従って、玉藻とクリリンの間の地面から、囮の4人を捕らえた時と同じ様に、一瞬にして漆黒のドームを発現させる。


そして、同じく、雫の合図で空に飛び出した桜田が、



「アイス──」



ドームの頂点に空いている穴に向かって、



「──プリズン!!」



魔法を放って、ドームの中を凍らせる。



玉藻が考えた、俺のアイデアを活かす作戦とは、



『旦那様は、雫の合図で、”妾” と ”薫” の前に居る者達を、何も考えずに閉じ込めるのだ』



って事で、先ずはクリリンの “前” に居た奴ら、次は、玉藻とクリリンが “正面” を向いて挟み込んだ奴ら。


先ずは一旦敵を閉じ込めて、唯の一人も逃さない作戦。


ソレであればと言う事で、



「確保ぉぉぉおおお!!  でござる!!」



俺が閉じ込めると同時に桜田が凍らせてしまおうって感じで作戦が決まった。



こうして、雫と玉藻の作戦を織り交ぜた、ファンタジー満載な追い込み猟が成功した。



ってか、作戦が上手くいきすぎて、思っていたよりもチョロすぎ。



このチョロさが少し怖いのですが、気のせいでしょうか?



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